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【ネタバレ有】映画「アズミ・ハルコは行方不明」の感想とあらすじ解説/高畑充希の好演が光った!

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かるび(@karub_imalive)です。

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映画「アズミハルコは行方不明」を見てきました。サブカル色が強めの快活な文体で、郊外で生きる女性達のストーリーを写実的に描いた原作の世界観を、うまく映画に落とし込んだ良作でした。

早速見てきましたので、以下感想を書いてみたいと思います。
※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

<予告動画を見てみる!>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】松井大悟
【原作】山内マリコ「アズミハルコは行方不明」

監督は、若干31歳ながらすでに数作の商業映画で実績がある早熟の天才肌、松井大悟監督。若手監督らしい感性で、疾走感のあるキビキビした画面展開が爽快でした。

原作は、山内マリコの同名の小説「アズミハルコは行方不明」。「R-18文学賞」を受賞したデビュー作「ここは退屈迎えに来て」に続き、郊外に生きる若者を快活な文体でリアルに描写した小説は、若い女性読者を中心に共感を呼びました。

2.主要登場人物とキャスト

主役のアズミハルコは、映画中では別に「桐島、部活やめるってよ」みたいに不在なわけではありません。ちゃんと主役として、蒼井優が演じます。もう一人の主役は、高畑充希演じる木南愛菜です。

安曇春子(蒼井優)
行方不明になった28才の地味な田舎のOL。物語の主人公。
木南愛菜(高畑充希)
キャバクラを辞めて現在はネイリストを目指して勉強中のフリーター。さみしがり屋でユキオ、学と行動をともにする。
富樫ユキオ(太賀)
名古屋の大学を中退して実家へ出戻る。「でっかいことがやりたい!」と学、愛菜とグラフィティアートのチーム「キルロイ」を始める。
三橋学(葉山奨之)
成人式にも出席せず、地元のCDショップで働く地味な青年。ユキオに誘われ、「キルロイ」を始める。
"曽我氏”曽我雄二(石崎ひゅーい)
シンガーソングライターだが、最近は映画やドラマで起用されることが増えてきた注目の個性派俳優。監督いわく「ぬるっとした演技が好演だった」

3.映画の見どころ(ネタバレ無し)

3-1.場面転換のスピード感

シーンの切り替えが非常に早く、2人の主人公の女性、時系列の異なるハルコと愛菜のストーリーが同時に進行していくため、スクリーンに集中しないとすぐに置いていかれます(笑)セリフや説明が最低限で抑えられた分、映像で物語の行く末を暗示させる演出も多く情報密度が高いので、ハマった人は2度見必死になると思います。

3-2.郊外で軽薄な男たちに翻弄される女性のリアルな人物像

ハルコ、愛菜に限らず、映画で出てくる主要な女性キャラは全員、田舎の茫漠とした生活に疲れた存在だったり、軽薄な男たちに翻弄・抑圧される存在として描かれています。もちろん、その状況をどう切り抜けていくのか?一つの解決策がラストでしっかり提示されています。

3-3.高畑充希の好演!

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出演が決まった順番では「とと姉ちゃん」より前だったらしいですが、20歳で鬱陶しいほど依存体質のマイルドヤンキー役は、NHK連ドラで演じた女性像とはまったく違うもの。インタビューで、「普段の私とはまったくキャラクターが違うので難しかった」と答えていますが、痛いほど焦燥感と孤独感が伝わってくる好演が光りました。

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4.結末までの簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

※映画では、特に前半パートではアズミハルコの時間軸と、木南愛菜の時間軸が入り乱れて展開されるため文字に起こすとわかりづらくなります。ここでは、わかりやすさを優先し、ストーリーの時系列に再編したあらすじとなります。ご了承下さい。

少女ギャング団という女子高生の集団があった。神出鬼没で、夜な夜な男を集団暴行するという。LINEでつながり、誘いのアプローチがあった男性を待ち合わせ場所で襲い、ボコボコにした上、金銭を奪って逃げる。そんな事件が多発していた。

安曇春子27歳。栃木の地方都市に住む地味で普通の女性である。ある時、親友のひとみの結婚披露パーティで、旧友の今井と中学卒業以来再会を果たした。ひとみと今井、春子の3人は、幼馴染だった。

ひとみの結婚相手は、かなり年上の安定感のありそうな男性だった。野球選手と結婚し、子供「瑠樹(ルージュ)」を産んでから、家庭不和で離婚し、地元に戻ってきた今井とは対照的だ。

一方、春子はずっと地元で大人になり、地元の企業で事務の仕事をしていた。家族は、父母と認知症が進んだ祖母の4人暮らし。休みの日、母から日用品の買い物を頼まれた春子は、車で国道沿いのドラッグストアで、レジでバイトをしていた幼馴染の曽我氏とばったり再会した。

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曽我氏とは隣同士の幼馴染の間柄だった。その晩、曽我氏の部屋へ遊びに行った。曽我氏から、ひとみの近況やひとみ、春子と3人で拾った捨て猫のことを聞かれた。今、15歳になった捨て猫は春子の家で飼育しており、あとで自宅に戻ってから、自室の窓から曽我氏に見せてやった。

春子の勤め先は、地元の零細企業。30歳後半の事務員、吉澤と、社長・専務、春子の4名の会社。社長・専務は暇そうにしてはネチネチとセクハラを仕掛けてくる。

ある晩、春子は、男が少女ギャング団に襲われているところを見かける。急いで男のもとにかけつけると、それは曽我氏だった。家まで曽我氏を運んで自宅に帰ると、その晩もう一度曽我氏の部屋に行き、なんとなく男女の関係になるのだった。

それ以後、なんとなくデートに出かけるようになった春子と曽我氏。車で地元のファミレスにでかけ、曽我氏の家でまったりする地味なデート。「一緒に海に行こう」という約束もしてみたが、それが実現することはなかった。曽我氏の本命の女性が別にいたからだ。

会社では、吉澤はフランス人と結婚しアフリカに移住すると言って、退職していった。代わりに若い女性が入ってきたが、さらに居場所がなくなった春子だった。

そして、曽我氏にも携帯がつながらなくなっていった。コンビニでバイトをする別の知人の男の情報によると、曽我氏はひとみと不倫をしているのだという。それを聞いたその晩、曽我氏にちゃんと付き合ってほしいと懇願した春子だったが、曽我氏に捨てられてしまうのだった。

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翌日、全てに疲れ切った春子は家を出て失踪した。平成27年5月17日のことだった。

一方、木南愛菜は20歳になったばかり。勤務していたキャバクラの尊敬する今井先輩が野球選手と結婚、妊娠して退職すると、愛菜も風俗嬢をやめて、今はネイリストを目指してフリーター生活を送っている。

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成人式の日、名古屋から戻ってきていた富樫ユキオと意気投合する。さみしがりやで、女友達といるより彼氏にべったりしたいタイプの愛菜はユキオに急接近。まもなくユキオと付き合うようになった。

地元に戻ってきたユキオだったが、何か大きいことがやりたいが、何がやりたいのかわからない。たまたま、誕生日プレゼントに愛菜から買ってもらった、グラフィティ・アートの巨匠、バンクシーが監督を務めた「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」を、成人式の時に再会した高校の同級生、三橋学に貸してやると、学も大ハマリ。

まもなく、ユキオと学はDVDにインスパイアされ、夜な夜なグラフィティ・アートを手がける「キルロイ」というユニットを結成する。文字では飽き足らず、人物画を構想中、たまたま、交番前で安曇春子の「失踪中」の張り紙を目にする二人。

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安曇春子の顔写真から、グラフィティの型紙を作成し、以後これを地元のあらゆるカベや窓、公共物などに吹き付けていった。そのうち、愛菜も加入し、3人で活動するようになっていく。

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しかし、活動をすすめるに連れ、すぐに地元のSNSや掲示板で、彼らのグラフィティについて話題になり、交番でも警告の張り紙が出るようになった。これにびびったユキオは、「キルロイ」の活動を降りてしまう。

取り残された二人だったが、その晩、ノリでホテルに入った学と愛菜。学はうっかり愛菜に、ユキオが愛菜に関心がなく、都合のいい女扱いしていることを口を滑らせてしまう。

ユキオは、愛菜より地元の女子高生に関心がうつり、別の日にファミレスで学を誘って合コンを企画していた。学についてきた愛菜は、ファミレスの駐車場でユキオの様子を伺おうとする。その時、女子高生の一団、少女ギャング団が学に近づいてきて、学を愛菜の目の前でボコボコにしてしまう。

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愛菜とユキオは、学を置いて逃げてしまい、なんとなく彼らの間柄はそこで終わってしまったかのように見えた。

一人で活動を続ける学に、地元で開催される芸術祭のアートディレクターがコンタクトを取ってきた。「アズミハルコ」のグラフィティを応用したアートを、地元の芸大生の制作協力を得て、芸術祭で出展することが決まる。

地元の遊園地で行われる芸術祭の出展準備中、たまたま土木業に就いていたユキオが学を見つけ、再度「キルロイ」を結成して、二人で出展することになった。

出展当日、プレスや関係者が引いたら、ガラガラの芸術祭。これをきっかけに大きいことをやれると目論んでいたが、田舎での展示には誰も見に来ない現実を見て、「キルロイ」は解散することに。

しかし、展示ポスターを駅前の掲示板で見かけた愛菜は、ひとり声がかからなかったことに腹を建て、その晩展示会場に酔って現れ、展示をメチャクチャに壊してしまう。アズミハルコの幻想も見えるほど泥酔していたので、その晩そこで眠ってしまう愛菜。

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翌朝早朝に地べたで目が覚めた愛菜。すぐにその場を逃げ出し、遊園地の近くのコンビニまで走ってくると、そこにはキャバクラ時代の尊敬する先輩と、失踪ポスターでしか見たことがなかった安曇春子がいた。今井と春子、そして今井の一人娘「瑠樹(ルージュ)」と一緒に、海に向かう愛菜だった。

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ある地元の映画館にどこからともなく集まってくる少女ギャング団。大騒ぎしながら、少女が男たちを撃ちまくる素人風の映画を見て興奮するメンバーたち。映画が終わる頃、情報を聞きつけた警察が映画館の出入り口を固める。映画が終わり、警官に囲まれた少女ギャング団だったが、リーダーの少女が指鉄砲を警官に向けて放つと、次々に警官は倒れるのだった。そんな中、ゆうゆうとその場を立ち去る少女ギャング団だった。

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5.感想や評価(※ネタバレ有注意)

5-1.若手監督らしいテンポの良さが爽快だった

特に前半の数分で、目まぐるしく場面が変わるなど、原作を知らないと最初は何が起きているのか把握するのに非常に手間取ります。説明的なセリフが少なく、情景描写に情報を濃く詰め込むことで、テンポの良さを保ちながら物語を最後まで一気に走るスピード感は、非常に爽快でした。多分、一度目では見落としがあるので、2回目以降も楽しめるスルメ作品だと思います。

5-2.郊外で生きる若者たちの閉塞感が痛いほど伝わってくる

終始ダルそうな春子の表情。自宅でつまらなそうに過ごし、ロードサイドのお店に入っても知り合いばかり。「ファスト風土」と呼ばれ、生活必需品は問題なく揃うが、意外性や大きな夢を持てない予定調和な田舎の日常生活。「何か大きいことしてぇな~」と言って始められるのはせいぜい夜中のスプレーでの落書きくらいなもの。刹那的な快楽は味わえても、それをグラフィックアートに仕上げて発表したら、見に来るギャラリーは誰もいなかった・・・。

春子編でも愛菜編でも、地方独特のゆるさ、だるさが画面を通してがっつり伝わってきました。

5-3.「ダメ」な男性達に振り回される女性たちが印象的

本作で登場するどの男性も、魅力がなくダメな人物として描かれていました。セクハラや差別発言ばかりで働かない春子の勤め先の上司達や、口先だけで軽薄なユキオ、ダサい身なりでバイト先でも怒られてばかりの学、春子を捨て、働かず幼馴染と不倫に走る曽我氏、むすっとして家庭をまとめない春子の父・・・。

同じ男性として、スクリーンを見ているだけでもどかしくなる男子ばかりでイライラしました(笑)でも、退屈すぎる代わり映えのしない毎日の中で、そんな身近なダメ男たちにでも依存し、振り回され傷つく春子と愛菜は、さらに見ていられない感じでした。

5-4.現状から逃げ出すことで幸せを掴んでもOK

本作で、包囲した警察をも指鉄砲ひとつで動けなくするなど、いわば「全知全能」の象徴としてファンタジックに描かれた無敵の少女ギャング団は、観客にカタルシスを感じさせる効果はありましたが、若さもパワーも半端に失われた春子や愛菜には、ギャング団のように現状をひっくり返すほどの激しい行動を起こすことは難しいでしょう。

現実的には、ラストシーンであったように、気の合う仲間と今の環境から「逃げ出す」ことで幸せをつかむしかないのだろうと感じます。

実際、映画中で春子、愛菜の他に脇役として出てきた春子の親友、今井と勤め先の先輩、吉澤は、ともに今の環境から「逃げ出す」ことで、いちはやく現状を変えて幸せに近づきました。

今井は、子供の面倒を見ないプロ野球選手と離婚し、子供を連れて地元に戻ってきましたし、吉澤は遠いアフリカ、ブルキナファソで結婚生活を送ることになりましたよね。ともに、置かれた環境から「軽やかに」抜け出して不幸を脱出しています。

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ラストシーンで、遊園地で泥酔した愛菜が見た春子の幻影が、女の子にとっては、「優雅な生活が最高の復讐である」と言いましたが、不幸な自分を見せつけて男に対抗するのではなく、不遇な現状から軽やかに逃げ出すことで、現状をリセットして幸せになることで復讐せよ、というのは極めて現実的だと思います。むしろ、女性だけでなく男性でも応用できる教えです。

5-5.がんじがらめになった息苦しい田舎生活から救い出したのもまた田舎で培った人間関係だった

ラストシーンで、合流した今井、愛菜、春子が女だけの楽な共同生活をスタートすることを示唆して終わりました。狭い田舎で完結する予定調和な退屈な生活、絡み合った不毛な人間関係のしがらみから抜け出すきっかけをくれたのもまた、地元の古い友人だった、というのが何とも皮肉な展開で、考えさせられました。

6.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意)

6-1.アズミハルコは結局なぜ失踪したのか?

これは原作や映画でも明確に「理由」は示されませんでした。受け手側の自由な想像に任されていますが、おおむね以下の理由が重なったためと考えられます。

・職場の先輩、吉澤の退職(=職場の同志を失った)
・曽我氏にひどい振られ方をした(=恋人を失った)
・自宅も安住の地ではない(=家の中に居場所を失った)
・どこへ行っても知り合いだらけでの地元(=町中でも居場所を失った)
・ギャング団にも入る自信がない(=若さを失った)

仕事、プライベート、生活など、全ての面で行き詰まり、どうでも良くなった、あるいは消えてしまいたいと自暴自棄になったのでしょうね・・・。

6-2.アズミハルコは失踪後、どうしていたのか

いつものように母親から買い物を頼まれたことをきっかけに、そのまま放心状態でコンビニで佇んでいたところ、離婚して実家に帰ってきていた今井が発見し、しばらく今井、今井の娘と落ち着くまで3人で暮らしていました。

6-3.少女ギャング団はなぜラストシーンで警察の包囲を突破できたのか

先頭の女の子が指鉄砲を構えて撃つふりをしたら、包囲していた警察官は倒れ込みました。この描写で、特に論理的な説明はなかったので、彼らは春子や愛菜の理想像である、「強い女の子」の理想を体現した、ファンタジックな存在であったと理解しておけばいいのかなと思います。現実感のあるなしというより、物語にスパイスとカタルシスを与えるための軽い仕掛けだと思って解釈するのが良いのではないでしょうか?

6-4.映画のロケ地はどこなのか?

映画中で明言はされませんが、群馬県足利市~桐生市のあたりだと思われます。駅のポスターに「足利市」と張り紙がしてあったこと、ラストシーンで使われた遊園地が「桐生が丘遊園地」であったことなどが手がかりです。また、エンドロールでクレジットされていたお店などに、足利市や桐生市の施設が多かったです。なお、小説の原作では、春子や愛菜が住んでいる場所はぼかされています。

6-5.映画中で、愛菜がユキオにプレゼントしたグラフィティ・アートのDVDは?


イギリスのロンドンを中心に活躍するグラフィティ・アートのレジェンド、バンクシーが監督を務めた映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」です。資本主義を風刺したストリートアートが、バンクシーが有名になるにつれ、オークションで高値売買される皮肉と矛盾。そんな中、バンクシーを追いかける男が、いつの間にか自分自身がグラフィティーアーティストに仕立て上げられてしまいます。バンクシー自身も出演し、「アートとは一体何なのか?」を問いかける、ドキュメンタリー映画の名作です。

映画中では、まずユキオがバンクシーにあこがれて、愛菜から買ってもらったこのDVDを学に勧めますが、学も「スゲー!!」と絶賛していましたね。以降、彼らのグラフィティアート活動のバイブルとして二人に共有されていました。

物語の結末で、アズミハルコのグラフィティアートが地域芸術祭のプロデューサーに発掘されたところまではバンクシーのDVDと似たような展開でした。ただ、田舎ゆえ注目してくれる観客はおらず、泥酔した愛菜に壊されてしまうラストは、あまりにバンクシーの成功譚と対照的です。

7.原作との相違点(※ネタバレ有注意)

7-1.少女ギャング団と春子のやりとりが真逆になっていた

春子は、失踪直前に少女ギャング団と偶然遭遇します。映画ではギャング団のリーダーに「来る?」と誘われますが年齢を元に弱々しく断っていました。原作小説では、春子はもう少しアグレッシブで、「私も連れてって」と頼み込みますが、少女たちから「女子高生でなきゃダメ」と断られます。

誰にも頼れず、居場所をなくした春子が失踪する流れにつながるのであれば、原作のほうがやや物語的には自然な流れなのかなと思いました。

7-2.ラストシーンで少女ギャング団が見ていた映画

映画のラストシーンで、少女ギャング団のメンバーが見ていた映画はアメコミタッチで少女が大人たちを撃ちまくる痛快な内容でしたが、原作では、「スプリング・ブレイカーズ」(2013)というアメリカの美人大学生が無双する実写映画でした。いずれも少女ギャング団の無敵性、全能性を象徴する内容でしたが、できれば映画版でもこの「スプリング・ブレイカーズ」を見たかったです。(権利関係等でムリなのかな?)

8.まとめ

狭い生活圏の中で、退屈な人間関係と刺激のない毎日を送る郊外の若者たちの情景を、リアルに描き出した印象的な作品でした。現実的には、田舎の若者が全員不幸なわけでもなく、ローカルな地元生活を満喫し、不満のない若者も多数いるはずです。

でも、もし閉塞感を感じて行き詰まったのなら、彼らが幸せをつかむためには一旦、人間関係や環境をリセットして「行方不明」になるしかないのかもしれません。

いろいろな意味で考えさせられる、おすすめの映画です。

それではまた。
かるび

9.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

映画同様、ポップでスピード感のある文体にぐいぐい引き込まれました。小説だと、中盤までハルコ不在となるため、より失踪した「行方不明」感が強く感じられます。

映画公開を記念したKindle限定コンテンツ。本音で対談することにより、作者山内マリ子氏の人間感や女性感が良く理解できます。250円と非常に安いですし、原作世界をよりよく知るためにもポチッて損なしです。

「アズミハルコは行方不明」原作者、山内マリコのデビュー作。映画同様、倦怠感、閉塞感の広がる田舎に生きる8人の女性達の退屈な日常を描いた連作短編集。物質的な豊かさは都会とさほど変わらない地方都市での生活が、なぜこれほど色あせてつまらないものに映るのか。登場人物たちの物憂げな心情が痛いほど伝わる良作。


風景画で心を癒やそう!「風景との対話」展のブロガー内覧会に行ってきました!(損保ジャパン日本興亜美術館)

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かるび(@karub_imalive)です。

※ブログ内の写真は、主催者の撮影許可を得て掲載しています。

12月1日(木)に開催された、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館のコレクション展「風景との対話」展のブロガー内覧会に行ってきました。

開始前の集合写真
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東郷青児が生前に集めたコレクションを中心に、美術館の保有する「風景」をテーマとした作品が80点あまり集められた展覧会。決して派手で目玉作品がどどーんとあるわけではありませんが、都会のど真ん中で疲れた時にフラッと立ち寄りたくなる展覧会です。(あと、安いし!)

ということで、簡単な感想レポートを書いてみたいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

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いつもながらゆったりと見れる損保ジャパン日本興亜美術館。ここが劇的に混雑したのを長らく見たことがありません。いつも快適に見て回れます。おおよそ儲けてやろう!という執着が全く感じられない美術館であります。(いい意味でね!)僕も前職で仕事に疲れた時、営業中によくフラッと入ったものです・・・

2.「風景との対話」展の特徴は?

親会社が合併を繰り返して美術館の名前がコロコロ変わってて、そのたびに美術館の名前が長くなっていくわけですが^_^、損保ジャパン日本興亜美術館は、もともとは1976年に芸術家、東郷青児が自分自身の作品と、パリや日本で収集した自らのコレクションを収蔵・展示するために「東郷青児美術館」として創設されました。

その東郷のコレクションを核として、様々な個人や法人からの寄贈・寄託、同美術館の買い上げた作品などを合わせると、現在は850点ほどが収蔵されています。

その収蔵品のうち、だいたいいつも見れるのは、常設コーナーで飾られている超大物3点(ゴッホ「ひまわり」、ゴーギャン「アリスカンの並木道」、セザンヌ「りんごとナプキン」)や、東郷青児、グランマ・モーゼスの作品くらいのもの。(毎回行くたびにゴッホのひまわりを見るとホッとします・・・)

しかし、それ以外の作品については、こうして年に1回~2回の特別展示でしか見ることができないのですよね。

今回は、「風景との対話」ということで、風景画を中心に、シュルレアリスムや風景画的な要素を多く含んだ現代アート作品、約80点が展示されています。複数点出品されている東郷青児、グランマ・モーゼス以外は、1名1作品ずつ展示されたバラエティに富んだ展示内容なのも面白いです。

3.展示区分

展示は、以下の区分で展示されています。

  • 第1章▶フランスのエスプリ
  • 第2章▶東郷青児の旅(東郷青児特集)
  • 第3章▶日本の風土
  • 第4章▶異国の魅力
  • 第5章▶意識の底の地
  • 第6章▶日常の向こう側(日本の現代画家)
  • 第7章▶世界の感触
  • 第8章▶思い出のニューヨーク州(グランマ・モーゼス特集)

このうち、個人的には、第1章「フランスのエスプリ」が非常に印象的でした。東郷青児のフランスでの修行時代、現地で交流した同世代の画家たちの風景画を一挙に見比べて楽しむことができました。

4.個人的に気に入った絵画達

左:エドゥアール・ジョルジュ・マカヴォイ(無題)
右:ギー・バルドーヌ(無題)f:id:hisatsugu79:20161205223703j:plain

えー、二人とも知りませんでした(^_^;)。でも2枚ともさわやかな水色を基調に、橋のある風景を描いた涼し気な作品で、非常に気に入りました。左の絵は、空の青なのか、水の青なのかもはや境界面がわからないほど、ノリノリで水色が画面いっぱいに広がっているのが良かったです。テンションが高いうちにささっと仕上げたのかな。

右:ユトリロ「モンマルトルのサクレ=クール寺院」f:id:hisatsugu79:20161205224348j:plain

冬の寒空の街並みを風情たっぷりに描いたユトリロの作品。少しだけ遠近法が歪んでいるところとかもユトリロらしい人間味を感じます。・・・というか外国人作家ではユトリロぐらいしか聞いたことがある作家がいなかったので、勉強不足を痛感した展覧会でもありました・・・(^_^;)

左:井上覚造「猟人日記」f:id:hisatsugu79:20161205225113j:plain

日本のシュルレアリスム画家の100号ほどの大きな作品。実際にはあり得ないような重力に逆らったような積み方で形作られた石のアーチが味わい深かったです。不思議と引き込まれる力がある作品だと感じました。

左:大渕陽一「八重の里」
右:錦織重治「待春」f:id:hisatsugu79:20161205224731j:plain

ともに、日本の冬景色を抒情的に描いた作品。右側は、財団が独自で毎年開催している絵画コンテストの秀作として、美術館で買い上げた作品です。日本の美しい寒村の原風景は、ずっと見ていたいような気持ちにさせられるので、大好きなモチーフです。

ゴッホ「ひまわり」
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(引用:Wikipediaより)

そして、展示会のラストを飾るのはやっぱりこれ。これを見ないと、個人的には東郷青児記念美術館は見終わった気がしません(笑)

安田火災がバブル絶頂期に手に入れた、50億円のゴッホは今日も健在でした。今購入したら50億なんかじゃすまないんじゃないでしょうか。よくぞ安田火災は売らずにキープしてくれました。ムリかもしれないけど、さっさと国宝指定して欲しいとまで思っている、ゴッホ不朽の名作です。

とにかくここに来たらこれを見て帰る。そういうルーティーンになっているので、今回も「よしよし、まだあるな」と確認してから帰途につきました。

5.他美術館との相互割引

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本展示会では、少し遠いですが、埼玉県立近代美術館で開催中の、「日本におけるキュビスム―ピカソ・インパクト」展と相互割引を実施中です。「風景との対話」展のチケットを持っていくと、入館料が2割引きになります。

僕も、個人的に非常に気になっているので、12月中に行ってくる予定です。楽しみ。

6.まとめ

今回の「風景との対話」展では、これまで出品されたことがほとんどなかったレアアイテムも結構出展されているようです。一口に「風景」といっても、バラエティに富んだ様々な画家の色々な作風が楽しめる展覧会です。600円で、気軽に入って楽しめるカジュアルな展覧会ですので、是非足を運んでみて下さい。

それではまた。
かるび

展覧会開催情報

◯所在地
〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
◯最寄り駅
新宿駅から徒歩7~8分/都営大江戸線都庁前駅から徒歩5分程度
◯会期・開館時間
2016年11月26日~2016年12月25日
10時00分~18時00分(入場は30分前迄)/毎週月曜休館
◯入館料(コレクション展なので安い!)

一般600円、大学・高校生400円、中学生以下無料
◯公式HP
http://www.sjnk-museum.org/
◯アクセス

若手芸術家達の登竜門!「DOMANI・明日」展で13人の現代アート作家の作品を楽しんできました!

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かるび(@karub_imalive)です。

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最近、美術館の企画展に飽き足らず、よくグループ展に行くようになりました。巨匠たちの作品もいいですが、幅広くたくさんの作品に触れたいなと思い、相変わらず美術館に通っています。

最近は日展に、そして僕の父が会員になっている大潮展とか、伝統的なものから、東京都美術館で開催中の「都美セレクション」を見て回っています。

すでに評判が確立されたアーティストと違い、グループ展や美術団体の展覧会は上手なのから残念なものまで玉石混交ですが、アートシーンの裾野の広さを感じられるのですよね。

今日は、文化庁主導で、現代アートの若手作家を支援する目的で毎年この時期に開催されている「DOMANI・明日展/(ドマーニ・明日展)」のプレス向け内覧会に参加させていただきましたので、ちょっと感想レポートを書いてみたいと思います。

1.ドマーニ・明日展とは?

文化庁が若手芸術家の海外修行をバックアップする「新進芸術家海外研修制度」を立ち上げて今年で49年目。海外で活動したい若手芸術家の費用面を国がバックアップする制度です。そんな国の費用援助を受けるからには、集大成として、成果発表会をやらなきゃね!ということで、毎年この時期に「ドマーニ・明日」展と題して、十数人の若手芸術家たちのグループ展が開催されるのです。

留学生の派遣先f:id:hisatsugu79:20161210231417j:plain

ドマーニ展自体、今年で第19回目となるのですが、上記の写真の通り、ここ最近は留学先もヨーロッパ一辺倒ではなく、世界中の各地へ拡散しています。また、成果として発表される素材も、現代アートの最新シーンを反映し、絵画、写真、映像、インスタレーション、工芸作品、メディアアートなど多種多様にわたります。

なんだかんだで、現在の第一線で活躍する日本の現代アートの巨匠たちの多くも、長いキャリアのどこかでは、こうした国のバックアップを得て活動をした若い時代がありました。

こうした若手主体のグループ展は、将来ブレイクしそうな隠れた原石を発掘するという意味合いで、ある意味マニアックな楽しみのある展覧会だと思います。観覧料金も1000円と安めですし、是非ダリ展などとセットで見て回るのも面白いと思います。

2.今回出展している芸術家達

下記のリンクで、今回参加している13名のアーティスト達の簡単なプロフィールがまとめてあります。絵画、陶芸、メディアアート、ビデオアート、インスタレーション等々、幅広いジャンルに渡っていますよ。

3.展覧会は一部を除き撮影自由

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展覧会は、一部を除いて撮影は自由となっています。これから少しでも多くの人の目に触れられるべき若手芸術家の作品は、インターネットでこうしたアートファンの手によって拡散されてナンボだと思うので、ガンガン撮影して広まってくれればいいなぁと思います。

4.特に面白かった展示

総勢13名の個性的な作品群を見て、特に印象深かった作品や、あるいは個人的にこれは面白かったな、と思えた人の作品をいくつかピックアップしてみたいと思います。

4-1.曽谷朝絵

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内覧会が始まった時点では、まだ製作途中だったインスタレーション。ビビッドな色合いの様々な図柄が部屋いっぱいに広がるにぎやかさが良かったです。

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他にも、優しい色合いの宇宙的/あるいはスピリチュアルなイメージも想起させる抽象画は見飽きなくて、不思議とずっと見ていたいような感覚になりました。リラクゼーション音楽などのCDジャケットデザインにフィットしそうな作品群です。目に優しい雰囲気の作風なので、病院やリラクゼーションスペースのインテリアとしても良さそう。

4-2.松井えり菜

若手の中でも割と有名な現代アーティスト。変顔でドアップな自画像を宇宙的な背景にのせて描く不思議な作風が印象的で覚えていたのですが、今回の展覧会で初めてじっくり見ることが出来てよかったです。知名度の高さもあり、一番部屋の中が盛り上がっていたように思います。

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出品された作品中、最大の作品。宇宙空間に動物達と、それに取り巻かれるように作家本人の自画像がドカーンと描かれた大作。絵画から飛び出しそうなくらい主張の強い自画像です。肖像画って、普通は実物よりも見栄え良く描かれるのが通例なのに、この人の場合はなぜか実物より見栄えが悪くなるという風変わりな作風です。

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こちらはつながってます・・・。多少不謹慎かもしれませんが、昔話題になった「ベトちゃんドクちゃん」を想起させました。これもなかなかに迫力のある絵です。

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そして、最後は(恐らく)作家自身の顔面を切り取った巨大な能面のようなリンゴです。ダリ展でもこんな感じの工芸がありましたが、インパクトはこちらのほうが強烈でした。

4-3.金子富之

作りこみの緻密さ・丁寧さで言えば今回の展覧会でNo.1だった金子富之。カンボジアに留学し、現地でインスパイアされた仏教美術などの東洋的なモチーフで細かく描きこんだ作品群が非常に良かったです。

現地で知り合った高僧から、「陰」と「陽」両方の要素を絵画内に閉じ込められると絵に深みが出るとアドバイスされた内容がよく反映され、神聖すぎず邪悪的過ぎず、迫力がある中にも、不思議なトーンに落ち着いた作品でした。

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一番気に入ったのは、配色を抑え、ほぼ白黒の巨大な作品。羅漢なのか妖怪なのか定かではない迫力ある顔面が、作品の中央にどーんと並びます。

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顔の部分のアップ。見てくださいこの凄みのある表情。眼力が凄い!

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4-4.保科晶子

陶芸ではなく、焼かずに「粘土」での作品を出展した保科晶子。時間や記憶、感情など移ろいやすく微妙な思いや概念を、作品を制作しながら再確認するプロセスこそが、彼女の芸術活動なのだそうです。粘土ならではの手作り感のあたたかみや、素朴さにひかれるものがありました。

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粘土で形作った子供服。衣服のしわやクシャッとした感じが粘土の質感で上手に表現されていて、脱いだばっかりのぬくもりが伝わってくるようでした。もこもこした厚手の子供服のあたたかみや安心感がよく表現されています。

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2016年の最新作。この白いレースは、立体感や質感など、細部までリアルに表現されていた労作。これも良かった。

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部屋いっぱいに広げられた「モノリス」という作品は、まさに墓標。作者自身の思い出や記憶を一つ一つ形や色が異なる粘土ブロックに閉じ込めたそうで、制作当初は留学先のパリ郊外のアパートで展覧会が開かれました。

墓標、というより、超古代遺跡の古代人の出土品みたいな面白さがあって、味わい深かったです。もう少し館内が暗いほうがよりリアルさが出てよかったかなとは思います。

4-5.平川祐樹

「時間」の本質を追い求めて作品制作を続ける平川祐樹。真っ暗な空間の中で白黒をベースとした静かな映像作品の展示が印象的でした。しばらく椅子に座ってゆっくり鑑賞したい作品群です。

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10枚程度並べたパネルに、横倒しにした火をつけたローソクが燃えて短くなっていく様子をエンドレスで時間差をつけて展示した作品。照明を落とし、真っ暗な中、ちろちろとローソクが短くなっていく様は、古典落語の「死神」のように人間一人ひとりの命の残り時間を見ているようでした。燃え尽きると、また動画が復活するあたりも「輪廻転生」を見ているようで面白かったです。

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写真ではわかりづらいですが、実際には下から天井に投影された映像を映し出しています。映像自体も下から森の中の木々が風にゆれる様子を放映した白黒動画で、静かな空間の中、禅的な幽玄さが良かったです。(長く見てると、ちょっと首が痛くなりましたが・・・/笑)

4-6.南隆雄

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暗くした部屋の中で、プロジェクターで大判のスクリーンに映し出された、特殊加工された映像です。「黄色」「青」「水色」「白」「黒」の5色で映し出された映像はこれまでありそうでなかった感触。心地よい感じはあまりないのですが(笑)、変に近未来的なステレオタイプ的な感じでもなく、独創的でよかったです。

持っていったカメラがイケてなくてちゃんと採れてなかったのですが、この裏に展示された影絵も素朴で暖かい感じがして素晴らしいと思いました。

 5.まとめ

この他にもまだまだたくさん作品が出展されています。是非、足を運んでみて、好みの作家さんを見つけてみてくださいね。特に、去年は会期終了10日前に早々に図録が売り切れる盛況ぶりでしたので、早めに年内に行かれることをオススメします。国立新美術館は年末年始のお休みが長いので、開館日に気をつけてお出かけくださいね。

それではまた。
かるび 

展覧会開催情報

「第19回 ドマーニ・明日」展

◯展覧会場
国立新美術館・2F企画室
◯会期
2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)
◯開館時間
午前10時~午後6時、毎週金曜日・土曜日は午後8時まで

◯休館日
毎週火曜日
年末年始休み(12月20日~2017年1月10日)

◯公式HP
http://domani-ten.com/
◯Twitter
https://twitter.com/HokusaiMuseum
◯最寄り駅
地下鉄乃木坂駅6番出口直結/六本木駅徒歩5分

◯周辺地図

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中間管理職の悲哀を描く「中間管理録トネガワ」をKindleで一気読みしました。面白い!

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【2016年12月13日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

以前からネットで話題になっていて、大評判な「中間管理録トネガワ」が、2016年8月に既刊も含め、1巻~4巻まで全巻Kindle化されました。僕も、遅ればせながらポチッと全巻まとめ買いしたのですが、これが面白すぎました!

今日は、この「中間管理録トネガワ」について、感想を書いていきたいと思います。

1.中間管理録トネガワとはどんなマンガなのか

もともとは、福本伸行の「賭博黙示録カイジ」でのカイジの敵役として、カイジを苦しめた帝愛グループの大幹部、利根川幸雄(以下、トネガワと省略)を取り上げたスピンオフ作品です。

本編の物語中盤までは、まるで王のように振る舞うトネガワも、実は帝愛グループのワンマンオーナー、兵藤和尊会長の前ではイチ中間管理職に過ぎないのです。

本編「カイジ」では、トネガワは「限定ジャンケン」「鉄骨渡り」「Eカード」と、カイジと死闘を繰り広げた結果、最終的にカイジに負けてしまいます。すると、怒った兵藤会長はあっさりトネガワを切り捨ててしまい、本編ではこれにてフェードアウトしていきます。

この「中間管理録トネガワ」は、そんなトネガワがまだ帝愛グループで曲がりなりにも一応幹部として地位を保っていた時期、つまりカイジと対決するカイジ本編よりも少し前の時代、トネガワが帝愛グループ幹部として権力を保持していた時代の、彼の中間管理職としての苦悩と葛藤を面白おかしく描いていきます。

2.舞台設定「帝愛グループ」は典型的なブラックオーナー企業

中間管理録トネガワが、幅広い読者から共感を呼んでいる背景には、その絶妙な舞台設定があります。彼の勤務する帝愛コンツェルンという企業は、まるで昭和の旧き良き日本の大企業そのもの。徹底的に日本企業をデフォルメして面白おかしく描き出しています。それでは、ちょっとトネガワの所属する帝愛コンツェルンを見てみましょう。

2-1:典型的な前近代的ブラック企業

帝愛コンツェルンは、非合法すれすれの高利貸し、闇金融、裏カジノなどを抱えるなんでもありの、完全に反社会的勢力とズブズブの関係にある大企業グループです。「カイジ」本編では、人の死をなんとも思わないイベントや地下強制労働で多重債務者から借金を回収するなど、人の不幸や生き血をすすって儲けることも厭わない、そんな超絶ブラック企業であります(笑)

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2-2:超ワンマン社長が仕切る、オーナー企業

そんな帝愛グループを取り仕切り、超絶ブラック企業体質な会社を作り上げたのが、帝愛コンツェルン総裁の兵藤和尊(ひょうどうかずたか)です。彼は、典型的なワンマン体質で、気分屋で言うことがコロコロ変わる理不尽極まりないボスなのです。社内は一種の恐怖政治下状態にあり、兵藤のカミナリがいつ落ちるかわからないため、同社の大幹部トネガワであっても、ビビりながら会社生活を送る毎日なのです。

兵藤会長から、電話一本で思いつきのくだらない指示を受けたりするのは、トネガワにとって日常茶飯事。でもここで手を抜くわけにはいきません。兵藤会長の指示に背いたり、機嫌を損ねたりしたら何がおこるかわかりません。どんなにつまらない指示でも全力で取り組まなければならないわけです。

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そして、極めつけは会社内に兵藤会長専用の大浴場があるという(笑)題して、「王の湯」。これは笑えました。

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2-3:長時間残業に休日出勤

そんなオーナー企業ですから、トネガワも毎日夜遅くまでガッツリ働きます。物語中のメイン舞台である「第三会議室」で開かれる企画会議は、いつも深夜までエンドレスに開催されます。効率よく定時退社・・・なんて考えは、帝愛グループには一切通用しないのです。企画書の相談のため、夜9時から「王の湯」から上がってくる会長の出待ちとか、キツすぎます・・・。

★兵藤会長の出待ちをする図
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そんなブラック企業ですから、利根川クラスの大幹部であっても、20連勤などは当たり前。羽を伸ばせるのは福岡や大阪への出張電車の中だけというタフな状況です。

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2-4:トネガワ他、社員の私生活は一切出てこない

そんなわけで、この「中間管理録トネガワ」には、トネガワやその他の社員達の私生活を描いたシーンは一切出てきません。描かれるのは、トネガワと彼の部下たちの面白おかしい社畜生活です。

彼らはいつも帝愛社内にいます。プライベートらしき風景が見えたシーンを強いて探すなら、トネガワが部下たちをねぎらうため、土日を潰して社員慰安旅行に行ったシーンくらいでしょうか、(しかしこれもほぼ仕事の一環で会社の保養所に行くという/笑)

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3.面白さのポイントは、トネガワの立ち回り

さて、そんな超絶前近代的ブラックオーナー企業で健気に中間管理職として身を捧げる主人公トネガワですが、その面白さのポイントは、なんといっても中間管理職としてのトネガワの描かれ方です。いくつか見てみましょう。

3-1.上下に挟まれる中間管理職トネガワ

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トネガワは、基本的には、仕事ができて、他の黒服(=モブキャラ)よりははるかに優秀なんです。でも、白髪も交じる初老のトネガワ。長年の過酷な労務環境の中、なんだか少し疲れも溜まっていて、初歩的なヘマもやらかしてしまいます。疲れから、ついつい会長の目の前で居眠りをしてしまったり。

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また、幹部のくせにゴマすりもいまいち上手くなく、上司である兵藤会長の言動を気にしすぎるあまり、おどおどしてしまい、兵藤会長とコミュニケーションがいまいちきちんと取れなません。出世を争うもう一人の帝愛グループの大幹部、No.2の黒崎には、会長へのお追従でいつも水をあけられてしまうのも哀しいところです。

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でも、作中では、いきあたりばったりながら、上司である会長に極限まで気を使いつつも、部下にもきちんと目配りも欠かさない。上下にしっかり配慮しつつ、神経をすり減らしつつ頑張っていて、憎めない感じもあるオジさんなのですよね。

3-2.パソコンは一切使うシーンなし

トネガワは、基本的にはオジさんなので、会議は口を出すだけで、自分では手は動かしません。だから、パソコンを触るシーンやネットで何かを検索したりするシーンは一切出てこないのがこの作品の特徴です。(かろうじて、携帯電話で理不尽な兵藤会長の指示を受けるシーンはいくつかあります。)

作中の司令室である「第三会議室」やデスクにも、一切パソコン類は置いておらず、目の前には灰皿だけ。オジさんらしくIT関係は弱そうです。作中でも、部下の黒服がパワポを使うシーンで圧倒されているところを描き出されており、非常に微笑ましいです。

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3-3.飲みニケーション、集団行動が大好き

第1巻~第3巻まで、約20話弱ある中で、合宿1回と飲み会2回、部下とサシで飲んだのが1回、飲み会を企画したが潰れたのが1回、社内接待が1回と、ひたすら社内で濃い付き合いを重ねます。まさに昭和のザ・サラリーマンという感じが面白い!

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4.良かったのはどこまでもギャグ漫画路線であるという点

最初、書店で1巻の途中まで試し読みした時は、主人公トネガワが失敗を重ねつつ、プロジェクトの成功にたどり着く中で得た学びや気づきを読者にフィードバックするような、ビジネス書的なアプローチなのかなと思っていました。

でも全く予想はいい意味でハズれました。

そんな高尚な路線ではなく、ひたすらシュールなギャグ漫画路線なのです。社内接待、出張、入社面接、インフルエンザの蔓延・・・など、身近なネタが、カイジの世界観の中で、トネガワ目線でドタバタ劇として展開されていきます。昭和の古き良きサラリーマン生活のシュールなバカバカしさが、決してキツくなりすぎず、単純にゲラゲラ笑えるレベルでテンポよく描かれます。

実際、リアルにトネガワ的なサラリーマン生活を送っている人はかなりいるはずです。そして、現実のリアルトネガワ的会社生活は結構つらいはず(笑)だからこそ、こういう後に引かないカラッとした笑いにデフォルメ・昇華されたストーリー展開は非常に良かったと思うのです。前職がオーナー企業だったので、個人的にはものすごく共感できた(笑)

5.思えば僕の最近までのサラリーマン生活はトネガワそのものだった

この「中間管理録トネガワ」は、極端に昭和の企業戦士・中間管理職をデフォルメして描いていますが、ここで描かれている中間管理職の悲哀やキツさは、「あーわかるわかる」って言える人は多いんじゃないでしょうか?

僕も、非常によくわかります。

現在、僕は、2016年5月からしばらく自主サバティカル期間中ということでお休みを頂いています(つまり無職)が、前職は、トネガワ程ではなかったですが、「オーナー独裁のワンマン中小企業」での経営幹部クラスの立ち位置だったのでした。東京のITシステム開発を手掛ける会社だったのですが、そこで営業や採用をメインで担当していました。

そして、退職する直前までの数年間は、まさにトネガワ状態。20連勤休みなし・・・やりました。普通にありました。社員旅行や管理職の合宿、社員研修、長時間残業など盛りだくさんでしたね。

また、出世しても、幹部に近づけば近づくほどオーナーに近い立ち位置になり、逆に自由がなくなっていくというパラドックスも経験しました。オーナーの鶴の一声で、休出が簡単に決まったり、理不尽な対外交渉なども沢山やらされました(笑)

トネガワもそうですね。大幹部なのに、会議では部下が寝坊しても必ず朝一で来て、夜は必ず最後まで会議室に一人残っているシーンがきっちり描かれています。そして、電話1本で兵藤会長から電話での呼び出しも・・・。共感できるところ多すぎ(笑)

6.まとめ

「中間管理録トネガワ」は、最近読んだマンガの中では、久々にお腹を抱えて笑える作品でした。購入して、読了してすぐに何度もリピートして読みかえしてしまいました。ガラパゴス的な日本企業の中間管理職の難しさや悲哀を、これだけ笑いに変えて作品に仕上げられる構成力は素晴らしいと思います。なおかつ、それでいて元の「カイジ」の作品の雰囲気も全く壊れていないという、、、

この作品は、特に今サラリーマン生活を頑張っている人にこそ、読んで欲しい傑作です。12月6日に、最新刊の4巻も紙媒体、Kindleと両方で発売されています。今の時点で、まとめ読みしてみてはいかがでしょうか?お勧めのマンガです!

【2016年12月13日追記】
最新刊の4巻が12月6日に発売となりました!相変わらずの面白さでグイグイ引き込まれました!よくもこんなに笑えるネタが次々と出てくるなと感心します!せっかくなので、中身を少しだけ紹介させて下さい。

4巻では、新キャラが登場します。兵藤会長がきまぐれに、「影武者を作れ!」とトネガワに号令。困ったトネガワでしたが、偶然入った飲み屋のマスター「まさやん」が、会長のそっくりさんでした。そして、まさやんの影武者としての特訓が始まります・・・

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また、サラリーマンでよくある休日のイベントといえば、部下の結婚式です。トネガワチームの黒服、荻野の結婚式にトネガワ率いる黒服チームで参加することになったのですが、山崎のサプライズ企画はなんと流行りのフラッシュモブ(笑)爆笑ものでした! 

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【書評】原晋「勝ち続ける理由」/青学が強くなった理由が惜しみなく公開された良書!

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【2016年12月13日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

2016年も、箱根駅伝が近づくに連れ、駅伝の関連書籍が続々と発売されていますね。駅伝ファンの僕としては、駅伝レースそのものだけでなく、書籍をチェックするのも非常に楽しいのです。

今日は、青山学院大学陸上競技部監督の原晋氏最新著作「勝ち続ける理由」を取り上げて、感想や思う所を書いてみたいと思います。

初優勝後、たくさんの著作が発売された

2015年の箱根駅伝。原晋監督の率いる青山学院大学が初優勝をさらっていった時は、本当に驚きました。タイム的にも実力的にも、青学はダークホース的存在であり、今年も東洋と駒沢の一騎打ちかと思っていたら、5区で山の神、神野大地が驚異的なタイムで爆走します。そして、復路は5人中3人が区間賞、2人が区間2位と最高のパフォーマンスでぶっちぎりの優勝でした。

その数年くらい前から、年々、青山学院大学が箱根駅伝で成績が向上するにつれ、マスコミの前での軽妙なトークが取り上げられるようになってきていた原監督ですが、目立ちたがり屋だし、今年は原監督の書籍がたくさん本屋に並ぶんだろうなぁと思っていたら、案の定。瞬く間に4冊の著作が出版されました。

原監督曰く、2015年の初優勝後、約40社から書籍企画のオファーがあり、そのほとんどは断ったが、それでも食らいついてきた4社には根負けして出版を決めたとのこと。

僕も、昨年、結局そのうちの3冊を購入して読んでみました。ビジネスマン時代に仕事を通して学んだチームビルディングやコミュニケーションの方法論を、青学の駅伝チームづくりに応用し、苦節10年。途中、監督解任の危機とチームの低迷を乗り越え、11年目での初優勝となったのでした。3冊読んだうち、一番のオススメがこの本。

中国電力の陸上競技部を、入部半年後の不注意なねんざが原因となり、5年で退部。その後、親会社の中国電力でビジネスマンとして成長していく、「監督就任以前」の成功譚と、そこで得た知見をベースとして10年がかりで青学を箱根駅伝優勝に導いたストーリーは、非常に読み応えがあります。

2016年秋に出版された最新の著作「勝ち続ける理由」

ここでようやく本題に入るのですが、上記の祥伝社新書の続編として出版されたのが、今回のエントリで書評として紹介したい「勝ち続ける理由」です。

前作と同じく新書フォーマットで、200ページちょっとでサラッと読める内容。この本の一番の見どころは、「箱根駅伝初優勝後」の原監督と、成長した青山学院大学の駅伝チームの「その後」の状況です。

長距離陸上ファンなら御存知の通り、2015年新春の箱根駅伝に勝った青学は、2015年度の全日本大学駅伝を2位と取りこぼした以外、2015、2016シーズンを通じて3大駅伝を勝ち続け、好調を維持しています。(5戦4勝2位1回)

2015年の箱根初優勝後は、その後春先までテレビやマスコミに出ずっぱりとなり、「ちゃんと練習見れてんのかな?」と思ったものですが、ここまでの圧倒的な結果が示す通り、しっかり手綱を握ってマネジメントできていたということでしょう。

本書では、まさにタイトル通り、ここまで「勝ち続ける理由」を原監督が言いたい放題語り下ろした内容は、陸上マニア必見。陸上マニアではなくても、ビジネスマンや学生など幅広い層をインスパイアしてくれる良書でした。

以下、僕が特に感銘を受けた印象的だったポイントをピックアップしてみたいと思います。

前時代的で旧態依然としたトレーニング法からの脱却

青学が初優勝した時、非常に感銘を受けたのが、選手全員がのびのびしていて、自分の言葉できちんとマスコミに受け答えする余裕があったこと。選手の自主性、個性を認め、その上で高いレベルでチームワークを機能させていたチームビルディングができていたのだな、と受け止めました。

しかし、青学のようなチームは非常に珍しいのです。今も昔も、実業団チームであろうと大学、高校であろうと、長距離陸上のチームは禁欲的で軍隊のようなチームが散見されます。入部すると角刈りが必須で、TwitterなどSNSも禁止、トレーニング中の私語も禁止、監督には絶対服従、体罰でのペナルティ等々、入部した選手にはまるで修行僧のような生活が待っています。

前著、そして本書を通じて、原監督は一貫してこうした旧態依然とした前時代的なトレーニング法を完全に否定します。戦後しばらく厳しい時代を生き抜いてきた若者には通じたとしても、2016年現在、「走れ走れ!」といった根性論や軍隊式メソッドがフィットしていないのは、誰の目にも明らかです。ビッグマウスな原監督が、ストレートな文章で明快に言い切るのは読んでいて非常に痛快なのです。

「理詰め」で考え、チームをより良くしていく

軍隊式教育を否定する原監督が、代わりにチーム運営の核として大切にしているのが、「理詰め」で考え抜き、行動することです。根性論ではなく、科学的・理論的アプローチで常に新しい選手の育成方法を模索しつつ、上からではなく、コーチングのような目線で選手と対話を重ねることで、納得させた上でチームを率いる。

決して慢心せず、箱根駅伝優勝後も変わらずにチームの改善に取り組んでいることが本書からはよくわかります。

「青トレ」メソッドの凄さ

特に、目覚ましく成果を挙げているのが、2014年から取り入れた、中野・ジェームス・修一氏が監修する、体幹を鍛える「青トレ」メソッド。体幹を鍛えることにより、フォームの矯正による走力アップと、ケガの防止につながっています。

脚部に負担のかかる長距離走はケガによる故障が避けられないものですが、この「青トレ」が浸透してからは、レギュラーメンバー内での故障者率が1割を切ったとか。凄い成果です。

目標管理シートは、シートそのものより運用が優れている

さらに、前著でもクローズアップされていましたが、青学名物の「目標管理シート」の運用の徹底です。

青学では、選手一人一人の自主性・個性を大切にするため、チーム目標とは別に、個人目標を「目標管理シート」に細かく記載し、PDCAサイクルを回すようにしています。

本書には、こうあります。

目標管理シートの意味とは、目標管理ミーティングという手法を使って、自分が目標実現に向かってどのようなプロセスを歩んでいるかを「見える化」することであって、それだけのことである。  

個人個人が記入した「目標管理シート」は、選手が自分一人で書き入れて、自分で振り返って自己完結して終わりではありません。シートは、徹底的にチームで共有され、「見える化」されるのです。

提出された「目標管理シート」は、まずチームミーティングで上級生やチームメイトの目を通り、その目標が妥当なのか、実際の目標達成状況はどうだったのか、定期的に見直されます。PDCAサイクルが生きているのですね。こうして完成したシートは、さらに仕上げとして選手それぞれが自己採点した上で、廊下に貼り出され「見える化」されるのです。

さらに、原監督は選手寮で一緒に住み込んで選手一人一人の状態を徹底的に観察するとともに、この「目標管理シート」を起点に、さらに踏み込んだ個人指導や面談を行います。

「目標管理シート」的なシートは、どこにでも良くあるツールですが、得てしてその運用は尻すぼみになってしまうもの。青学が凄いのは、このシートの運用を、組織として、徹底的に、しかも長期間ずっと継続できていることです。

長距離陸上界への痛烈な提言

青山学院大学が長距離陸上で勝ち続け、原監督が実績を積み上げていくにつれて、監督の発言は、徐々に駅伝監督レベルから、より視野を広げた「世界」や「長距離陸上界」全体を念頭に置いた、より野心的なものに変わっていきました。

ビッグマウスな原監督らしい発言ですが、でも、これには非常に大きな意味があったと感じています。やっぱり、こういうのは勝っているうちにガンガン言わないとだめです。閉塞感ただよう長距離陸上界のために、どんどん言ってくれ!という感じ。

御存知の通り、2016年のリオ・オリンピックでは、体操、水泳や男子柔道など、ナショナルチームがしっかり機能した分野ではメダルや入賞選手が続出しました。それに対して、長距離陸上はどうだったのでしょうか?

女子の5000mで少し成果があった以外は、非常に厳しい結果となりました。特に、かつてのお家芸だったマラソンの惨敗ぶりが目立ちました。実業団・大学をまとめきれず、ナショナルチームが事実上崩壊した男女マラソンは、根本的に2020年、2024年を見据えた強化のやり直しが絶対に必要です。しかし、現状はまったくそういう動きが見えてきません。本当に大丈夫なのでしょうか?

本書の最終章では、絶「口」調の原監督が、長距離陸上界や、箱根駅伝のあり方について、ビジネスマン生活で鍛えた斬新なアイデアをたっぷり語っています。

その一部を紹介すると・・・

第100回の記念大会をめどに、箱根駅伝の全国化を実行せよ。東京一極集中の流れを変え、陸上界の発展と地域の再生の起爆剤になる。
・誰も突破できない形骸化した派遣設定標準(2時間6分30秒)を廃止し、代わりに「若手を育成する」という条項を選考要項に入れよ。
・真夏に開催されるオリンピックはタイム勝負ではなく、勝負強さが決め手となる。国内の選考会でペースメーカーを廃止せよ。
ナショナルチームや強化助成対象に学生を入れよ。東京マラソンで日本人2位、3位となった「学生」の一色、下田は強化対象から外されたのはおかしい。
・大学/実業団対抗駅伝を創設せよ。
・国内のマラソンレースを競馬のようにグレード制にせよ。

どれも良い提言で、実行もそれほど難しくないものばかりです。是非、陸連は原監督に嫉妬ばかりしてないで、2020年に向けて改革を進めていってほしいなぁと思います。

まとめ 

原監督の発信力が高いのは、意識的に業界の広告塔になろうとしてマスコミへのアピールを欠かさないこともありますが、その本質はサラリーマン時代にビジネスで培ったコミュニケーション力だと思います。

ビジネスや人生で培った経験を駅伝のチームビルディングに活かして大成功できるのなら、駅伝で大成功した数々のノウハウを、逆に仕事や人生に応用するのも有効なはず。

本書でも、非常にわかりやすく「箱根駅伝優勝後」の青学や監督自身の取り組みや、長距離陸上界への提言などがまとめられています。駅伝/マラソンマニアにはもちろん、それ以外の人にも幅広く普段の生活や仕事で応用できる内容が詰まった良書でした。

駅伝マニアもそうでない人にも非常におすすめの本です。是非目を通してみて下さい。

それではまた。
かるび

【ネタバレ】映画『海賊とよばれた男』の感想とストーリー解説/原作を超える感動の大作でした!

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【2016年12月11日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

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12月10日から、封切られた映画「海賊とよばれた男」。東宝がお正月映画として力を入れている作品ですが、早速初日の朝一で見に行ってきました。以下。感想を書いてみたいと思います。

※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

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【監督】山崎貴(「ALWAYS三丁目の夕日」「永遠の0」)
【原作】百田尚樹(「海賊とよばれた男」)

前作、興収80億円の大ヒットとなった映画「永遠の0」に続き、百田尚樹の「海賊とよばれた男」も同じ体制で映画化されることになりました。山崎監督、阿部秀司プロデューサーを筆頭に、主役も前作同様、岡田准一を据え、さらに山崎監督が過去作で起用した主役クラス(吉岡秀隆/「ALWAYS三丁目の夕日」、染谷将太/「寄生獣」)を脇に配置する、豪華キャスト陣で固めた万全の必勝体制で制作されました。

2.主要登場人物とキャスト

いわゆる「山崎組」と呼ばれる、山崎監督の信頼するキャスト陣が総結集した本作品。会社組織を描くため、登場人物はかなり多めとなっていますので、人物関係図が役に立ちます。

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国岡鐵造(岡田准一)
主人公で国岡商店の店主。出光佐三のモデルとなった人物。信念を持って行動し、危機においても機転と度胸で乗り越え、会社を大きく育て上げた。
東雲忠司(吉岡秀隆)
国岡商店の生え抜きにして、一見頼りなさ気な3枚目キャラとして描かれる。戦争終結後復員し、国岡商店の大黒柱として活躍。後の3代目社長。(映画では省略)
長谷部喜雄(染谷将太)
国岡商店の生え抜きメンバー。厳粛でコワモテの店主にも、唯一軽口を叩くなど、国岡の精神的な支柱だったが、1945年、太平洋戦争で戦死。
武知甲太郎(鈴木亮平)
GHQで通訳を務めていたが、国岡商店の素晴らしさに惚れ込んで戦後間もなく入社。外国人との交渉に力を発揮し、高度経済成長時代における国岡商店を支える。
柏井耕一(野間口徹)
国岡商店の生え抜きメンバー。常に冷静沈着なブレーン的存在。
甲賀治作(小林薫)
創業当時からの番頭的存在。国岡商店のNo.2として、会社をまとめ上げる。
藤本壮平(ピエール瀧)
元海軍大佐で、終戦後仕事がない国岡商店に入社し、ラジオ事業を手がけた。
ユキ(綾瀬はるか)
国岡鐵造の最初の妻。門司時代の若き日の鐵造と国岡商店を支える。 

3.映画の見どころ(ネタバレ無し)

3-1.ゴージャスに使われたVFX

ふんだんに用意された製作予算により、ほぼ全編を通じてVFX技術によるスケール感のある映像が実現されています。戦争中の空襲シーン、巨大なタンカーのシーンをはじめ、ハリウッドの大作映画を彷彿とさせるリアルで迫力のあるVFXは、間違いなく邦画では今年No.1の作り込みだと思います。

3-2.ここぞと言う時に歌われる、国岡商店社歌

原作「海賊と呼ばれた男」では登場しない、映画でのオリジナル劇中歌として、男たちが集まる山場のシーンで繰り返し歌われます。特に日承丸(日章丸)に乗り込んだ船員達が危険な航海の中で結束を高めるために歌う箇所は印象的でした。日本人は昔から歌うことで試練や危機を乗り越えてきたのかもしれません。

3-3.岡田准一の名演とメイク技術の凄さ

本作では、国岡商店の店主、国岡鐵造の一生を取り上げますが、ストーリーの大半は、鐵造が60代以降となった戦後の復興期です。まだ30代の岡田准一がハリウッド仕込みの完璧な老けメイクで、店主になり切った演技は本物の60代の経営者に見えます。大物感が凄い!

また、岡田准一は、演技の凄さはもちろんですが、60代以降の老年期の国岡鐵造を収録する時、本番前に大声を何回も出して声をツブしてから撮影現場入りする逸話など、その徹底したプロ意識の高さにも驚かされます。

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4.結末までの簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

1945年夏。アメリカ軍に対抗できる航空戦力を完全に失った日本は、東京大空襲によって焼け野原となっていた。国岡鐵造とその仲間たちは、為す術なく真っ赤に燃える東京の街の様子をただ見つめるだけだった。

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戦争が終結した2日後。1945年8月17日、解雇に怯える社員たちを前に、鐵造は「日本人としての誇りを失わず、全員一致して社業を再興させよう」と訓示を行った。当面できる仕事はなかったが、社員を誰一人クビにせず、守り抜くと皆の前で誓った。

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その日、鐵造は石油統制配給会社(以下、「石統」と省略)を訪問し、取り扱う石油を融通してもらえるように鳥川相殺に頭を下げて頼み込んだ。ぐっとこらえて何度もお願いしたが、戦前に関係が悪化していた石統の鳥川に、案の定相手にされない鐵造。

その晩、自宅に帰り、妻と息子たちに迎えられた鐵造だったが、自室の書斎にこもると、忸怩たる思いから、過去に思いをはせるのだった。

1922年。27歳となった鐵造は、門司で独立し、これから迎える石油全盛時代に備え、機械油の代理店「国岡商店」を営んでいた。石油がまだマイナーだった時代、営業で苦戦続きの鐵造。同業者からの嫌がらせや、取引先からの袖の下の要求などに屈せず、自ら定めた社是「士魂商才」を胸に、仕事に打ち込んでいた。

しかし、経営に行き詰まる鐵造。鐵造は、独立する時に出資してくれた木田章太郎に弱音を吐くが、木田からは「3年でダメなら5年、10年、とことんやってみろ。それでもダメなら共に乞食でもしよう」と激励され、気合を入れるのだった。

そんな窮地に、鐵造は焼玉エンジンで動く漁船(通称:ポンポン船)向けに、灯油の代わりに元売りの日邦石油内に売れずにだぶついていた軽油を格安で売ることを思いつく。実験してみたら、軽油でも焼玉エンジンは作動した。

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「船だせー」という鐵造の掛け声とともに、翌朝以降、商圏の縄張りがない門司の海上で、軽油の行商を始めた鐵造。遠くからも見えるように旗を振り、「油持ってきたけぇ~」という掛け声とともに、漁船へゲリラ的に販売活動を行う。

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これが見事に当たった。同業者の嫌がらせもあったが、国岡商店はどんどん成長していった。やがて、近辺で鐵造は賞賛と揶揄が入り混じり「海賊」と呼ばれるようになる。

この頃に、後の国岡商店のキーマンとなる長谷部や東雲が入社してきた。また、商売が軌道に乗った鐵造は、兄の勧めでユキという妻を迎え、妻も含め、ようやく10名となった国岡商店は、一つの大きな大家族みたいな集団となった。

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(回想シーンから戻る)

60歳となった鐵造のもとに、元海軍大佐の藤本という男が訪ねてきた。GHQからの依頼で、銀行から融資を受けてラジオ修理の仕事をやらないかという。鐵造は藤本をそのまま入社させ、ラジオ部を立ち上げる。苦心した末に銀行からの融資が決まり、立ち上がったラジオ部は、戦後まもなく石油業務ができなかった国岡商店を支えた。

また、その頃、全国の石油タンクの底に残る石油をさらう業務を受注する国岡商店。他社がやらないキツくて厳しい業務だったが、鐵造は率先して国益のために引き受け、復員してきた東雲達がそれを担当することになった。

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タンクからの汲み出しは難航したが、鐵造の激励などもあり、2年後の1947年には、見事に全てやりきった国岡商店だった。

同年、GHQで通訳を勤めていた武知が、国岡商店の仕事ぶりに惚れこみ、アポなしで国岡に「社員にしてくれ」とやってきた。その場で採用を即決する鐵造。そして、武知は、石統に変わって設立された石油配給公団が指定する「販売業者」選定要項案に、国岡商店を排除するための一文が入っていることを鐵造に報告した。

早速武知を中心に、GHQへの働きかけを行い、石油配給公団の選定要項を覆すことに成功した。晴れて国岡商店は、国内で正式に石油を販売できる業者になった。GHQが国岡商店に取り計らったのは、武知の動きもあったが、前年までの石油タンクをさらう業務を評価してのものだった。国岡は、思いを新たにしつつ、満州でメジャーと戦った過去に思いを馳せていた。

(回想シーン)

1915年、軽油の海上給油販売で力をつけた国岡商店は、満州への営業を開始していた。サンプル品を持って、長谷部と共に南満州鉄道の現場へ営業をかける二人。冬場に凍らない機関車の車輪に使用する車軸用の潤滑油を安く提供することで商機を見出した鐵造は、大連の満鉄本社でも営業を開始する。

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一方、ユキとの間には子供が恵まれなかった。いよいよ3度目の渡航となった1918年、このプレゼンが終わったらゆっくり旅行でも行こう、とユキを労い、鐵造は満州へ出発した。

満州では、寒波により頻発する車軸の焼付きを防ぐための、不凍油を実証実験するための場に国岡商店と石油メジャー数社が呼ばれていた。機関車を実走させ、その後の状況を比較チェックすると、「ナフテン系」の石油で精製した国岡商店の車軸油のパフォーマンスがNo.1であることが判明。しかし、実験では優秀さを証明できたが、メジャー系会社を恐れた満鉄本社は、なかなか国岡商店の車軸油を採用しようとしなかった。

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さらに悪い事に、帰国すると門司の家にはユキがいなかった。居合わせた兄を問い詰めると、跡継ぎもできず、一人で鐵造を待つ寂しさから離縁して実家に帰ってしまったという。愛する妻を守れず、悔しがる鐵造だった。

(回想少し飛ぶ)

1941年12月、太平洋戦争が勃発し、翌42年、57歳になった鐵造。ABCD包囲網により、石油が輸入できなくなった日本は、南アジアの石油基地を占領した。石統のあからさまな利権確保への動きを嫌った陸軍は、南方基地での石油取扱業者を国岡商店に一任することになった。地団駄を踏んで悔しがる、石統の鳥川。

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陸軍から、何日あれば南方に人員を派遣できるか尋ねられた長谷部は、自信を持って「1週間あれば200人はOK」とその場で即答し、陸軍関係者を良い意味で驚かせるのだった。長谷部は、南方の石油基地への移動に陸軍機に同乗して出向いたが、到着寸前で米軍機に撃墜されて無念の死を遂げた。長谷部の死を知らされた鐵造は呆然とするのみだった。

(回想終わり)

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その後、石油メジャーからの提携話(買収)もあったが、民族系の石油会社にこだわった鐵造は、1951年いよいよ自前の巨大な石油タンカー、「日承丸」の進水式を行った。メジャーとは敵対関係にあったが、何とか自前の仕入れルートを確保して、日本中に石油を供給するのだった。

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しかし、徐々にメジャー各社から仕入れルートを絶たれ、日々の仕入れに苦慮するようになっていく国岡商店。鐵造は、起死回生の一策として、石油メジャーの色がついていないイランから輸入することを思いつく。

イギリス、アメリカと対立していたイランの国際情勢を考えると拿捕される可能性が高く、重役陣から猛反発を受けた鐵造だったが、それでも鐵造の意志は固く、自前の日承丸を動かして、イランに船を送った。

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イランでは大歓迎され、給油を終えた日承丸は、石油を満載して帰途についた。イギリス軍の基地があるマラッカ海峡を大きく迂回して、スンダ海峡経由で裏をかいたが、途中でイギリス軍のフリゲート艦「バンカーベイ」に見つかり、停船警告を受ける。

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しかし、船長の盛田は強気でそのまま突っ込み、スレスレのところで衝突を免れた。イギリス船は、何故かその後追ってこなかった。

その数日後、たくさんのマスコミが構える中、無事に川崎港に到着した日承丸。重役以下、満足そうに見つめた鐵造。「油持ってきたけぇ~」と思わず懐かしいフレーズが自然とこぼれるのだった。戦争後もずっと戦い続けた鐵造の戦いに一区切り着いた瞬間だった。

その後、鐵造は96歳まで生きた。亡くなる直前、離縁したユキの子孫と対面し、ユキのその後を回顧して涙する鐵造。そして、大勢の息子、孫達に囲まれ、海賊と呼ばれた若き日々に思いを馳せるのだった。

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5.感想や評価(※ネタバレ有注意)

5-1.とにかく泣ける名作!

戦中戦後の厳しい時代の中、ギリギリの所で仲間が一丸となって困難に立ち向かうシーンの連続です。社員を家族同様に扱い、国家や会社の仲間のために粉骨砕身する鐵造の姿は、見ていて強く引き込まれました。

何度も国岡商店がピンチになるたびに、鐵造のアイデアと行動力、そしてそれに一致団結して応える熱い社員たち。自然と皆で歌い上げるような感じで挟まれる社歌のシーンにも心打たれます。

「泣かすぞ泣かすぞ」という演出ではないのですが、鐵造と仲間たちの本気のぶつかり合いと団結力に、自然と心動かされ感動させられてしまう、そんな映画でした。

5-2.原作者のイデオロギー的なにおいはうまく脱臭されている

ここ1~2年、街頭演説や各メディアを通じて過激な右寄りの発言が目立つ原作者、百田尚樹氏ですが、原作ではそこまでイデオロギー色が強くないですし、映画ではそういった政治色はより一層薄まっています。

逆に、国岡鐵造のモデルである出光佐三がもともと社是として掲げていた「大家族主義」「士魂商才」「人間尊重」といった考え方が、非常に良くクローズアップされていました。映画全体に染み渡るように反映されていたと思います。

5-3.岡田准一を始め、各俳優の演技が原作を超えるクオリティ

古き良き昭和の経営者になり切った岡田准一の演技が、とにかく素晴らしいの一言。駆け出しの頃から、中年期を経て、どっしりした60代まで、声色から立ち振舞まで細かく一人で男の一生をきっちり演じ分けできていました。

また、脇役がやや弱い原作小説とは違い、映画では鐵造の脇を固める重役陣のキャラクターが生き生きと描き分けられたのも良かったです。3枚目な東雲、店主に馴れ馴れしく口を利ける長谷部、大番頭の甲賀、ソツないキャリア系の武知、冷静沈着な柏井など、多彩な個性がぶつかりあうサブキャラたちもいきいきとしていました。

6.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意)

6-1.国岡鐵造のモデルとなった人物、出光佐三とは?

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(引用:http://showa-g.org/men/view/186

国岡鐵造のモデルとなった人物は、出光興産株式会社の創立者、出光佐三です。「人間尊重」「大家族主義」「士魂商才」など、確固たる生き方や経営の指針を持ち、戦後を代表する日本の名経営者であるとともに、精神的な支柱でもありました。佐三の経営方針を受け継いだ現在の出光興産では、今でも出退勤簿はなく、リストラはないそうです。

佐三自信、10冊以上の自著を残しており、彼の伝記や考え方をまとめたビジネス本なども含めると、かなりの著作があります。

6-2.大恩人、木田章太郎(日田重太郎)の存在

鐵造が若い時、章太郎の息子の家庭教師をしたことで、縁ができた資産家です。鐵造を気に入った章太郎は、鐵造が門司で起業した時に、私財を6,000円出資して鐵造を援助しました。(原作小説では、実名の日田重太郎で描かれる)映画では終戦後にはもう亡くなっていますが、原作小説では昭和30年代まで生き、たびたび鐵造の精神面でのメンターとなっています。なお、重太郎の恩に応えるため、鐵造は徳山製油所を作った際の町名を「日田町」としたり、重太郎の晩年や、その子どもたちの就職の世話まで、まさに10倍返しで面倒をみています。

6-3.鐵造は門司で漁船に何を売って成功したのか?

当時の漁船は、焼玉エンジンという灯油で動く簡易エンジンを使って操業していました。エンジン音が「ポンポン」とするから、ポンポン船と呼ばれていました。門司や博多の沿岸は、当時すでに別の石油小売店が縄張りを持っていたため、上手く食い込めなかった鐵造は、陸ではなく、海の上で売れば問題ないだろう、とひらめきます。

その際、仕入先の日邦石油でだぶついていた軽油が、灯油の代わりになるのであれば、かなり格安で販売もできる。そう考えて、実験してみた所、焼玉エンジンは普通に動作したため、海上でのゲリラ的な安価販売戦略が見事にハマリ、国岡商店は立ち直ったのでした。

6-4.石統とはなにか?なぜ国岡商店と石統は仲が悪かったのか?

石統とは、第二次大戦の統制経済下、軍部が作った国策会社「石油配給統制会社」の略称です。戦略物資である石油の販売権を国の管轄とし、ここに加入していない会社は戦後しばらく石油の取扱ができなくなっていました。

戦前から、国の統制を嫌い、中国や朝鮮など海外を中心に活動してきた国岡商店ですが、映画にもあった通り、南方軍が石統系の会社と利権を配分するための国策会社を立ち上げようとしたところを、国岡商店が横槍を入れて「台無し」にしたことが尾を引いて、石統から冷たくされてしまったということです。

6-5.石油メジャーとは?

メジャーとは、世界の石油生産・販売を独占する国際石油資本です。戦前から長らく大手7社に集約されてきたので、「セブン・シスターズ」と呼ばれていました。国内で原油がほとんど採れない日本は、彼らメジャーの顔色を伺いながら石油を仕入れるしかなく、戦後は次々に国内の石油会社はメジャーの子会社となっていきました。

ちなみに、戦後すぐの当時の石油メジャーはこんな感じ。

  • スタンダードオイルニュージャージー
  • ロイヤル・ダッチ・シェル
  • アングロペルシャ
  • スタンダードオイルニューヨーク
  • スタンダードオイルカリフォルニア
  • ガルフオイル
  • テキサコ

今現在は、ロイヤル・ダッチ・シェル、シェブロン、BP、エクソンモービルの4社体制に更に集約されていますが、未だ石油メジャーの影響力は非常に高いのが現状です。

6-6.なぜ、満州での実証実験で国岡商店は石油メジャーに勝てたのか

石油メジャーが持ち込んだ車軸用の潤滑油は、パラフィン系という寒さに弱い原油から作られていましたが、国岡商店の潤滑油は、飽きたの道川油田、豊川油田から採油されたナフテン系という凍りにくい声質の原油からできていました。徹底的な鐵造の研究もありましたが、生産地の違いによるラッキーな一面もあったのです。

6-7.日承丸(日章丸)の帰国ルートは?

日承丸は、原油を積み込んでイランから帰国する際に、シンガポールに駐留するイギリス軍との遭遇を避けるため、通常使用されるマラッカ海峡ではなく、スマトラ島を大回りして迂回しました。

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上記の図にある通り、スマトラ島を南下し、スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を抜け、カスパル海峡を抜けて北上するルートを取りました。こうした盛田船長(原作では新田船長)の努力があったから、拿捕されずに帰国できたのですね。

7.原作との相違点(※ネタバレ有注意)

7-1.原作ではイギリス軍と遭遇しなかった!

原作では、帰国ルートを変更したことにより、航海中はイギリス軍に遭遇することなく川崎港に帰港しています。ただし、ギリギリの駆け引きを行うため、当初陽動として徳山港へ向かうと見せかけ、川崎へと進路を変更しています。

7-2.原作では、第2代社長となる弟が重要キャラクター

原作では、満鉄に勤務していた弟・正明が満鉄解散後に国岡商店へ合流し、経営陣として活躍しています。日章丸事件から数年経過して、鐵造が会長職へ退いた時、社長に正明を指名して、後継社長としました。ちなみに、3代目は東雲です。

7-3.その他、省略されたいくつかのエピソード

関東大震災後の貸し剥がしとの戦い
1925年に関東大震災が起こり、その後の不況が来ると、銀行から突然資金の引き上げを宣言される国岡商店。慢性的に借金経営で会社を拡大していたため、資金ショートの危機に晒されます。結果的に、鐵造は熱い気持ちと禅問答のようなやりとりで新たな銀行から融資を引き出すことに成功します。

禅画「仙厓」との出会い
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(引用:出光美術館HPより)

映画でも仙厓を模した絵が2枚社長室に飾ってありましたが(偽物でした/笑)、鐵造=出光佐三は、若い時に父の影響で手に入れた江戸時代の禅僧、仙厓和尚の「指月布袋図」を手に入れ、生涯大切にします。現在、この「指月布袋図」は出光美術館で人気No.1の収蔵作品となっており、仙厓の評価が高まったのは、出光佐三の熱心なコレクションと海外での普及活動によるところが非常に大きかったと言われます。

ちなみに、仙厓については、出光佐三が設立した出光美術館で、年に1回は企画展が開催されます。僕も、先日開催された「大仙厓展」に行ってきましたので、もし良ければ下記リンクをチェックしてみてくださいね。 

徳山での世界最大級の石油コンビナート建設事業
鐵造は、日章丸事件後、さらに業績を拡大するために、徳山に自社保有の石油精製所を建設します。通常は2年かかるであろうと見積もられた工期を、土日祝日を返上し、10ヶ月で完了させた逸話が凄いです。

8.まとめ

2時間20分と非常に長い映画ですが、手に汗握るスリリングな展開は時間を感じさせず、気づいたらあっという間にエンドロールを迎えていました。松下幸之助や本田佐吉らと同じく、昭和の高度成長期で日本を支えた熱い男、出光佐三=国岡鐵造の生涯を描いた素晴らしい大河ストーリーでした。文句なくおすすめ!

それではまた。
かるび

9.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

原作「海賊とよばれた男」

単行本、文庫文庫あわせて420万部を売り上げたお化け作品。映画ではカットされた『日章丸』事件のその後や、仕事一辺倒ではなく、「仙厓」の禅画や唐津焼など、アートの収集にも力を入れた出光佐三=国岡鐵造の意外な一面がしっかり描かれています。まだ未読の方は是非!

マンガ版「海賊とよばれた男」

非常に原作を忠実に書き起こしたコミカライズ版。小説の重要な場面は、漏らさずにしっかり名場面に仕上げられています。小説の上下巻を全10冊でじっくり描きました。現在第1巻はkindleで無料で読めます!

映画の劇半音楽(サウンドトラック)

大河ドラマのような重厚・壮大な劇伴音楽も、クライマックスで効果的に使われていました。今作が感動の大作に仕上がった一つの理由として、サウンドトラックのレベルの高さが挙げられると思います。もちろん、国岡商店の社歌も収録されています。

永遠の0

こちらも、現在Kindle版の第1巻が無料になっています。「海賊とよばれた男」製作につながるきっかけになった、山崎監督が手がけた百田尚樹のデビュー作のコミカライズ版。コミックも「海賊とよばれた男」同様、須本壮一氏が手がけています。

自分で名画を選んで作れる「国立美術館オリジナルカレンダー2017」を注文してみた

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かるび(@karub_imalive)です。

毎年、自室に飾る壁掛けカレンダーは、ストレスフルな毎日から少しでも癒やされようと「リラックマ」カレンダーを使ってきました。でも、今年は会社も辞めたし、何かアート系のカレンダーでいいのがないかなぁと思って探していたら、ちょうどいいのを見つけました。

独立行政法人国立美術館の管轄する、全国5箇所の国立美術館に収蔵された、えりすぐりのアート作品の中から、自分で自由に選んで12ヶ月分の絵画写真を組み合わせることができる、題して「国立美術館 オリジナルカレンダー2017」です。

先週の木曜日にオーダーして、昨日届きました。非常にいい感じのカレンダーだったので、紹介したいと思います。(これ、結構ブクマしてる人多いですね・・・)

国立美術館オリジナルカレンダーとは?

独立行政法人国立美術館が企画・販売している、所蔵作品の写真で飾られたオフィシャルカレンダーです。販売サイトの説明文には、このようにあります。

国立美術館オリジナルカレンダーは、月ごとの作品を自分で選べるカレンダーです。選べる作品は、国立美術館のコレクション選りすぐりの、人気作揃いの約140点から。2017年版は国立西洋美術館の世界遺産登録を記念し、国立西洋美術館の建築写真を多数追加しました。

この企画、毎年の定番となっているようで、濃いアートファンの間では、結構有名なアイテムのようですね。選べる作品は、以下の5つの美術館に収蔵されている140点の作品です。

f:id:hisatsugu79:20161212150824j:plain(引用:独立行政法人国立美術館HPより)

選び方は、以下の3通りです。

・12枚選ぶ(1ヶ月毎の壁掛けカレンダー)¥2,900
・6枚選ぶ(2ヶ月毎の壁掛けカレンダー)¥2,300
・スタッフのお勧めセレクト ¥2,300(2ヶ月毎)/¥2,900(1ヶ月毎)

僕は、毎月違うアートに触れたいので、1ヶ月めくりの12枚セレクトできるバージョンにしました。カスタマイズは、オンラインの注文フォーム上で行いますが、作っていく手順はこんな感じ。

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一旦、画面に表示された140枚のアート写真のサムネイルから、好きな作品を12枚選び、それを画面上で自分で好きな月順に置いていきます。それで、申し込みボタンを押せば完了。

ちなみに、僕はマイルールとして、「まだ見たことのない作品」を12枚選ぶことにしました。あらかじめカレンダーで作品をじっくり予習しておくことで、実際に肉眼でリアルに対面する時の喜びが大きいんですよね。「あー、ここはこんな風に描かれたのか~」とか。

結果として、選んだ作品はこんな感じでした。

1月・・・下村観山「木の間の秋」
2月・・・小杉放菴「椿」
3月・・・瑛九「れいめい」
4月・・・川合玉堂「行く春」
5月・・・上村松園「母子」
6月・・・狩野芳崖「仁王提鬼図」
7月・・・平福百穂「荒磯」
8月・・・小茂田青樹「虫魚画巻」(部分1)
9月・・・冨田溪仙「醍醐之華」
10月・・・小茂田青樹「虫魚画巻」(部分2)
11月・・・上村松園「舞支度」
12月・・・佐々木象堂「_型鋳銅置物采花」

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こうやって見てみると、自分が選んだ絵画は、ほとんど日本画でした。国立美術館に収蔵されている優れた近代日本画家の作品については、まだまだ勉強不足だなと痛感。カレンダーで慣れ親しんでから、改めて、来年しっかり実物を見て回りたいと思います。

開封して、飾ってみたらこんな感じ

僕がWebで注文したのは、12月2日。そして、今日12月12日午前中に無事に到着しました。手作りで職人さんが一枚一枚作っていくので、ある程度時間がかかるだろうと思っていましたが、素早い仕上がりです。

表紙は、こんな感じ。国立西洋美術館の世界遺産指定を受けて、美術館の建物の内装や外観が表紙になっています。

カレンダー表紙f:id:hisatsugu79:20161212155844j:plain

壁にかけてみました。いい感じです。家のリビングの一番いいところに鎮座させました。来年こそ、これで芸術に理解のない妻と子供をアートにはまらせてやろうと画策しておりますフフフ・・・

上村松園最高!f:id:hisatsugu79:20161212155948j:plain

まとめ

ということで、来年はこの「国立美術館オリジナルカレンダー2017」で自宅でちょっとしたミュージアム気分を味わいたいと思います。

ちなみに、手作りでの製作となるため、年内到着分は、12月18日の注文分までだそうです。もし、興味がある方は是非急いで注文してみて下さい。

注文は、下記リンクからどうぞ。
おすすめです!

こちらのサイトで注文
国立美術館 オリジナルカレンダー2017

それではまた。 
かるび

橋本崇載「棋士の一分」は内部から将棋界を痛烈批判した衝撃の問題作だった!

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かるび(@karub_imalive)です。

ここ最近、アニメ「3月のライオン」映画「聖の青春」公開、そして三浦弘行9段の「ソフト指し不正事件」と、話題に事欠かない将棋界。

そんな中、現役バリバリの上位棋士、橋本崇載八段による将棋界を痛烈に批判した衝撃の問題作「棋士の一分 将棋界が変わるには」が12月10日に発売されました。

橋本崇載八段といえば、三浦弘行九段の「ソフト指し不正事件」が発覚し、将棋連盟から実質ペナルティとされる裁定が下った時、他の棋士が腰が引ける中、真っ先に「1億パーセントクロだな」というストレートな感想をTwitterに投下して、話題になりました。(その後、当該ツイートはすぐに削除されました)

<橋本八段とはこんな人>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

上記動画は、2016年8月に発売された型破りな将将棋バラエティDVD「橋本道場 負けて勝つ!」の公式紹介動画です。このように、昔から棋士活動だけでなく、派手な服装、面白いコメントでテレビ対局を盛り上げたり、普及活動に力を入れるなど、将棋界に対して個性的な貢献をしてきた橋本八段。前々から温めていた内容だったそうですが、ベストなタイミングでの発売となりました。将棋ファンなら必見の内容がつまった本作について、以下、感想を書いてみたいと思います。

将棋ソフト問題に揺れる将棋界

コンピュータや人工知能の目覚ましい発達により、2016年現在、将棋ソフトは事実上プロ棋士よりも強くなってしまいました。特に、中・終盤の複雑な読み合いにおいては、ハッキリと将棋ソフトに分があるとされています。

また、冒頭で書いたように、2016年10月には、プロ棋士が公式棋戦の対戦中、こっそりとスマホ上にインストールした将棋ソフトを使って指し手を検討していた疑惑が持ち上がりました。

将棋ソフトに歯が立たず、プロ棋士同士の対戦でもソフト指しで勝負するような状況では、もはやそれはプロ棋士ではありません。今や、将棋ソフトの問題は、プロ棋士のアイデンティティの根本に根ざす大きな懸念点になっていますし、それは現場にいる棋士たちもひしひしと感じているはずです。

将棋ライター、大川慎太郎氏がトッププロからインタビューで本音を引き出した良書「不屈の棋士」でも、羽生、渡辺以下、ハッキリとプロ棋士達のこれまでにない焦燥感と問題意識が感じられました。

「棋士の一分」は将棋界について正面から批判した本

とはいえ、将棋や将棋界への人工知能やソフトウェアの関与・浸透については、棋士によって温度差があるのも確かです。多くはないですが、むしろソフトウェア全盛時代を積極的に受け入れよう、という若手棋士も散見されます。

そんな中、著者の橋本八段は、「将棋ソフト」にあからさまに嫌悪感を抱く、ソフト否定派の急先鋒の一人です。本書の中では、「将棋ソフト」の公式棋戦への導入を将棋連盟の明らかな失策とし、人間同士の個性がぶつかりあう戦いの中にこそ、将棋の面白さがあると繰り返し強調しています。

その批判のトーンは、最初から最後までキレキレでした。冒頭で、三浦弘行9段のソフト不正事件について、将棋連盟の公式見解より踏み込んだ意見と判断を提示すると、中盤以降は将棋界の旧態依然としたぬるま湯体質と改革の遅れに鋭く切り込んでいきます。そして、時折著者自身のバラエティに富んだ幼少時代やプライベートにも言及されています。

「棋士の一分」の何が衝撃的だったのか?

将棋界についての批判や提言は、ネット上の専門ブログや2ちゃんねるの「将棋」板をザザーッと見ていけば、ある程度質の高いものを拾い出すことは可能です。

ただし、将棋のような徒弟制の残る伝統芸能の世界では、業界内部での発言権は「実力」に正比例するものです。得てして将棋の実力がない素人が、外野でいくら本質に踏み込んだ正論を語っても、その中枢に意見が届くことは少ないのです。あくまで、将棋界の中で才能・実績があるプロ棋士の実力者が問題を認識し、意見を出さないことには改革は始まらないのです。

そういう意味で、業界でも一度は順位戦で「Aクラス」棋士の仲間入りをしたエリート棋士でもある橋本八段が、これだけ歯に衣着せぬ過激なオピニオンを放ったことは、非常に画期的だったと思います。

この本の凄さ①故・米長邦雄永世棋聖を名指しで批判!

まず、驚いたのは、前将棋連盟会長だった故・米長邦雄氏を2012年に将棋ソフトと公式戦で対局して負けた一戦を、「連盟会長という地位を利用して私欲のためにソフト棋戦で棋士の価値を下げた」と名指しで批判していることです。少し長いですが、引用してみます。

将棋連盟が、俗にいう対局禁止令を出したのは〇五年十月のことだ。[・・・]もしプロ棋士がコンピュータに敗れるようなことがあれば、大きなイメージダウンになるので、それを避けたい、というのが表面的な理由だった。そうであれば、その感覚は真っ当なものだといえるが、ならば、なぜその後に対局禁止令は米長会長の独断で解除されたのか?この後の経過を見ればわかるように、コンピュータ将棋との無断対局を禁じることによって、「棋士対コンピュータ将棋」を自分の意のままに扱えるようにしたいというところに米長会長の真意があったのだろう。[・・・]米長会長は、棋士とコンピュータ将棋の対局を禁じておいたうえで、自分が出ていく舞台をこしらえ、とても「格安」などとはいえない対局料を得た。

ちなみに、この時の対局料は1000万円だったそうです。確かに、引退棋士がほんの数時間指して1000万円もらえるのなら、こういう図式もありえなくはないと思わされます。

しかし、いくら鬼籍に入ってしまい、(言い方は悪いですが)”死人に口なし”とは言え、将棋界だけでなく政財界、文化界で幅広い人脈を持っていた昭和の元勲みたいな巨匠を、「私利私欲のために将棋界をダメにした」とバッサリ斬るのは凄い!

僕も、もし会社で部長が米長氏みたいな人だったらハッキリ嫌ですが(笑)、それにしても凄い切り方でした。もちろん、米長氏を一方的に批判するだけでなく、別の箇所には氏の残した功績もきちんと評価されています。単に感情的に「嫌だ」というだけでなく、冷静に分析されていることがわかります。

さらに、現将棋連盟会長の谷川9段や、名指しではないですが「チャイルド・ブランド」と言われた羽生世代の40~50代を「何も声を上げてくれない」と恐れずにビシビシ批判していること。そんなに言って大丈夫?というほど、将棋界内部への鋭い批判が非常に印象的でした。

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この本の凄さ②将棋界の内情をより克明に知ることができる

橋本八段は、10歳の時に奨励会(=プロになる前の研修段階)から含めると、将棋界の中枢で20年以上どっぷりと過ごしてきた人です。

しかも、我々外部からは全く知り得ない将棋プロの中の出来事や内情もリアルに描き出されており、将棋ファンとしては非常に興味深く読むことができました。

たとえば、こんな感じ。ゆるく緊張感のない棋士生活があぶり出されます。

そこで私は多くの若い棋士と同じように練習対局や研究をしようと考え、将棋会館に行く日を増やした。そうすると、控室で昼寝をしていたり、碁を打っていたりする年配の棋士の姿が必ずある。もちろん、練習対局をしている人たちもいたが、暇つぶしのように将棋会館に来ている棋士も少なくないのを知った。

まぁ、会社に来てもやることがなくて暇でネットばかり見ている窓際のサラリーマンとあまり変わらないゆるい棋士もいるということですね・・・。

この本の凄さ③内部も外部もよく知っている著者のバランス感覚

得てして将棋村の内部で「俺は将棋だけやっていればいい」と自己完結する棋士が多い中、バイトや将棋バーの経営、普及活動、マスコミへのサービスなど、積極的に外の世界も見てきた人でもあります。

アルバイトや将棋バーの運営では、マネジメントや経済活動の仕組みを独力で学び、普及活動やマスコミへの積極的な露出で、「外側」から見た将棋界についてのリアルな感触を掴んでいった橋本八段。

将棋界の中枢に長年籍を置きながら、外部の視点も持ち合わせたそんな橋本八段の指摘は、痛烈ではありますが、非常に的を射た正論でもありました。

スマホ不正疑惑についての見解

そして、本書を手に取った将棋ファンの大半は、三浦弘行九段の対局中でのスマホを使ったソフトでのカンニング行為に対する橋本八段の一歩踏み込んだ見解を聞きたいと考えているはずです。

橋本八段も、執筆中に起きたこのタイムリーな事件について、きちんと言及しています。本書の中でも、削除したツイートのように「1億パーセントクロである」とまでは書かれていませんが、

ひと言でいえば、クロ判定である。(連盟が)このような発表をした以上は、確たる証拠をつかんでいるに違いないと考え、私はそう認識したのである。 

また、

一流棋士は対戦相手のちょっとした動揺も見逃さない。おそらく当事者からすれば「疑惑」ではなく「確信」に近いものがあったのだろう。

このあたりから、やはり三浦9段の対局中のソフトウェアでのカンニングについては「クロ」なのではないかと強く示唆されています。

印象深かった将棋界への鋭い提言

センセーショナルに批判をするだけでなく、現状への改革案として、非常にユニークで独創的なアイデアがいくつも提示されているのも、本書の見どころです。幾つかピックアップしてみましょう。たとえば・・・

・ファン選抜によるオールスター棋戦をクラウドファンディングで立ち上げる。
・棋戦で勝てなくなった棋士には、普及を担うレッスンプロとして連盟が支援する。
・HP運営や公式アプリなど、IT分野では外部からスペシャリストを起用する。
といったところ。

これだけのアイデアがあるのであれば、前回次点だった理事選を一度であきらめるのではなく、もう一度チャレンジしてもいいんじゃないかとは思います。

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惜しかった点

ただ、この本で1点だけ惜しいなと思ったことがあります。それは、橋本八段の「将棋ソフト」への一貫した否定的なスタンスです。「将棋ソフト」は、プロ棋士にとって不要なものであり、その影響力を極力排除するためにどうすればいいのか?という観点のみで改革案がまとめられていたことは、やや残念な気がします。

すでに叡王戦というソフト対人間の公式戦が継続していますし、今後もコンピュータや人工知能の発達はさらに加速するならば、将棋ソフトの存在は今更無視できるものではありません。本当の意味での改革案を検討するなら、「将棋ソフト」の存在を無理やり「悪」と決めつけず、受け入れるべき所与の物と考えた方が建設的です。その上でプロ棋士は今後どのようにあるべきか、そしてどう将棋界が変わっていくべきかを考えたほうが、より生産的なのではないかなとは思います。

まとめ

今の将棋界は、僕のような部外者から見ても、なんとなくヤバさがすぐにわかります。ホームページは相変わらずショボいし、東京・大阪ともに将棋会館のボロさを見ると、斜陽産業であることは一目瞭然です。

2012年以降、たまたまマンガ・アニメ・映画など、将棋好きのクリエイターに支えられ、表面的には何となく盛り上がっているような感じですが、その中枢部では、プロ棋士のアイデンティティが根底から揺らぎつつあり、プロ棋士の生活を支えるプロ棋戦の消滅リスクが高まっています。

ソフト全盛時代が迫り、将棋がこのまま世界のガラパゴス的パズルゲームとしてひっそり衰退していくのか、日本の独自文化としてファンを増やし、世界にアピールしていけるかは、橋本八段が言うとおり、いま改革するしかないのでしょう。

サービス精神旺盛ですが、棋士としてのこだわりやプライドも高く、自分にも他人にも厳しい橋本8段。色々心労をためてうつ症状にもなったと本書内にも書かれていました。そんな橋本8段が身を削って書いた、半分暴露本的な要素も含んだ内部からのストレートな批判が、ファンを巻き込んで将棋界の改革機運を高めてくれることに是非期待したいところです。

将棋ファン、ウォッチャーなら、必読の問題書でした。おすすめです。

それではまた。
かるび

そして、将棋ソフトとプロ棋士の関係や、現状の将棋界の問題点を、11人のプロ棋士にインタビュー形式で切り込んだ本がこちら。これも非常に読み応えのある衝撃の問題作でした。未読なら、面白いので是非おすすめします。


【ネタバレ有】映画「ローグ・ワン」の感想と詳しいあらすじ解説!/ファン納得の最強スピンオフ!

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【2016年12月17日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

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スター・ウォーズのスピンオフシリーズ第1弾「ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー」を見てきました。12月16日24時スタートの最速上映に行ってきましたので、以下、感想や考察、僕なりの評価を書いてみたいと思います。
※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報と公式動画

<ローグワンの公式動画はこちら>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】ギャレス・エドワーズ(「ゴジラ」
【脚本】クリス・ワイツ
【企画】キャスリーン・ケネディ

子供の頃からスター・ウォーズシリーズにはまり、聖地巡礼もするほどの大ファンだというギャレス・エドワーズ監督。厳しいオールドファンの目線も意識しつつも、大胆にチャレンジしていきたいと語っていた意気込み通り、素晴らしい作品となりました。

また、今作ではいくつか公式予告動画がありますが、上記の「希望編」を基本として、もう一つオススメしたいのが、下記の「ダース・ベイダー編」。ファン待望のダース・ベイダーをたっぷり見れますよ。

<ダース・ベイダー編公式動画はこちら>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

2.主要登場人物とキャスト

反乱軍の主役級7名については、非常にキャラの立った魅力的な人物が多いのですが、物語のテンポが早く、映像の情報密度が高いので、できれば事前に主要キャラクターの名前と顔を頭にいれてから映画館に行くことをお勧めします!

ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)
物語の主役。幼少時、目の前で母親が殺され、父親が帝国軍に拉致される。一匹狼で生きてきたが、本物の人間関係に飢えており、やがて反乱軍の仲間と結束していく。
キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)
反乱軍の優秀な暗殺者であり、数々の修羅場を相棒、K-2SOとくぐり抜けてきたベテランファイター。
オーソン・クレニック(ベン・メンデルソーン)
帝国軍の野心あふれる高級将校で、本作のNo.1悪役。デス・スター計画の責任者を務める。
チアルート・イムウェ(ドニー・イェン)
棒術・ボウガンの達人でジェダイのような高い戦闘能力を誇る盲目の戦士。フォース
信奉者であり、伝道者的な役割も持つ。
ベイズ・マルバス(チャン・ウェン)
マシンガンの達人で、チアルートのソウルメイト的存在で、時に盲目のチアルートの目となり常に行動を共にする。
ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)
クローン・ウォーズ時代から過激なテロやゲリラ戦を得意とした反乱軍の首領。反乱軍本部との関係は良好ではないが、ジンとは過去にゆかりが深い。今作では、帝国軍のデススター計画についての情報収集を自発的に担当する。
K-2SO(アラン・テュディック)
キャシアンが帝国軍からダッシュし、彼の相棒となったドロイド。再プログラミング時の不具合(?)で口が悪い。
ボーディー・ルック(リズ・アーメッド)
帝国軍に所属する貨物パイロットだったが、故郷ジェダが帝国軍に蹂躙されるのを目の当たりにして、正義感から反乱軍の元へ駆けつける。 
ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)
主人公、ジン・アーソの父親にして、天才科学者。帝国軍に半ば拉致される恰好でデス・スター計画の遂行を強要される。 
ダース・ベイダー(ジェームズ・アール・ジョーンズ)
スター・ウォーズEP4~EP6の悪役。本作は「EP4の起きる10分前」までを描くため、必然的にかなりの出番があります。 
モン・モスマ(ジェネヴィーヴ・オーライリー)
反乱軍の指導リーダー。帝国軍に押される一方で混乱しがちな反乱軍本部の取りまとめに苦慮している。EP3でも予定されていたが、出演シーンがカットされた逸話がある。

↓↓↓↓↓これよりネタバレ部分ご注意↓↓↓↓↓
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3.結末までの簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

科学者ゲイレン・アーソは、妻のライラ・アーソ、一人娘のジン・アーソと惑星ラ・ムーで静かな暮らしを送っていた。しかし、ある日帝国軍のオーソン・クレニック長官がシャトルでゲイレンを連れ出しにやってきた。

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開発が停滞していたデス・スター計画を進捗させるため、ゲイレンの頭脳を必要としたからだ。抵抗するも、ライラは殺され、ゲイレンは結局帝国軍に拉致されてしまう。

ゲイレンとライラは、ジンをシェルターに逃がし、反乱軍の過激派、ソウ・ゲレラが救出に来るまで、母から形見にもらったペンダントを離さず、じっと身を潜めていた。

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数年後、ジンは、帝国側当局とのいざこざにより、惑星ウォバニの強制労働収容所の雑居房の中にいた。そこへ、反乱軍下士官のメルシが救出に来た。独房から出たジンはそのまま逃亡を図るが、同じく同行してきたキャシアン・アンドーのドロイドK-2SOに捕まり、そのまま反乱軍の本拠地、セヴィン4へ連行された。

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反乱軍の情報将校、キャシアン・アンドー達が掴んだ帝国軍が秘密裏に進める最新の最強兵器「デス・スター計画」の存在を元老院に提出し、明るみに出そうと計画していた反乱軍。その情報の鍵をにぎるのが、ジンを以前救助したソウ・ゲレラとその一派だた。

しかし、反乱軍内も一枚岩ではなく、反乱軍本部のモン・モスマ達とソウ・ゲレラの関係は良好とは言えず、スムーズな情報交換すらできず混乱する一方だった。そこで、モン・モスマは、デス・スター計画の首謀者とされるゲイレン・アーソを探し出し、デス・スター計画の秘密をさぐりつつ、ソウ・ゲレラとの関係修復を目指すミッションを、ジンとキャシアン・アンドーに与えた。

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ジンたちは、ソウ・ゲレラと反乱軍の過激分子の本拠地となっている砂漠の星、惑星ジェダを訪れた。すでに反乱軍に惑星の中心部を占領されており、隠密行動を取る一行だったが、ストーム・トルーパーたちと交戦状態に陥るジン一行。

劣勢なジン達を救ったのが、惑星ジェダで「フォース」を信奉する集団、ウィルズの守護者である、格闘技の達人チアルート・イムウェとその親友で射撃の達人ベイズ・マルバスだった。

やがて、ゲリラの隠れ家にてソウ・ゲレラと再開するジン。16歳の時、戦闘で生き別れになって以来だった。ソウは、別室でジンに秘蔵のホログラムイメージを見せる。それは、元帝国軍兵士で、貨物船の操舵手であるボーディが帝国の秘密研究所へカイバー・クリスタルを移送中にゲイレンと知り合い、ゲイレンから入手したものだった。デス・スター計画の全容を知ったボーディは、自らの良心に従い、ゲイレンのメッセージを携え、ソウ率いる反乱軍に加入したのだった。

ホログラムイメージでは、ゲイレンが帝国軍内部でデススター計画の中枢部に携わり、リアクターモジュールに弱点となるワナを仕掛けたこと、その弱点を叩けば、連鎖反応でデススターの破壊が可能であること、設計図は帝国軍の中枢惑星、スカリフのシタデルタワー内にあることがゲイレンの肉声で語られていた。

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一方、帝国軍では、デススター計画についての情報漏えいを懸念したターキン提督が、クレニックにデス・スターのテストを急がせていた。惑星ジェダの聖都へ放たれたレーザー砲により、爆発に飲み込まれるジェダ。年老いたソウは逃げることを拒否し、ジンたちはかろうじてハイパースペースへの脱出に成功するのだった。

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ジン達は、ゲイレン・アーソとコンタクトするため惑星イードゥへの潜入を試みる。豪雨の中、なんとか秘密研究所に近づいたジン達だったが、ゲイレンを暗殺しようと企図した反乱軍情報部との連携ミスにより、反乱軍はジン達の至近距離から施設を空爆し、現場は大混乱に。父、ゲイレンの死に目には何とか会えたジンだったが、父は死に、作戦は悲劇的な結末となった。現地で奪った帝国軍のシャトルで帰還するジン達。

反乱軍本部に帰ったジンは、圧倒的な戦力差から降伏を検討し、動こうとしない反乱軍の中枢部にしびれを切らし、無許可でチームを立ち上げ、惑星スカリフの保管庫に眠るデススターの設計図を盗み出す作戦を開始した。

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数十名の有志が集まり、いよいよ出撃となった。出撃時、管制塔からコールサインを求められ、キャシアンが「ローグワン」と咄嗟に答えた。精鋭部隊「ローグワン」が誕生した瞬間だった。

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帝国軍の輸送船で偽装し、惑星スカリフのシールド・ゲートを何とか突破し、シタデルタワーの近くのドックに着陸に成功したジン達は、シタデル・タワーに潜入するジン・キャシアン・K-2SOと外で援護するチアルート達のふた手に別れて作戦を開始する。

一方で、ジン達が惑星スカリフへの潜入に成功したことを察知した反乱軍中枢部は、増援部隊をスカリフへ送り込み、上空からの援護を試みる。地上では白兵戦、空中ではドッグファイト、そして惑星上空のシールド・ゲート上での宇宙戦と大規模な戦闘が始まった。

K-2SOが同型のドロイドから入手した施設内地図でシタデル・タワーに潜入したジン達は、情報格納庫へ潜入する。

一方、入手したデータの転送のためには、敵の通信タワーの制御を奪うマスタースイッチをオンにし、電波を遮るスカリフ上空のシールドゲートを破壊する必要があった。

地上部隊では、ボーディー、チアルート、ベイズが命を犠牲にして、有線ケーブルをつなぎ、マスタースイッチをオンにすることに成功。

また、上級では援護に来た反乱軍が、バトルシップごと、至近距離にいた二隻の帝国軍のバトルシップ、スター・デストロイヤーの片方の横腹に体当りする捨て身の攻撃を行い、スター・デストロイヤー同士を衝突させた。大破したスターデストロイヤーは、シールドゲートへ垂直に落下し、シールドゲートも解除することに成功した。

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シタデルタワー内でデススターの設計図を見つけ出したジンは、タワー上部の電波塔へ登り、データの転送をしようとする。そこへ、急遽駆けつけてきたクレニックがジンを殺そうとするが、撃たれる寸前に、キャシアンがクレニックを襲い、ジンはデータの転送に成功した。

スカリフでの戦況を見ていた帝国軍のターキン提督は、デススターで惑星スカリフを破壊するように命令を出す。スカリフの目の前に現われるデス・スター。そして、スカリフへとレーザー砲へが発射された。地上に降りたジンとキャシアンは、迫りくる巨大な火柱を前に、静かに抱き合って最期を迎えるのだった。

こうして、設計図データは反乱軍の手に渡ったが、これを取り返そうとダース・ベイダーが反乱軍の船を単騎急襲する。ライトセイバーで船内の兵士を一方的に殺戮するが、データは、ダース・ベイダーの手に落ちる前に、レイア姫に託される。レイア姫は、別の脱出戦に乗り込み、惑星オルデラーンへと向かうのだった。

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4.感想や評価(※強いネタバレ有注意)

4-1.多大な犠牲を払い、針の穴ほどの小さな希望を勝ち取った名も無き人たちの活躍譚

今作は「スター・ウォーズ」正史の中では埋もれた、反乱軍の名も無き勇者たちを扱ったストーリーでした。EP4「新たな希望」では、圧倒的な帝国軍の前に、特別な血筋や能力を持った主人公たちが「フォース」の力で活躍しましたが、今作では、登場人物全員が普通の人(それかちょい強いくらい)。

一般人である彼らが強さの原動力としたのは、自己犠牲となって仲間を思いやる心と「希望」だった、というのが非常に印象的でした。

ジェダイなのか?と色々匂わせた最大の戦闘能力を誇ったチアルートでさえ、結局フォースの使い手でもなくジェダイでもなかったことや、ジン・アーソが愛する父親から呼ばれていた愛称が、「スター・ダスト(ほしくず)」だったことも、本作の登場人物の人物像を象徴していたと思います。

ある程度大ヒットが予想されるお化けシリーズ「スター・ウォーズ」だからこそ思い切って冒険できた「名も無き人々」の奮闘・頑張りに焦点を当てた優れたテーマ性が素晴らしかったです。

4-2.主要キャスト「全員死亡」の衝撃

そして、「ローグワン」チームの主要キャストがまさかの全員死亡、損耗率100%でだったのは非常に驚きました。戦争映画でも、ここまで全員が亡くなることは滅多にないからです。また、物語のキーマンである父ゲイレン・アーソ、育ての父ソウ・ゲレラも非業の死を遂げます。さらには、ラスト10分でダースベイダーにメチャクチャに殺戮されるなど、まさに1枚の設計図を奪還するために、多大な損害を出したミッションでした。

ジンとキャシアンが、亡くなる前に見つめた、地平線に映る巨大な夕日のようなレーザー砲の業火が非常に儚く悲しげだったのは、EP4で故郷タトゥイーンを旅立つ前にルークが「希望」にあふれて見つめた2つの太陽とあまりに対照的で泣けました・・・。

4-3.反乱軍の強さともろさの両方が表現された作品

今作では、反乱軍の母体となった共和制の強さと弱さの両面がハッキリ描かれたのが印象的でした。物語中盤までは、モン・モスマとソウ・ゲレラは同じ仲間なのに団結できていませんし、イードゥ攻略戦では、反乱軍本部内でも思惑の違いから作戦が失敗しました。

その反面、終盤ではジンと有志たちが勝手に起こした決死の作戦行動が反乱軍の内部に共感を呼び、皆を奮い立たせました。目立った司令塔も不在なのに、有機的に協調して行動し、潜入ミッション、地上戦、空中戦、宇宙戦と見事な連携でやり遂げてしまう不思議な強さ、勢いは、ボトムアップで成り立つ共和制の強みを象徴していました。

ポイントは、やはり「希望」を持って仲間のために心を一つにできるかどうかだったのかなと思いました。強い熱意と目的意識でリーダーシップを発揮する人物に人は惹きつけられ、一人ではなし得ない難易度の高い奇跡的なミッションすら可能になるという好例を見ているようでした。

4-4.オールドファンを唸らせる「EP4」との世界観の整合性

今作では、戦闘機や戦闘服、ドロイド達のデザインなど、細部に至るまで「10分後」に接続するEP4とほとんど同じ雰囲気で製作されており、古くからのファンも大納得でした。僕も、ローグワンを見て、帰宅後すぐにEP4を見ましたが、40年間製作期間が離れた作品なのに、全く違和感がありませんでした。さらに、EP4で活躍するR2-D2やC3POなどのカメオ出演(出撃するローグワンチームを見送るシーン)もマニアは嬉しい所。

4-5.「不気味の谷」を超えた?オールCGで再現された重要キャラクターが良かった

今作で重要な役割を担った帝国軍No.2のターキン提督は、エピソード4で演じたピーター・カッシング(1994年没)に似せたフルCGで描かれました。かなりの場面で登場しましたが、「あ、CGかも?」とわかるレベルではありましたが、かなりの完成度だったように思います。

また、最期のレイア姫のCGも、見た感じちょっと違和感がありました。あの場面はあんなに快活な笑顔じゃおかしいような・・・。でも「不気味の谷」は超えていたと思います。レイアの生き生きとしたカメオ出演は、「フォースの覚醒」最終盤で次回予告的に出てきた老け込んだ冴えないルーク(実写)とは対照的で良かった・・・

4-6.ラスト10分で暴れまわるお楽しみのダース・ベイダー!

ファンの期待通り、120分以上我慢させての満を持しての登場は、しびれました。しかも、ジェダイが全滅し誰も「フォース」を使えないこの時代に、ライトセイバーの使い手は(隠遁したジェダイ2名を除くと)ダース・ベイダーだけなのです。スター・ウォーズシリーズの象徴でもあるライトセイバーを無駄遣いせず、物語の最終場面までとっておいてから、思う存分にダースベイダーに振り回させたシーンは、ファンが待ちわびた「一番見ておきたかった」シーンだと思います。

普通の映画なら、完全に「蛇足」な演出なのですが、スター・ウォーズシリーズではこういったファンサービスが評価を非常に高めるのですよね。ギャレス監督やるな!とうなりました。

4-7.アジア人キャラ、特にチアルート(ドニー・イェン)の存在感の強さに驚いた

今作でのチアルート・イムウェを演じるドニー・イェン、そしてベイズ・マルバスを演じるチアン・ウェンは、中国を代表する映画俳優ですが、この二人の存在感が素晴らしかったです。

中国や日本などアジアマーケットを狙っての戦略と理解しましたが、元々スター・ウォーズシリーズには、場面遷移のワイプが黒澤明映画そっくりだったり、EP4でルークが着ていた衣装が柔道着みたいだったり、作品中に東洋的な香りが感じられるので、東洋系の人物像がフィットしやすいのだと思います。終演後、初動の感想ツイートでも圧倒的にドニー・イェンの無双ぶりを称える内容が多かったです。 

5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意、随時追加)

5-1.デス・スターとは?どうやって作られたのか?

帝国軍が20年以上のリサーチ、テストを経て建設した惑星状のバトルステーションで、「デス・スター」はコードネームです。計画自体はEP2/EP3で出てくるドゥークー伯爵が構想し、ドゥークーの死後、パルパティーン(=皇帝)が引き継ぎ、ターキン提督とクレニックの指揮の下、元老院には秘密裏にプロジェクトが進められました。

最大の武器は、惑星を破壊できるほどの殺傷力を持つ、カイバークリスタルで増幅されたレーザー砲ですが、リアクター(反応炉)に隠された弱点があります。

5-2.K-2SO(けーつーえすおー)とは?

ドロイドメーカー「アラキッド・インダストリー社」により銀河帝国向けに製作された警備用ドロイド。コミカルな動き、個性的な言動は人気ドロイドとしてR2-D2やC3POたちのように愛される存在になりそう。

こちらに動画も張っておきますね。

<K-2SOの公式動画はこちら>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

5-3.「ローグ・ワン」に込められたタイトルの意味とは?

英語で「ROGUE」=ならず者・外れた者という意味があり、色々な意味が込められているとされています。映画中では、部隊のコールサイン=部隊名として即席で「ローグワン」と名付けられていましたが、EP5で実際に「ローグ中隊」というチームがありましたね。

ジン自体が独り者として長く活動してきたこと、ジンの即席部隊が反乱軍の中でもはぐれ者的な存在であったこと、反乱軍自体が帝国軍に対してならず者的な存在であることなど何重の意味が込められています。

さらには映画「スター・ウォーズシリーズ」のラインナップにあって、サイドストーリーである本作は「外れた」位置づけの「最初の」作品であることからも、「ローグ・ワン」と名づけられたのでしょう。上手いネーミングセンスです。

5-4.「カイバー・クリスタル」とは?

デス・スター建造に不可欠なエネルギー源であり、フォースを力に変えて戦うライトセイバーを製作する原材料です。映画冒頭で、ジンが母親、ライラからもらったペンダントもカイバー・クリスタル製でしたね。

 デス・スター内の超物質反応炉から供給されるエネルギーを増幅し、レーザーへと変換するために不可欠なクリスタルで、帝国軍内の研究所で、ゲイレン・アーソはこのエネルギー変換プロセス「カイバー・クリスタル・フォーミュラ」の研究に従事していました。

5-5.ソウ・ゲレラとジンの関係は?

映画冒頭でシェルター内に隠れていたジンを救い出したのが反乱軍の中でも過激な一派に属するソウ・ゲレラでした。以来、ソウは育ての父のような立ち位置でジンを大切に育てますが、ジンが16歳の時、戦闘中に生き別れてしまいます。ジンは「見捨てられた」と認識しており、再開するまでソウに対して複雑な気持ちを抱いていました。

5-6.シリーズ本編の主要キャラの出演状況まとめ

「フォースの覚醒」の時もそうでしたが、スター・ウォーズファンとして、本編の主要キャラがチョイ役のカメオ出演していると嬉しいもの。今作で出てきた旧作キャラは、以下の通りです。

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ハン・ソロは、ハリソン・フォードが出演を望まなかった為、実現しなかったと言われています。2018年度公開のサイドストーリー第2弾で若き日のハン・ソロとして抜擢されたオールデン・エアエンライクでいいので、チラ見せしてほしかったような。

また、ヨーダとオビ=ワンの出演が見送られたのは、EP3~EP4の間の時代では、「フォース」の存在やジェダイは遠い過去のものになっている状況なので、出演させにくいという状況がありました。

ただし、反乱軍内の会話で、オビ=ワンについて匂わす発言があったことと、オビ=ワンのシルエットのような惑星ジェダの怪しげな地形は、マニアとしては嬉しい限りでしょう。
惑星ジェダのオビ=ワンのような地形!f:id:hisatsugu79:20161217103548p:plain
(引用:Twitterより)

5-6.続編は予定されているのか?

ローグワンの続編やさらなるスピンオフは残念ながら、特になさそうです。主要登場人物が全員死亡するわけですし・・・。その代わり、ローグワンの前日譚として、ゲイレン・アーソに纏わるストーリーを描いたスピンオフ小説「Catalyst」(邦訳未定)がアメリカで発売されています。英語に自信がある方は是非読んでみて下さい!

また、今後のスター・ウォーズシリーズは、本編エピソードシリーズとスピンオフが毎年交互に発表される予定です。タイムテーブルとしては、

2017年12月:スター・ウォーズ/エビソード8「タイトル未定」
2018年12月:スター・ウォーズストーリー第2弾

となっており、2018年12月公開のスピンオフ第2弾では、若き日のハン・ソロの活躍譚を描いたサイドストーリーが制作されます。今から楽しみですね。

6.まとめ

 これまで7作品発表されているスター・ウォーズシリーズですが、満足度としては歴代No.1に近いほど、非常に満足度が高い作品でした。スター・ウォーズシリーズのエッセンスをしっかり受け継ぎつつ、外伝として「フォース」に頼らない独自のコンテンツを描ききった力作。オールドファンにも、ここから入るはじめての人にも楽しめる素晴らしい娯楽作品です。ぼくも、あと何回か見直しに劇場に行きたいと思います。

それではまた。
かるび

7.映画「ローグワン」をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

7-1.U-NEXTに加入して無料期間中ので冬休みにまとめて安くチェック!

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(引用:U-NEXTスター・ウォーズ特集ページより)

今作を見て気に入った方は、是非エピソード1~エピソード7まで一気に是非チェックしてみて下さい!僕も、今作を見る前に、エピソード1からエピソード7までブルーレイで全作品揃えたのですが、軽く1万円を超えて、かなりの出費となりました。あとで気づいたのですが、U-NEXTで全作品がかなり安く配信されているのですよね。

加入して最初の1ヶ月は無料期間ですし、特典として月に600円分(2ヶ月目から1000円分)のクーポンまでついてくるから、年末年始にお試しとしてU-NEXTに加入して、一気にチェックしてしまうのをオススメします!DVDを買うより7割~8割安く見れます!

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7-2.「ローグ・ワン」のまとめ本決定版!「PRIMER BOOK」

7-3.「ローグ・ワン」公式アートブック

 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』公式アートブックです。5000円台と値段はかなりしますが、制作スタッフの独占インタビューや、アートワークの数々、武器やドロイド、スペースシップなどのデザインや、登場人物についての掘り下げた解説など、ローグワンの全てが詰まった1冊。日米同時発売です!

7-4.Amazon「スター・ウォーズ特設コーナー」

僕は、初日に映画館でグッズをゆったり買おうと思ったのですが、終演後長蛇の列に並ばされました。深夜26時30分なのにこの仕打ち(笑)並ぶのが苦手な僕は、早々にパンフレットだけ手に入れてグッズ販売は諦めて帰宅しました、、、。

午前26時30分、まさかのグッズ大渋滞!f:id:hisatsugu79:20161217011906j:plain

映画館では、かなりグッズコーナーが混み合ったり、売り切れたりすることが多いですが、Amazonで専門のコーナーが出来ていますので、ここでゆっくり購入できますよ。

僕も、ここで2017年用のカレンダーを購入しました!Amazonの特設コーナー、便利ですよね!

Amazonでゆっくりお買い物!
Amazon「スター・ウォーズ特設コーナー」

【ネタバレ有】映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の感想とストーリーの解説!/2周目からがさらに切ない名作ライト文芸の映画化!

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【2016年12月18日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

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12月17日公開となった映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(略称「ぼく明日」)を見てきました。2015年の大ベストセラーで、ライト文芸の代表的作品となった七月隆文の原作に沿って忠実に映画化されました。1年前、偶然に帰省中の新幹線のキヨスクで購入して、シンプルながら非常に心動かされた作品。今回の映画化を非常に楽しみにしていました。

「僕は明日、昨日の君とデートする」、早速初日に気合を入れて見てきましたので、以下感想を書いてみたいと思います。
※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

<”ぼく明日”の予告編動画はこちら>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】三木孝浩(「アオハライド」「青空エール」)
【原作】七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする
【主題歌】back number「ハッピーエンド

若者の恋愛映画では手堅く興収実績を残してきた三木孝浩監督を起用。主題歌も、back numberのおしゃれで切ないラブソングを起用し、雰囲気を盛り上げています。 

2.主要登場人物とキャスト

”ぼく明日”は原作を含め、主人公の二人にフォーカスして描ききった作品です。他作品に比べ、主人公の男女二人以外では、驚くほど重要な登場人物が少ないのが特徴です。キャストは、いわゆる恋愛スイーツ系映画ではいつもの常連となったメンバーで固めてられています。

南山高寿(福士蒼汰)
これまでは無理やり?高校生を演じることも多かったですが、今回は年相応な大学生役。この手の恋愛映画には欠かせない旬の俳優です。
福寿愛美(小松菜奈)
ロングランヒット中の「溺れるナイフ」に続いてのヒロイン役。舌足らずで清楚な感じの雰囲気は原作どおりのイメージでした。
上村正一(東出昌大)
美大での高寿の親友。・・・というにはやや年を取りすぎているような気もしますが、まぁ青臭い感じは良かったです。原作よりもかなり出演場面が多かったので、東出ファンには朗報かも。

3.映画の見どころ(ネタバレ無し)

3-1.30日間しか会うことのできない男女の限られた切ない出会い

あるシンプルな「SF的設定」のせいで、5年に一度、「30日間」しか会うことができないという制約つきの状況下、二人の時間の濃密な特別感をしっかり味わえる作品。「そんなわけないじゃん」と言わず、物語中盤で明かされる「時間」に関するファンタジー的な設定を「そういうものなんだ」と受け入れて作品に入り込めば、凄く感情移入できて楽しめます。

3-2.冬の京都の街中の日常風景が楽しめる「観光映画」的側面も

ロケは、原作通りほぼ全編を通して冬の京都が舞台です。といっても、有名寺社やベタな観光地ではなく、地元の人たちが日常的にデートで使うような少しおしゃれなスポットを巡ります。

現地では、スタンプラリー的な企画も用意されているようなので、映画が終わったら、気になったスポットに聖地巡礼してみてもいいかもしれません。宝ヶ池、行ったことなかったけどこれを見て行きたくなりました。

3-3.「2周目以降」のほうがより「泣ける」映画

タイムパラドックス的なSFファンタジー物は、2度目以降に違った角度から作品を味わえることが多いですが、本作品も2周目以降、ヒロインの「愛美」の視点で改めて見直すとさらに泣ける映画です。原作を読んだり、ネタバレしてからの2周目以降が、するめのように美味しいストーリーなのです。

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4.結末までの簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

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ある冬の終わりの日。南山高寿は、大学へ向かう叡山電車の中で、文庫本を読む若い女性に雷に打たれたように一目惚れした。しばらくチラチラ見ていたが、宝ヶ池駅で下車する彼女を追って、「メアドを教えてください」と話しかけた。

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彼女の名前は、福寿愛美。お互い自己紹介しあい、二人とも20歳と同い年であることがわかった。しばらく駅のホームで話をしたあと、愛美が「もういかなきゃ」と席を立った。高寿は、「また会えるかな」と聞いたが、愛美は、なぜか泣きながら「また会えるよ」「また明日ね!」と言って、去っていった。

高寿は、京都の北東部にある、木野美大のカートゥーン学部に在籍している。翌日、大学の授業の課題のため、動物園でキリンを描いていたら、後ろから愛美が現れた。驚いた高寿だったが、愛美は高寿の後ろから高寿の描いているキリンの絵を見て「教室に張り出されるやつだ」と予言めいたことを言った。

そのまま、高寿と愛美は宝ヶ池に出かけた。高寿は、5歳の時に宝ヶ池で溺れ、死にかけたことがある。その時、見ず知らずの女性に助け出された思い出を愛美に話すと、愛美も5歳のときに偶然死にかけたことがある、と高寿に話した。

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その後、連絡先を教え合い、自宅に戻ると、ルームメイトで親友の上山正一が待っていた。上山にここまでの経緯を話すと、脈があるからすぐに電話して、デートのアポを取れという上山。強引な上山に押され、その場で愛美に連絡し、翌日も会えることになった。二人して喜ぶ上山と高寿。

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出会って3日目、たっぷりデートコースを下見して三条大橋で待ち合わせると、時間通り愛美は現れた。街歩き、映画、喫茶店、食べ歩きなど、予習した通り一通り楽しみつつ、愛美の意外な一面も見えた一日だった。夜になり、公園のイルミネーションの前で、高寿は正式に「付き合って下さい」と愛美に告白する。愛美は、少し涙ぐんで「よろしくお願いします」と返答した。

次の日、高寿は上山の家を出て一人暮らしをするため引っ越し作業をしていたが、そこへ愛美が遊びに来た。上山に挨拶する愛美。一通り搬入が終わると、上山はそそくさと帰宅した。名字を呼びあうのは「潤いがない」という愛美。その日から、「えみちゃん」「たかとしくん」と下の名で呼びあうことになった。また、何故か涙ぐむ愛美。

愛美は、引っ越しのダンボールの中から、古い小箱を見つける。高寿に聞いたら、高寿が10歳の時、たこ焼き屋で出会った女性から「持っておいて欲しい」と預けられた不思議な小箱だという。カギがかかっており、開けることができないようになっている。

また、別の箱からは高寿が小学校の頃から大切に保管してきたマンガを書いたノートが大量に出てきた。昔から絵を描くことが好きだった高寿に、感銘を受けた愛美だった。

やがて夜になり、駅まで愛美を送るため、駅へ戻る道のりで二人は初めて手をつないだ。また愛美は涙ぐんだ。

こうして、恋人らしくなった二人は、毎日のようにデートをした。ある日、愛美が高寿の家に来て、手料理としてビーフシチューを振る舞うことになった。一口食べて、実家のビーフシチューに味がそっくりだと感心する高寿に、隠し味としてチョコレートを入れたことを告げる高寿。

それを聞いて、少し驚く高寿だった。なぜなら、実家で母親が作るビーフシチューにも、隠し味としてチョコレートを入れているからだ。前にも同じようなことがあった。キリンを描いたクロッキーを見た愛美が「教室に張り出されるやつだ」と予言めいたことをつぶやいたことがあったが、その後本当にその作品が教室に張り出されたからだ。「私が未来のことがわかるっていったらどうする?」と愛美から言われ、少し困惑する高寿。

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付き合って15日目。今日も愛美は高寿の自宅に来た。愛美に散髪してもらう高寿だったが、話しているうちに、「えみちゃん」ではなく「えみ」と自然に呼び捨てにする高寿。これをきっかけに、ふたりは「えみ」「たかとし」と呼び合う恋人同士になったが、その時も愛美は涙ぐんだ。

その夜、いい雰囲気になる二人。満月の夜、二人は初めて結ばれた。終わった後、やはり愛美は泣いていた。愛美の門限である12時が近づいてきたので、いつものように駅まで送り、自宅に帰ると、見たことのない水色の手帳が部屋に残されていた。

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愛美の忘れ物かと思い、中を見てみると、そこには日付の時系列が逆向きに書かれた変な内容のメモ書きがしてあった。意味がわからず呆然としていると、そこに愛美から電話がかかってくる。愛美は、高寿に重大な隠し事をしているので、翌日6時に大学の教室で秘密を打ち明けたいと言う。その際、愛美は例の小箱を持ってきて欲しいと高寿に告げた。

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翌日、訝しげに思いつつ、大学へ行くと愛美はすでに待っていた。愛美が話すには「私は高寿の世界とは時間が逆向きに進むとなりの世界から来た」「5年に1度、30日間だけ会うことができる」とにわかには信じがたいことを言う愛美。つまり、現在は20歳同士の二人が次に会えるのは、高寿が25歳、愛美が15歳の時だということだ。

狐につままれたようでいる高寿に、小箱を開けようと告げる愛美。高寿が錠前のついた小箱を差し出すと、なぜかカギを持っていた愛美。カギを回して開けると、中からは高寿、愛美、高寿の両親の4名で撮影した写真が出てきた。両親に会わせたこともないのになぜーーー?混乱する高寿に、これは、高寿にとっては2週間後、つまり、愛美にとっては2週間前に撮影した写真だと告げる愛美。

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そして、5歳の時に宝ヶ池で溺れた高寿を助け出したのは、35歳の愛美だった。そして、10際の時にたこ焼き屋で小箱を高寿に渡したのも、30歳となった愛美だったのだ。その事実を、愛美は15歳の時に25歳の高寿から聞かされていたのだった。

翌日。出会って19日目、前日に愛美から告げられた二人の関係を上手く消化できない高寿は、それ以来、デートにいっても上の空だった。彼女は、予め決められたことをメモ帳に書かれたシナリオ通り演じているだけで、そこにどんな意味があるのか?メモ帳通りになぜ行動しなきゃいけないのか?

そして、何よりも、高寿は、過去を共有できない恋愛関係に虚しさを感じていた。思い出を共有できないのであれば、なぜ一緒にいるのか?目の前の愛美は、昨日の愛美とは違うのだ。すれ違っているだけの人間関係なんて一緒にいる分つらくなるだけなんじゃないか。

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高寿は、愛美の静止を振り切って、デート中に帰宅してしまった。

その夜、コインランドリーで悶々とし、上山からもアドバイスを受けたが、釈然としない高寿。その時、高寿は初めて、愛美がこれまでよく二人の関係が深まる節目で泣いていたことを思い出した。あれは嬉し涙なのではなく、愛美にとってはどんどん恋人関係ではなくなっていく最後の機会だった。愛美は、寂しさから泣いていたのだ。自分だけでなく愛美もまた辛さを感じていたのだと。

時間はもう1時を回っていたが、愛美にすぐに電話して謝罪した。愛美にとっては「明日」デート中にひどい事を言ってしまうが、許して欲しい。自分はもう辛さを乗り越えたと。

翌日、仲直りした二人。愛美は5歳のとき初めて「となりの世界」から遊びに来た時、お祭りの屋台の爆発に巻き込まれそうになった際、35歳の高寿に命を助けてもらったこと、そして、その時に子供ながら運命の人はこの人だ、と直感したことを高寿に告げた。だから、今のあなたに会いたいからこそ、毎日決められた運命を受け入れることもできるのだと。

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それ以降、二人は残された時間を慈しむように毎日二人だけの時間を楽しんだ。色々なところにいったり、高寿の大学の仲間とのバーベキューも楽しんだ。「僕たちはすれちがってない。端と端を結んだ輪になって、ひとつにつながっているんだ。二人で一つの命なんだ」と高寿が言うと、愛美は、それを、数日後、初めて高寿に会いにくる愛美を勇気づけるために改めて話してあげて欲しい、と高寿に頼んだ。

29日目。この日は、高寿は、枚方の実家に愛美を連れて行った。驚く両親。その晩、両親と愛美、高寿の4人で夕飯をともにしたが、実家の母が振る舞ったのは、隠し味にチョコレートを入れた馴染みのビーフシチューだった。そして、4人で記念写真も撮った。(あとで小箱に入れるため)

30日目。いよいよ高寿にとっては30日目となった。高寿は、大学のアトリエで愛美と会うことにした。高寿にとっては最終日だが、愛美にとっては初日。愛美は、敬語だった。25歳になった高寿から30日間の大まかな内容を事前に聞いていた愛美だったが、改めて記憶が鮮明な今の高寿に、何があったのか聞く愛美だった。

愛美との思い出をたどるうち、楽しく自分が30日間過ごせてきたのは、愛美の懸命な努力と高寿への深い配慮があったからだということに改めて気付かされた高寿。

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そして、いよいよ別れ際。23時57分。最後に、高寿はもう一度数日前に愛美から頼まれた言葉を優しく愛美に語りかけた。「僕たちはすれちがってない。端と端を結んだ輪になって、ひとつにつながっているんだ。二人で一つの命なんだ」

24時ぴったりに、愛美は消えていなくなった。

その後、高寿は25歳になった。15歳の愛美と再開する高寿。高寿は、5年前に渾身の真心を込めて描いた20際の愛美の肖像画を、15歳の愛美にプレゼントした。

(30日目の愛美に視点が変わる)

愛美はこれまでの高寿との楽しかった思い出を振り返っていた。最後の日。まだ高寿が引越しする前の高寿の部屋に立ち寄った愛美。思い出の詰まったドアを見上げ、泣きそうになるのをこらえる。そして、いよいよ電車に乗り込んだ。高寿に見つけてもらうために、メモに書いた最後のシナリオをこなすのだった。

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5.感想や評価(※ネタバレ有注意)

5-1.デートシーンなど二人の表情が自然で良かった

映画は、大半の時間が二人きりのシーンで、しかも顔のアップばかり(もちろん耐えられる素材ではありますが/笑)。撮影中の自然体な雰囲気作りに注力してきたと三木監督が明らかにするように、二人の空気感が非常にカジュアルな素の感じで出ていたのが良かったです。二人きりのデートシーンは、アドリブで演じた箇所も多かったそうですが、原作で表現された世界観に近い映像に仕上がっていました。

メチャクチャ上手だ!ってわけでもなかったですが、恋愛経験が初めて同士の奥手な二人らしさはよくニュアンスとして出ていたと思います。 

5-2.「また会えるよ」と言って別れる切なさ

二人が会える期間は、5年に1回で、MAX30日間。時間が流れる方向が逆方向なので、一方が「別れ」となる節目では、もう一方は「出会い」が始まるわけです。ふたりとも、このあとに、お互いが楽しい時間を過ごせるよう、「また会えるよ」と言葉を残して別れるシーンが非常に切なかったです。

5-3.切ない恋愛を通じて高寿が成長していくストーリーでもあった

お互いに会える30日間で、15日目に二人の関係についての真実を告げられ、一度絶望しかけるも、高寿は立ち直ります。でも、その時点ではまだ「自分」の気持ちの整理ができただけであり、愛美がどういう思いで毎日接してくれているかまでは気が回らなかった高寿。30日目(愛美の初日)に絵を描こうとした時点でも、朝の時点では、その動機は「自分の思い出のため」でした。

しかし、20歳になって高寿と会う初日の愛美に、高寿が過ごしてきた30日間を語る中で、ようやく愛美の「涙の意味」を知り、愛美の深いやさしさを理解できた高寿。喪失感を乗り越え、30日目にして土壇場で相手を純粋に思って行動できるようになった、高寿の内面の成長がきちんと描かれたのは非常に良かったと思います。

5-4.関西弁が一切出てこないのは少し残念な点だった

高寿は少なくとも5歳の時に阪神大震災に遭っており(原作)、そのまま関西在住なら、親友の上山、高寿の両親も含め、全員標準語なのはどうなのか?という気もします。原作小説も標準語なので合わせたのだと思いますが、唯一この点だけが少し個人的には残念な点でした。まぁ、自分が関西出身なのと、同時上映された映画「古都」はバリバリ効かせすぎなくらい関西弁だったので、ちょっと違和感を感じただけなのですが(笑)

6.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意、映画上映終了後にできればお読み下さい)

6-1.木野美大のモデルは?

高寿と親友の丸丸が通う京都市の北東、叡山電鉄沿いにある「木野美大」のモデルは、京都精華大学です。日本で唯一の「マンガ学部」がある芸術系の大学です。京都精華大学の住所番地が「木野」という地名から名づけられたのでしょうか?ちょうど映画公開日は、オープンキャンパス開催中の時期ですし、大学側も「学内聖地巡礼」企画なども実施中のようで、やる気満々ですね。

京都精華大学を舞台にしたラブストーリーが映画化! 「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」 学内&学外 ロケ地スポット巡り – オープンキャンパス2016

また、今回の映画公開に合わせて、同大学の卒業生でもある原作者の七月隆文氏が、大学時代の思い出を語っています。大学側もなかなか上手にプロモーションしますね!

<京都精華大学とのタイアップ動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

6-2.愛美が住む「となりの世界」とは何か?また、愛美はなぜメールや携帯を使わないのか?

「となりの世界」の住人である愛美は、高寿の世界とは逆方向に時間が進む世界に住んでいます。原作小説で明らかにされていますが、2つの世界の出入り口である「宝ヶ池」を通して5年に1回、愛美の方から高寿の世界に30日間(原作は40日間)だけ来ることができます。(高寿側からは行けない、一方通行)その際、世界の矛盾を防ぐため、メールや携帯は当局から禁止されているのです。

6-3.愛美が涙もろいのは性格ではなく、これが「最後」の機会と知っているから

初めて会った時、初めてデートした時、初めて結ばれた時、色々な機会ですぐに愛美は泣いてしまいます。これは愛美が泣き上戸なのではなく、あらかじめ起こるシナリオを全て把握している愛美にとっては、20歳の高寿との様々な節目節目の出来事が人生で「最後」の出来事だとわかっているからです。映画でも、愛美と喧嘩別れしたその夜、愛美のことを思い出している時に自力で気づいていましたね。切なすぎます。

6-4.高寿の父親と高寿の関係がギクシャクしていたのはなぜ?

原作小説では「父親とはいつも喧嘩が絶えない」とさらっと描かれていました。頑固な父親に対して反発して一人暮らしを始めた経緯があったため、ギクシャクしていたのでしょう。温厚そうな高寿にしては意外な気もします。

6-5.二人が出会った他のタイムラインの時系列まとめ

20歳同士で出会った二人は、無事に30日間の恋人になれました。時間が逆に流れていく二人は、その他の時間軸でも会いますが、少し整理しておきたいと思います。(小説から抜粋しました)

愛美5歳、高寿35歳(映画、小説)
夏休み、愛美が両親と「となりの世界」の神社のお祭りへ出かけた時、屋台のガス爆発に巻き込まれる寸前に高寿に助けられる。そこで、運命の出会いを感じる愛美。

愛美10歳、高寿30歳(小説のみ)
愛美、高寿と初デート。高寿から互いの幼少時の危機にお互いを助け出す逸話を聞く。

愛美15歳、高寿25歳(映画、小説)
高寿は愛美に5年後に二人は恋人同士になることを告げ、20歳の時に起こる大まかなイベントを教える。愛美、メモに取りまとめる。また、高寿、20歳のときの愛美の肖像画をプレゼントする。

愛美30歳、高寿10歳(映画、小説)
高寿のサッカーの帰りに愛美が現れ、一緒にたこ焼きを食べる。思い出の写真の入った箱を高寿に10年後に開けるように言って手渡す。原作では、愛美は女優になっている。

愛美35歳、高寿5歳(映画、小説)
【原作】震災で高寿の自宅が火事になり、部屋に取り残された高寿を愛美が救い出す。
【映画】家族と遊びに来ていた高寿が宝ヶ池で溺れた時、愛美が高寿を救い出す。

7.原作小説との相違点(※ネタバレ有注意)

7-1.原作では描かれていた将来の二人のキャリア

20歳同士の限られた40日間(原作)を過ごした後、愛美は女優に、高寿はクリエイターになります。二人の人生において一番大切な40日間は、二人のその後の人生にも多大な影響を与えたのでしょう。

20歳の冬にお互いが出会った時、初めて二人の関係の真実と驚愕の出来事を知った高寿と、幼少の頃から経緯やシナリオをすでに知り、高寿の世界に来て、逆向きの時間軸で、決められた運命を受け入れ、完璧に「演じた」愛美。

高寿は、時間軸を超えて絡み合った因果関係や運命的な出会いの奥深さから触発されてクリエイターへの志望が深まったのでしょうし、大切な相手のために脚本通り特別な二人の30日間を演じきった経験は、愛美に俳優になる自信を与えたのかな、と思うと非常に感慨深いものがありました。

映画でも、その後の二人のキャリアを匂わすレベルでもいいから、なんとか詰め込んでほしかったエピソードでした。

7-2.映画で追加された特別な仕掛け

映画では、原作にはない特別な仕掛けが2つ用意されていました。

・高寿の家で出された、隠し味にチョコレートを入れる「家庭の味」を、高寿に手料理として振る舞う愛美のエピソード
・15歳の愛美に25歳となった高寿が大切な二人の思い出である20歳の愛美の肖像画をプレゼントしたエピソード

この2つは、二人の優しさや思いの深さを効果的に表現した素晴らしいシナリオでした。原作ファンにはサプライズとなって、非常に良かった!

8.まとめ

原作小説を直前に5回読み返し、コミックも購入して予習はバッチリで臨んだ今回。ブログに書くから、泣かずに冷静にメモを取ろう!と思っていたのですが、ムリでした、、、。

かけがえのない二人だけの貴重な時間ははかなく、二人の時間軸は一瞬ですれ違っていきました。しかし、大切なものを失う大きな喪失感を経験する代わりに、高寿と愛美はふたりの大切な時間を何よりも大切にしようと決意し、相手を思いやる優しさを獲得していきました。決して相手につらい別れの涙をみせないよう、必死で頑張る健気な二人の演技が素晴らしかった。

切なくて、心が優しい気持ちになる、素晴らしい映画です。是非、映画館の大画面で二人の表情を楽しんでみて下さい。

それではまた。
かるび

9.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

本作品は、まず原作小説がブレイクし、映画化が決まると同時にコミカライズ企画も進んでいきました。良くあるメディアミックス戦略ですね。わかっていても全部買ってしまうという・・・せっかくなので、全部紹介します(笑)!!

9-1.原作小説「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

映画から入った人は、是非まず原作小説に目を通してみて下さい!150万部売れるだけの理由がわかります。とにかく、何度読んでも新たな発見があり、リピートする時は愛美の目線で読むと、すごく新鮮です。ロケハンがしっかりした情景描写も見どころ。

9-2.マンガ版「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

現在Webで連載中。映画がDVDになる頃に、最終巻が出そうなスケジュール感で連載が進んでいます。今のところ、原作小説に忠実な流れですが、クライマックスにかけて一捻りオリジナルのエピソードを期待しています!そしてこちらも泣けます・・・(^^)

9-3.七月隆文のお勧めの書籍!

元々バリバリ男子向けラノベ作家として小説家のキャリアをスタートさせた七月隆文ですが、最近のライト文芸路線をもっと突き進んで欲しいです。特に、この2冊は七月隆文の「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の次に読んでほしい本です!

四国の瀬戸内地方、今治を舞台に、特定の人にしか羽が見えない天使の女の子が転校してくる話。中盤以降一気に加速して、異世界的で深刻な展開と、ドロっとした四角関係の恋愛模様が同時進行するファンタジックなライト文芸。表紙を「君の名は。」作画監督の田中将賀が担当したのも要注目です。

イケメン男子と普通の女子高生がケーキ屋のバイトを縁として交流を深め、学園内でヒロインに仕掛けられた嫌がらせの謎解きをするお仕事小説/キャラ文芸をミックスさせたような作品。コミカライズも決まり、連載が開始されていますが、恐らくシリーズ物になる気配です。軽快なタッチでスイスイ気持ちよく読める作品です。

笑っちゃうほどマニアック!「大ラジカセ展」が意外性あふれるワクワクする展覧会だった!

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【2016年12月22日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。

パルコミュージアムで開催中の、「大ラジカセ展」に行ってきました。2016年春に好評だった大阪・梅田ロフトでの開催を受けて、東京にも12月上旬から巡回してきている展覧会です。

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ヴィンテージ・ラジカセが100台集結し、入場客が(自分を含め)ほとんど40代以上のオッサンだったという、まさに中年マニアを直撃する、サブカル臭漂う面白い展覧会でした!今日は、この「大ラジカセ展」について、簡単に紹介したいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

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はい、あまり混んでません(笑)でも、来場客は濃いマニアが多数集結していますので、熱いオーラは漂っていました(笑)ひょっとしたら、23日以降は仕事納めを済ませてきた人たちで混む・・・かも?!

2.個性的な展覧会、「大ラジカセ展」とは

今季、たくさんの展覧会を回ることができましたが、マニア度やテーマの意外性では、この展覧会がNo.1でした。そんな「大ラジカセ展」の概要を少し説明してみたいと思います。

大ラジカセ展とは?

<ラジカセ展の公式動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

70年代~80年代にかけて世界中を席巻したカセットとラジオが合体した日本発の「アナログ家電」であるラジカセ。本展は、とにかくラジカセを特集展示した、会場中ラジカセだらけの変わり種の展覧会です。

展覧会を企画・監修したのは、ラジカセ収集家の松崎順一氏。

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(引用:「大ラジカセ展」HPより)

幼少期から、ラジオの製作・電子工作・アマチュア無線などを趣味として、日本有数の家電マニアとなった方で、日本中から廃棄された家電(特にラジカセ)を収集するコレクターです。2003年に「デザインアンダーグラウンド」設立し、来年には自らのラジカセブランド「MY WAY」も立ち上げるそうです。

ラジカセとは何なのか?その定義や特徴をまとめると・・・

日本で初めて発売された世界初のラジカセ、「AIWA TPR-101」をきっかけに、90年代初頭まで、用途やユーザーの好みに応じて、様々なヴァリエーションが生まれたラジカセは、70年代~80年代の音楽・ファッションやサブカルチャーと深く結びついて、独自の発展を遂げました。

展覧会を監修する、松崎順一氏による「ラジカセの定義」を引用してみます。

ラジカセの定義は1.ラジオとカセットが付いている。2.把手が必ずある。3.電池で使える。この3点がラジカセの定義と思っている。あえてもう一つ付け加えるならばワンピースこそ最高なのである。

(引用:ラジカセ考 - デザインアンダーグラウンド ラジカセ・カセットテープ・オーディオの販売

さらに、同氏は、ラジカセに共通する特徴として、3点にまとめています。

「遊び心のあるデザイン」
時代が生んだ多種多彩多用なデザインは合体家電ラジカセの魅力のN0,1。
「アナログな音」
カセットテープのアナログ感。ラジオサーフィンが出来るアナログチューナー。
「直感的なインターフェース」
ひとつひとつのスイッチの音と実感を感じる操作感

本展覧会では、そんな松崎氏が日本全国から収集してきた世界的なラジカセコレクションの分類展示を中心に、ラジカセの魅力やカセットテープ、ラジオ、ラジカセが生み出した文化などを見ていきます。

【2016年12月22日追記】
松崎順一氏の挙げる「ラジカセの定義」について、”把手がある"という限定条件をつけるのはおかしいのではないか?「ラジオ」と「カセット」があればそれでいいのでは?という熱いエントリを読ませていただきました。

ラジカセ黎明期~全盛期の愛好家の鋭い意見、非常に勉強になります。是非合わせてご覧ください!パラボラアンテナ付きラジカセとか、マニアックを極めた一品も紹介されています。

「大ラジカセ展」の展示内容は?

ハイライトとなるのは、「スタンダード系」「かわいい系」「やりすぎ多機能系」「バブル時代系」など、タイプ別に展示された約100台のヴィンテージ・ラジカセです。よくこんなに集めたなぁと。

そして、最後に物販。なんと、展示されているヴィンテージ・ラジカセのうち、いくつかは購入することもできました。松崎氏のなりわいは、古いラジカセの修理請負や中古品販売でもあるため、「大ラジカセ展」は、マニア向けの即売会という性格も持っているのでした!僕が見に行った日も、実際にその場で購入している強者(やはりオジサンでした/笑)がいましたから。

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下記の写真のように、黄色い「◯」印がついているブツは、購入できちゃいます!見た感じ、それほど高くなく、良心的な価格設定でした。
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展示スペースの様子 

フロアは、こんな感じでした。「大ラジカセ展」といいつつも、どちらかと言うと狭めの展示スペースの辺り一面にぎっしりとラジカセが積まれています!!

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嬉しいことに、展示会場内の展示物は、体験コーナーの展示物を除き、手にとることはできませんが、 自由に写真撮影ができます。フラッシュはだめですが、接写、1点撮り、なんでもいけますので、是非カメラを忘れずにお持ち下さい!

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3.どんなラジカセが置いてあるの?

ラジカセの元祖、「AIWA TPR-101」

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まず、展覧会場に入ると最初に目に入ってくるのがこちら。

1968年、アイワからラジオ(短波/AM/FM)付きのカセットレコーダーとして世界初/日本初となるラジカセ「TPR-101」が発売されました。メーカーの設定定価は27,500円。今から約50年前の製品ですが、どうでしょうか?見た目よりも古さをそれほど感じさせないデザインだなと思いました。

このあと、70年代~80年代前半にかけて各社から発売されたラジカセは、基本的にはこのアイワ製のラジカセ第一号のデザインやコンセプトを参考に開発が進んでいきました。上述した、松崎氏の挙げる「ラジカセの3つの定義」(カセットとラジオが聴ける、把手がついている、電池で動く)をぴったり満たしています。

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スタンダードタイプ

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僕が小学校の頃、学校で体育や音楽の時間や、ラジオ体操などでよく使われていたようなデザインです。

基本的には、AIWAのTPR-101を拡大発展させたようなデザイン・コンセプトのラジカセが80年代になるまでは好まれました。今は亡きシャープ、三洋、ナショナル(旧パナソニック)、AIWAや、東芝、日立製のラジカセもあり、各家電メーカーが競合し、ひしめき合うレッドオーシャンな市場でもあったのですね。

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ラジカセ黎明期には、電話機やFAXに似た形のラジカセも多く見られました。今見ると、プロの使う機材みたいです。 

女性向けタイプ

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80年代を迎え、ラジカセも成熟期を迎えると、家電はインテリアやファッションと融合し、よりカジュアルな存在になっていきます。その中で、女性をメインターゲットにして開発された一連のカジュアルな製品群がありました。

これまでの無骨で実用本位だったり、マニアックな雰囲気も漂いがちだった黒ずくめの筐体を見直し、日常使いに必要な機能に絞り込み、ライトユーザーや女性に訴求した製品群は、女性以外にもよく売れたそうです。

チープ&キュートタイプ

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また、80年代は、工業製品にもDCブランド(死語/笑)やポストモダンの影響が色濃く出た結果、ラジカセにもデザイン重視の個性派製品が登場しました。そして、徹底したコストダウンにより廉価製品も多数出回った時代でもありました。「大ラジカセ展」では、こうした変わり種のラジカセも多数展示してありました。

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今は亡きサンヨーのヒット商品「ROBO」子供の時、本当によく店頭でこの商品を目にした覚えがあります。

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そして、まるで炊飯器のようなデザインの正体不明なラジカセ。インテリアとしても調和しづらいような気もしますが・・・

巨大化していったラジカセ

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小型化やファッション化とは別の系統で、ラジカセの爛熟期には、より大型化、高級化していった一連の製品群もありました。把手は一応ついていますが、あまりに大きくなって、もはや持ち運びが不可能なほど重たそうです。

面白かったのは、こうした巨大化したラジカセを身体が大きくなりすぎて絶滅してしまった「恐竜」になぞらえた展示説明があったことです。事実、この後すぐに「ラジカセ」は衰退期を迎え、ミニコンポやウォークマンに取って代わられてしまいましたから。

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昔のコンポや大きいラジカセって、録音/再生用にこういうメーターがかならずついていましたよね。子供の時、これらメーターが何のために使われるのかさっぱりわからなかったですが、何となく高級感がありました。懐かしい。 

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4スピーカータイプ。とにかく巨大です。ドルビーサウンドやサラウンド機能などもなかった時代に、なぜ内蔵スピーカーが4つも必要だったのかわかりませんが、とにかく壮観です(笑)

やりすぎ多機能系

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そして、同じく爛熟期の進化の特徴として、ガラパゴス的になんでもオールインワンに詰め込む日本人的発想で独自進化した、やりすぎな多機能系ラジカセ。とりあえずアイデアを果敢に形にしてみたけれど、一部のマニアの心をくすぐっただけだったという珍品も大集合しています。

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こちらは、なぜかラジカセの上に鍵盤が!流石にこれだけしかなければ、弾ける曲もすくないんじゃないかな?なんて思うのですが・・・ 

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ブラウン管のテレビ一体型ラジカセもありました。旅行先などで、意外に重宝したのかもしれません。

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こちらは、LPレコードが聴けるバージョン。カセットテープにダビングする手間がかからないので良いのでしょうか?!

バブル時代タイプ

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最後に、CDが普及し始めた、ラジカセ衰退期に出回ったCDラジカセです。バブル期になると、伝統的なラジカセの直線的なインターフェースは崩れ、流線型や丸っこいデザインのものが増えました。

ちなみに、下記のサンヨーのCDラジカセは、僕が12歳の時に父親がCDを聴けるようにと購入したものです。僕が使っていたころは、結局5年で壊れたのですが、懐かしいのでカメラに収めてみました。

当時は、「重低音」を如何にリアルに響かせられるか?という指標が非常に重要だった時代で、このマシンもつまみを回すと近所迷惑なくらいものすごい重低音が出せた思い出があります。

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4.ラジカセの体験コーナー

一通りタイプ別にラジカセを見て堪能した後は、実際にラジカセを聴ける体験コーナーも設置されています。2台置いてありましたが、僕が行った日には1台壊れてカセットが再生できなくなっており、何とも言えない奥ゆかしさを感じたのでした。

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ちなみに、この日体験コーナーのラジカセに入っていたカセットは、河合奈保子「あるばむ」でした。僕が物心ついた時は、松田聖子と中森明菜に挟まれて、なんとなくトップになりきれない感じの歌手でしたが、今聞くとメチャ歌上手いじゃないですか・・・。AKBとかのメンバーに是非聴かせたいものです。

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5.カセットコーナー

そして、ラジカセコーナーのあとには、カセットコーナーとラジオコーナーがありました。ここでは、カセットコーナーを紹介したいと思います。現在、40代後半以上になっった各界の著名人・クリエイター系の人たちが、若い時から大切にとっておいた彼らの思い出のカセット達が展示されています。

カセットコーナーは、独立した小部屋になっていて、こんな感じのカセットケースで装飾したのゲートをくぐって入っていきます。

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僕も、自宅に昔作ったカセットテープがありましたが、先日の大掃除で全部捨ててしまいました・・・。みんな結構捨てずにとっておくものなのですね。小学校~中学校の時によく聴いていた工藤静香とかBOOWYとかなので、別にいつでもCDで買い戻せるのですが(笑)

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そして、カラフルなカセットケースの展示コーナーもありました。こうして並べてみると、何となくポップアート的な香りもしてきますね。 

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6.物販コーナー

そして、展示最後が物販コーナーです。松崎さんの著作を中心に、マニアックなDVDや書籍がいっぱい置いてあります。

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中でも、最高にマニアックそうだったアイテムがこちらです。DVD『ラジカセのデザイン!』。世界初のラジカセビジュアルDVDということで、松崎氏が完全監修の下、プロの声優ナレーターがラジカセについて語り尽くした一枚だそうです。

ググってみたところ、ちゃんとプロモーションビデオも製作されていました。売る気まんまんですね?!ラジカセファンにはたまらない、いかにもマニアックそうな内容です!プロモビデオは、下記からどうぞ!

<ラジカセのデザイン>

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また、インディーズ・レーベルのアルバムカセット(洋楽)も多数展示されていました。ここ数年、静かにカセットテープが復権しつつあるのを感じられました。

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そして、松崎氏監修のオリジナルラジカセも発売になるようです。

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松崎氏が「未来のラジカセ」として独自開発したラジカセ「MY WAY」ですが、調べてみたら、クラウドファンディングによって製作費をまかなったとのこと。

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目標金額の200万円を大きく上回る500万円超が集まったことがわかります。マニアの熱いサポートによって、いよいよカセットテープだけでなく、それを再生するための媒体、ラジカセも復権しようとしているのでしょうか?!

7.まとめ

今の40代以上の年代には、非常に懐かしい家電となったラジカセですが、ここ数年、洋楽やクラブシーンを中心に盛り上がりつつあるカセットブームの追い風に乗って、ラジカセも静かに再ブレイクする日が来つつあるのかもしれません。

僕にとっては、学生時代を思い出す、非常に懐かしい気持ちにさせてくれた展覧会として、非常に印象に残りましたし、なによりもマニアックで面白かった展覧会でした。

年末、27日が最終日となります。もし興味がある方は、面白いのでおすすめです!

それではまた。
かるび

「大ラジカセ展」展覧会開催情報

◯所在地
パルコミュージアム 池袋パルコ本館7F
〒171-8557東京都豊島区南池袋1-28-2
◯最寄り駅
JR・私鉄池袋駅/JR東口駅ビル内
◯開館期間・時間
2016年12月9日(金)〜12月27日(火)
10:00~21:00(最終日は18:00閉場)
◯休館日
なし
◯入館料
一般500円・学生400円(税込)・小学生以下無料

◯公式HP
http://dairadicasseten.haction.co.jp/

【ネタバレ有】映画『バイオハザード ザ・ファイナル』の感想とあらすじ・伏線を徹底解説!/人気ゲーム映画シリーズのクライマックス!

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かるび(@karub_imalive)です。

バイオハザードの映画シリーズ最終作「バイオハザード ザ・ファイナル」を見てきました。初回作から10年以上かけて、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演ではこれで一旦打ち止めとなる作品。

カプコンの同名ゲーム「バイオハザード」をベースとするため、過去には、中島美嘉や、今作ではローラなど、何かと日本と縁が深いホラーアクション映画ですが、早速初日に気合を入れてみてきましたので、以下感想を書いてみたいと思います。

※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

<バイオハザード ザ・ファイナルの公式動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】ポール・アンダーソン(「バイオハザードシリーズ」他)
【原作】ゲーム「バイオハザード」シリーズ

2.主要登場人物とキャスト

過去作のメインキャラ達の生き残りや、ラスボス達が全て出て来る、最終作にふさわしい布陣となりました。ローラ扮するコバルトも日本人としてはチェックポイントでしょうか。

アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)
足掛け15年、アンダーソン監督との結婚、2人の子供の出産を挟んで演じきりました。本当にお疲れ様。1stシリーズを見返しましたが、当時と見た目や体型があまり変わらないのはお見事。ちゃんと若さを維持していて素晴らしいです。
クレア(アリ・ラーター)
3作目、4作目に続き、最終作でもアリスを補佐する重要な役割として出演。ゲーム同様、最重要キャラクターとして待望の復帰でした。
ウェスカー(ショーン・ロバーツ)
5作目でアリスとの関係が敵対関係から少し変化したウェスカー。最終話でもきっちりその姿を見せてくれます。
レッドクイーン(エバー・アンダーソン)
1stシリーズ以来、頻繁にレッドクイーンとやり取りをする場面が多くなる今回、なんとレッドクイーンを担当したのはミラ・ジョヴォヴィッチとアンダーソン監督の長女、エバー・アンダーソンでした!
コバルト(ローラ)
クランクインに入った時から、ローラが「バイオハザード」シリーズでそこそこの立ち位置で脇役で出る!というニュースがありましたが、頑張っていました。
ドク(オーエン・マッケン)
クリスチャン(ウィリアム・レビー)
アビゲイル(ルビー・ローズ)
マイケル(フレーザー・ジェームズ)
ハイブ近くのアジトのメンバー。
アイザックス(イアン・グレン)
アンブレラ社の社長にして、ストーリー全体の黒幕。サイバネティックスで強化人間となっている。

===これ以降ネタバレエリア===
===これ以降ネタバレエリア===
===これ以降ネタバレエリア===
===これ以降ネタバレエリア===
===これ以降ネタバレエリア===

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3.結末までの簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

(アリスの独白からスタートする)
アレクサンダー・アイザックス博士とジェームズ・マーカス博士が50%ずつの出資で共同設立したバイオベンチャーだった。マーカスの娘、アリシアは「プロジェリア」(早老症)という遺伝病にかかっていた。

二人の開発した「Tーウイルス」が特効薬として売り出されたが、「Tーウイルス」は細胞に急性の突然変異をもたらし、人間をアンデッド化してしまう恐ろしい副作用があった。南アフリカで最初の事例が発生してから、事件を隠蔽して利益を優先させようとするアイザックスと、発売中止を訴えるマーカスが対立、アイザックスは、部下であるウェスカーを使い、マーカスを絞殺し、マーカスの一人娘、アリシアの後見人になった。

アイザックスは、アンブレラ社を管理する人工知能に、マーカスが生前保存していたアリシアの脳内データをアップロードし、レッドクイーンのコンソールのインターフェースとして活用した。これが、「レッドクイーン」である。

(本編スタート)

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ホワイトハウスを命がけで脱出したアリスは、巨大な怪鳥「ポポカリス」に追われていた。なんとか撃退した時、サイレンがあたりに鳴り響く。アンブレラ社がアリスの場所を捕捉したからだ。アリスは近くの建物に入り、武器を探す。すると、部屋の中においてあったタイプライターがひとりでに動き出し、そこにレッドクイーンのホログラムイメージが現れた。

「現在、各シェルターに居住している世界人口は4472人となっており、48時間後に、核シェルターへ彼らアンデッド達が殺到し、シェルターの人間を全滅させる。このままでは世界は48時間以内に滅亡してしまうが、ラクーンシティの「ハイブ」内にあるTーウィルスの散布用ワクチンを時間内に撒けば、Tーウイルスに感染した生き物は全部死滅し、世界滅亡を救えるという。

これまでレッドクイーンと対立してきたアリスは、半信半疑ではあったが、レッドクイーンの言うとおり、ラクーンシティへ向かった。

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途中、トラップで車を失い、戦車でアンデッドを引き連れてラクーンシティへ向かうアイザックスに拉致された。アイザックスと戦い、彼の手首を切り落として戦車に載っていたバイクでラクーンシティへ入るアリス。

ラクーンシティ内で、もうすぐハイブへと至る道中、ワナにかかって捕まってしまうアリス。そのまま意識を失った。

アリスは、ハイブの近くの高層タワー廃墟にある生存者たちのアジトにいた。そこで左心室にアドレナリンを射たれそうになるが、偶然アルカディア号(4作目でアリス達が乗り込んだ大型船。終盤でアンブレラ社に襲われる)から逃れてきた時以来、ここにいたクレアと再開する。

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再会も早々に、大挙してやってくるアイザックスとアンデッドの群れから防御するために、アジトにバリケードを築いて戦うアリス達。奮戦虚しく、仲間のコバルトがアンデッドに殺された。防衛線は破られたものの、アンデッド達を焼き殺して全滅させた。

そこへ、アンデッドの大群の第二波が到達しようとしていた。もう次は持ちこたえられないことがわかっていたので、アリスたちは、最後の望みであるハイブ潜入を試みることになった。

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メンバーは、アリス、クレア、ドク、アビゲイル、クリスチャン、レイザーだった。ハイブは10年前の核爆発時にできたクレーターから入ることができた。クレーターに降りていくメンバーたち。

そこへ、ウィルスに感染した犬の化物、ケルベロスが襲いかかる。運悪く、ここでクリスチャンが捕まり、殺された。

ケルベロスを振り切り、ようやく入り口にたどり着くと、彼らは再びレッドクイーンのホログラムと対面する。そこで、彼らはアンブレラ社の役員会議で人類滅亡について熱く語るアイザックスの録画動画を見せられた。人類を滅亡させ、地球に平和と秩序を取り戻したいと語る狂信的なアイザックスの話に、あらたに打倒アイザックスの気持ちを固めるメンバー。

そして、通気口の入り口から侵入したメンバー達だったが、監視カメラに挑発的な態度を取ったアビゲイルが、突如逆回転を始めた通気口のファンに巻き込まれて死亡してしまった。ハイブの本部で見ていたウェスカーがやったのだ。

さらに、通路を進んでいくと、突然床が開き、レイザーが落とし穴に落ちて死亡する。また、アリスやクレアたちメンバーはバラバラの場所へと落ちてしまう。

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アリスが降りた場所は、ハイブ地下の廃棄された実験室。そこで、マイケルと合流するも、マイケルは見たこともない凶悪なアンデッドに殺された。

ドクと合流し、レーザービームの廊下を抜け、地下のハイブ本部へ3人で到達したアリス。アンブレラ社の役員達を凍らせた低温貯蔵室を抜け、本部へ行くと、低音貯蔵状態からウェスカーに起こされたアイザックスとウェスカーが待っていた。外にいるアイザックスは、クローンだったのだ。アイザックスの手には、ワクチンが握られていた。

そこへ、創業者の娘、アリシア・マーカスが車椅子で現れた。そして、アイザックスから、自身もまた、アリシア・マーカスのクローンだと告げられたアリス。アリシアにとって、レッドクイーンは幼少時の自分、アリスは成人した自分だった。

対峙するアリス達だったが、突如ドクがアリスを裏切る。ドクは、アンブレラ社側の内通者だったのだ。絶体絶命になるアリス。

その場でウェスカーを解雇すると宣言するアリシア。「アンブレラ社の社員には危害を与えてはならない」という規約からウェスカーが外れたその瞬間、レッド・クイーンがウェスカーの頭上から防爆扉を降ろし、ウェスカーを身動きできないようにした。

ドクが、アリスに発泡したが、なにも起きなかった。予め裏切りを予測していたアリスがクリップを抜いておいたのだった。ドクを取り押さえ、最後にはクレアがドクを撃ち殺した。

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形勢不利になったアイザックスは、地上へと脱出を図る。残されたワクチンを持って、地上へと向かうアリスだった。地上に登る途中、レーザービームの間でアイザックスと戦うアリス。レーザーで指を切り落とされるも、アリスはアイザックスのポケットに手榴弾を押し込み、何とかアイザックスを倒して地上へと向かった。

また、アリシアはウェスカーとともに、ハイブの中枢部で起爆装置を起動し、ウェスカーとともに死亡した。

地上へと出たアリスが、ワクチンを使おうとした時、倒したはずのアイザックスが復活して戻ってきた。アイザックスと再び戦おうとしたその時、アンデッドを引き連れてハイブまで到達したアイザックスのクローンとアイザックスがばったり鉢合わせする。二人は、アリスを差し置いて争い出す。

アイザックスのクローンは、アリスとの戦いで傷ついたアイザックスを倒したが、まもなく後ろからやってきたアンデッドに飲み込まれて死亡した。

アンデッドの大群に囲まれ、絶対絶命になったアリスだったが、寸前でワクチンをばらまくと、アンデッドが突然動きを止めて、死滅した。ワクチンが間に合ったのだ。また、アイザックスが死亡したことで、レッドクイーンがアンブレラ社の各支部に、一般人攻撃の中止指示を出すことができたので、世界崩壊も防ぐことができた。

アリスは、体内にワクチンが充満するのを感じ、その場に倒れてしまった。

目をあけると、アリスの側にはクレアがいた。アリスの体内のTーウィルスは死滅したが、それ以外の正常な細胞は壊れなかったため、死ななかったのだという。そして、アリシアは、死亡する寸前に自らの幼少時代からの記憶をアリスへと移植する段取りをすませていた。レッドクイーン経由で、アリシアの記憶を受け取ったアリス。アリシアは、アリスの中で生き続けるのだ。全てが片付いた今、アリスはバイクでまた何処かへ走り去るのだった。

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4.感想や評価(※ネタバレ有注意)

4-1.最高の「B級」アクションホラー映画

僕個人としては、言い方は悪いですが、映画「バイオハザード」シリーズは、最高の「B級」アクションホラー映画だと思うんです。暗がりや危機的状況の中でアンデッドとの戦闘シーンでの恐怖感を最優先した結果、シリーズ全般を通じて、

・割と現実味のない強引なストーリー展開
・主人公がなぜかアンデッドのいそうな空家に入る
・要所要所でなぜか武器や移動手段が都合よく手に入る
・クレア以外の仲間は基本的に全員順番にやられて死んでいく
・死んだキャラクターを悲しむ暇もなく物語が進む

など、ストーリーやリアリティはかなり犠牲になっています。敢えて好意的に解釈すれば、ゲームのように「何も考えずに手に汗握るアクションを楽しめ」ということなのかなと思っています。今作も、最終話としての伏線回収を冒頭のアリスのナレーションにやらせるなど、強引でしたが(笑)、「バイオハザード」の映画世界を楽しむ「お約束」として「割りきって没入できれば、今作は非常に楽しめたのではないでしょうか?。僕も、本シリーズのストーリーの弱さは過去5作を見てわかっていたので、今回は純粋にアクションと恐怖感を楽しもう、と決めて望んだ結果、結構満足感は高かったです。

4-2.ファイナルに相応しいメインキャラ総登場での最終決戦

クレアの兄、クリスがいなかったのは残念でしたが、過去5作で生き残った主要な敵、味方が総出演した上、”聖地”ラクーンシティの中心地「ハイブ」で、これでもかという数千体のアンデッド達と繰り広げた、アクションバトルは見ごたえがありました。

今回の最終決戦で、数千体のアンデッドをCGで再現したそうです。エキストラがメイクして参加した1作目から考えると隔世の感があります。

4-3.迫力のある映像美

荒廃したホワイトハウスの様子f:id:hisatsugu79:20161223164538j:plain

1作目では予算不足からチープなセットや映像にも安っぽさがありました。アンデッドは実際に特殊メイクをした人間が演じたり、人形を使っていたりと割とガッカリなシーンも多かったですが、前作あたりから洗練されてきましたね。今作は、都市の荒廃した風景、ハイブ内の気持ち悪い地下室など、キレイなCG、精巧なセットで映像面や演出面では格段の進歩を感じることができました。

5.伏線や設定などの詳細解説(※ネタバレ有注意)

5-1.ローラの出演経緯とセリフは?

<ローラの出演シーンまとめ動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

ハリウッドでのオーディションに応募して合格したそうです。映画プロデューサーいわく、「彼女は、驚くべき美貌と人を惹きつける強烈な個性、強い意志をもった女性。 今回のコバルトは彼女が適役でした」

バイオハザードシリーズでは、主演級キャラは「ほぼ全員アンデッドに殺されて死ぬ」法則どおり、セリフ「What are we gonna do?」(どうしたらいいの?)と、一言を残し、途中のクエストでアンデッドの大群に飲み込まれて死亡しましたが、セリフ無しでカメオ出演したバイオ4、5の中島美嘉より良かったと思います!

5-2.アンブレラ社の設立経緯とレッド・クィーンの秘密とは?

アンブレラ社は、(映画最終作の)30年前にふたりの科学者、アレクサンダー・アイザックス博士とジェームズ・マーカス博士が50%ずつの出資で共同設立した会社でした。マーカスの娘、アリシア・マーカスは6歳で進行性の消耗性疾患である早老症「プロジェリア」にかかっていました。すでに妻も同様の病気で失い、娘に遺伝したプロジェリアを治療するための特効薬として二人が開発したのが「T-ウィルス」でした。

マーカスは、娘アリシアの脳をヴァーチャルコピーして保存しましたが、このデータをアンブレラ社の人工知能の対話インターフェースに実装したのが「レッド・クイーン」です。

その後、映画であった通り(あらすじ参照)T-ウィルスに前駆細胞を変異させ、ウィルス罹患者をアンデッド化させる副作用の軍事転用と世界滅亡を企てたアイザックスがウェスカーを使ってマーカスを殺し、アンデッド社の実権を握ったのでした。

5-3.アンブレラ社の最終目的は何だったのか?

アンブレラ社の実権を握ったアイザックスは、役員会議でTーウイルスによるバイオテロの必要性を論じました。環境汚染や食糧危機、戦争など、増えすぎた人類によって引き起こされた諸問題を解決するためには、選ばれた人間以外の人口を減らすしかない。そのために、T-ウイルスによるバイオテロを起こして人間を大量殺害するべきである、というカルト宗教団体の終末論のようなロジックでした。実際、アリスとラクーンシティへの道中戦ったアイザックスは、聖書の終末思想的な一節をブツブツ唱えていましたね。

5-4.描写が省略された第5作終了時以降のストーリー展開

第5作「バイオハザード5リトリビューション」では、アンブレラ社の人工知能「レッドクイーン」に対抗するため、ウェスカーの手引でロシアの地下施設を脱出し、ウェスカーの待つホワイトハウスへと向かいました。しかし、第6作では、ホワイトハウスでの攻防が省略され、ワシントンを脱出してラクーンシティへ向かうところから、映画本編のストーリーが描かれています。

第5作終了後、本作までの間の省略された出来事は、実は、上記の映画のノベライズ版で詳述されているのです。簡単に箇条書きでまとめると、

・アンブレラ社、ダニア・カルドザ(映画未出)が「アバター」という制御装置付きのアンデッドを率いてホワイトハウスを急襲する。
・同じく、ダニアがインフェクターという怪鳥を使って、アンデッドの大群を変異させ、巨大なアメーバ状の「メランジ」という怪物を作り出す
・ウェスカーに、能力を一時的に回復する注射を射たれたアリスは、ダニアの乗るオスプレイを墜落炎上させ、ダニアを殺す。
・ダニア死亡後、ウェスカー、突如としてアリスを裏切り、アリス達をアンデッドの融合体「メランジ」の前に引きずり出して、ラクーンシティのハイブへ向かう。
・アリス以外のメンバー(ジル、レオン、エイダ/パート5の主要キャラ)はアンデッドに殺され死亡。
・アリス、「メランジ」を倒してホワイトハウスを離脱。ウェスカーを追ってラクーンシティへ。

となります。映画前半で「ウェスカーに裏切られた」とアリスが言っていたのは、ホワイトハウスの攻防戦で一時的に協力して、共通敵であるアンブレラ社のダニア・カルドサを退けたあと、ウェスカーに、仲間と一緒に窮地に立たされ、アンデッドの融合体「メランジ」の前に置き去りにされたためです。

5-5.リブートを見越した結末?

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のシリーズは、彼女の年齢的にも恐らくこれで最後でしょう。ただし、映画のラストで、「まだ散布したワクチンが全世界に効くには数年くらいかかる」と言っていたこと、さらにノベライズのラストで爆散したウェスカーの細胞が地中深く眠りにつき、再び地上に出る日が「本当のお楽しみだ」と書かれていることから、別の主役を立てて「リブート」された続編にも含みを持たせた終わり方だったと思います。

成長したミラ・ジョヴォヴィッチの娘、エヴァ・アンダーソンがシリーズのあとを引き継ぐ展開になったりして?!

6.まとめ

正直言って、シリーズ全般を通して、物語のアラや矛盾点、ご都合主義な展開など、ツッコミどころを探し始めると、山ほどあります。過去作でも酷評を結構見てきました。ストーリー上のリアリティを重視する人は、あまり楽しめないかもしれません。

ただ、これまで過去5作で全世界興収1000億円超、日本でも160億円を挙げてきた実績の通り、「ソンビもの」ホラーアクションとしては、金字塔的作品ですし、ゲームからのスピンオフでもこれほど成功した映画はないと思います。

ゾンビの気持ち悪さ、スリル満点のアクションや恐怖シーンなど、見どころは満載ですし、「この映画はこういう娯楽作品なんだ」と、割り切るところは割り切って頭をからっぽにして楽しむようにすれば、かなり面白い作品でした。過去6作中では、今作が一番おすすめです。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

7-1.過去作全作品がHuluにて2週間無料で楽しめる!

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(引用:Hulu)

バイオハザードシリーズは、本作の前に過去作品が5作あります。その全作品が、Huluで視聴できます!

映画冒頭でも、過去からの経緯をアリスが簡単に触れてくれますが、クレアとの共闘やウェスカーやアイザックスとの戦いなど、作品が流れとしてつながっているので、より本シリーズを楽しむためには、是非過去作を見ておいてほしいです!

でも、今から全作品のブルーレイやDVDを揃えるのは、意外とお金がかかるんですよね・・・。僕もこの秋からこのHuluに加入中なのですが、ブルーレイを揃えると10,000円以上かかるところ、タダで予習・復習できたので、お得に楽しめました。

Huluなら、加入後最初の14日間は「無料期間中」とのこと。ということは、無料期間中に見てしまえばタダ!ということで、時間の取れる年末年始に、お金を節約してHuluでまとめて見てしまえば非常にお得です!

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7-2.ノベライズ版「バイオハザード ザ・ファイナル」

映画では出てこないオリジナル新キャラ「ダニア・ガルドザ」との、ワシントン、ハイブ内での2度の攻防戦や、第5作でアリスが救出した女の子、ベッキーについての逸話はノベライズ版ならでは。

戦闘アクションシーンも相当細かく描きこまれており、映画内容をきっちり再現した優れたノベライズでした。また、ラストでのウェスカーについての記述内容が映画と異なり、これが今後続編にどうつながっていくのか楽しみでもあります。お勧め!

7-3.映画公開限定版の「DVD/ブルーレイスペシャルパッケージ」

今回の映画公開を記念して、1作めから5作目までをセットにしたリーズナブルな限定コンプリートパッケージも出ましたね。本編以外のメイキング映像や未使用カット、監督やキャストの解説・インタビューなども入ったお得版です!

7-4.他にもゲームやグッズ類がたくさんあります

ちょうど、2017年1月には「バイオハザード7レジデント・イービル」が発売されるようで、かなり予約が入っているみたいです。クリスマスシーズンですし、映画公開に合わせて、マンガ・ゲーム・映画など、様々な関連グッズが安くなっているようです。便利なのでリンクを置いておきますね。

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アートで楽しむローグワン!「もうひとつのスター・ウォーズ展」に行ってきました(混雑注意!)

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かるび(@karub_imalive)です。

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スター・ウォーズのサイドストーリー第一弾「ローグ・ワン」が12月23日に公開されました。昨年末「フォースの覚醒」も12月公開でしたし、「スター・ウォーズ エピソード8」も2017年末封切りが決定しているので、しばらくスター・ウォーズは年末の風物詩になるかもしれませんね。

映画「ローグワン」のレビュー記事(※ネタバレ含)はこちらから。

さて、そんな映画「ローグワン」の公開を記念して、短期間ではありますが、12月23日~12月29日まで汐留で「もうひとつのスター・ウォーズ展」が開催されています。

好評であれば、おそらく年明けから大阪や名古屋など、各都市の百貨店等のイベントスペースに巡回する可能性があります。映画を見て非常に気に入ったので、どんなものなのか見に行ってみました。早速、簡単ではありますが以下感想を書いてみたいと思います。

1.混雑状況(かなりの混雑を覚悟してください!)

僕が行ってきたのは、2日目の12月24日午後12時30分。人気映画の封切り直後であったこと、冬休み期間中の土曜日だったことから、混雑は覚悟していました。そして、予想通りやっぱり混んでいました。

まず、会場の外で入場待ちとなります。開場が狭いので、一気に人を入れずに、少しずつ展示会場内の人数を見ながら入れているためです。並んでいる間に、展示会場外に展示された「スター・ウォーズの歴史」パネルやポスターなどを楽しみながら待てるようになっています。

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さらに、奥の方にはイベントスペースと、VR体験コーナーがありました。

イベントスペースでは、ダース・ベイダーやストームトルーパーの撮影会が実施されており、事前の整理券入手が必要でした。(そして、整理券の配布は全て終了しています/12月24日17時時点)

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また、実際にスター・ウォーズの空戦を楽しめるVRコーナーは、一旦会場出口から出て、別の列に並び直す必要がありました。そこでの待ち時間は、12月24日午後13時時点で80分!大混雑です・・・。

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アカン、無理や、、、ということで、撮影会とVRは諦め、他のコーナーを思い切り楽しむことにしました。 

2.「もうひとつのスター・ウォーズ展」とは

「スター・ウォーズ最新作『ローグ・ワン』を記念して、作品世界を体感できるような展示会を開催する」として、スター・ウォーズシリーズの中でも、特に、映画「ローグワン」に関係するアイテムが展示されていました。

3.何が展示されているの?

では、早速入り口から順番に見ていきたいと思います。

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入り口をすぐ入ると、まず通路に「デス・トルーパー」10体の等身大フィギュアがどどーんとお迎えしてくれます。「デス・トルーパー」は、映画「ローグワン」だけで出て来る、銀河帝国将校オーソン・クレニック専属のボディガードも兼任するエリート将兵で、全身黒スーツで身を包んでいます。

次の部屋に行ってみましょう。ここでの目玉は展示は3つあります。

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まず、恐竜を思わせる巨大な対地上戦闘用兵器「AT-ACT」のダンボールアートです。惑星スカリフのビーチでの戦闘シーンを思い出させる、精巧な作りにびっくりしました。パッと見て、ダンボールとはとても思えません。

そして、次に、日本画家、柏原晋平氏によるローグワン特製の襖絵!アートファンとしては、これが一番見たかった!

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丸丸氏が、12月中旬に実施されたジャパンプレミアイベントのために描いた、世界に一つしか無い襖絵です。真ん中に「黒く」描かれた月に見立てたデススターを真ん中に、富士山、桜を配した日本画の王道的モチーフの中に、登場人物が描かれています。

左側が帝国軍、右側が「ローグワン」メンバーですね。

帝国軍メンバー
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富士山の山麓に佇むダース・ベイダーが奥ゆかしくて素晴らしい!

ジンとキャシアン
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結構顔や服装も似てますよね?

来日時に俳優たちが残したサインf:id:hisatsugu79:20161224180525j:plain

そして、フェリシティ・ジョーンズら、主人公たちのサインも襖絵にありますよ。(できればアートファンとしてはサインは辞めてほしかったが・・・/笑)

なお、このローグワン・襖絵については、柏原晋平氏のHPで製作シーンを見ることが出来ますよ。

ローグワン襖絵の製作シーン
http://information.kashiharashinpei.com/

つぎに、ストームトルーパーのヘルメットを使ったアート、その名も題して「ストーム・トルーパー・アート」が10点展示されています。半分以上は芸能人の手によるものでしたが、篠原ともえの作品など、なかなか手のかかった個性的な作品は、見応えがありました。

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個人的には、一番気に入った篠原ともえの力作。凄い描き込みです。

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次の部屋に行くと、実際に映画「ローグワン」で使用された、主人公たちの衣装5体と、新登場のドロイドK-2SOが展示されています。

左から、「K-2SO/ジン/キャシアン」f:id:hisatsugu79:20161224180913j:plain

左から「ボーディー/チアルート/ベイズ」f:id:hisatsugu79:20161224180920j:plain

主人公のジン・アーソを演じたフェリシティー・ジョーンズは、欧米人にしてはかなり小柄の157cmなんですよね。衣装の小ささを見て、実感しました。

また、東洋人コンビのチアルート棒術で使う杖やベイズが背中に背負っていたがアイテムなども合わせて置かれており、ファンにはたまらない実物展示となりました。

チアルートの棒術用「杖」f:id:hisatsugu79:20161224181353j:plain

ベイズが背中に背負っていたタンクf:id:hisatsugu79:20161224181442j:plain

また、よく見ると、K-2SOは使用感を出すために近くで見ると結構汚れているんですよね。芸の細かさを感じました。

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そして、メイン展示室の最後が、80分待ちのVRコーナー。

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こんな感じで、専用コーナーに座って、VR用ゴーグルをかけて反乱軍のX-ウイング体験ができます。一度に3人までしか体験できないので、これは並ぶわけですね。一旦外に出て並びます。

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イベント用スペースでは、ちょうどストームトルーパーとダース・ベイダーの撮影会が行われていました。宣揚入り口の前のお姉さんに聞いたら、整理券が必要とのこと。遠巻きに会場の様子を撮影しておきました。(見えにくいけど、前の方にダース・ベイダー達がいました)

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そして、出口を出ると、物販コーナーが。いろいろなものがありましたが、僕は、記念にローグワン初心者向け解説本「STAR WARSプライマーブック」を購入して帰りました。(※一緒に移っているポストカードは全員入り口で記念品としてもらえます!)

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文房具・ライトセイバー・マグカップ・フィギュア・トミカシリーズ・カレンダー・年賀状キット・アートブック・DVD類など、あらゆるものが置かれていました。開催2日目にもかかわらず、結構売り切れているグッズもあり、スター・ウォーズシリーズの人気の高さを実感しました。

ライトセイバーAmazonで見るf:id:hisatsugu79:20161224173639j:plain

トミカシリーズAmazonで見る
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サウンドドロイドAmazonで見るf:id:hisatsugu79:20161224173623j:plain

デストルーパーフィギュアAmazonで見るf:id:hisatsugu79:20161224173531j:plain

展覧会に行けない人のために、Amazon楽天の特設コーナーが開設されていますので、特設ページへのリンクを置いておきますね。

楽天・Amazonの特設通販サイト 
Amazon「スター・ウォーズ特設コーナー」
楽天「スター・ウォーズ特設コーナー」

4.まとめ

「もうひとつのスター・ウォーズ展」は、12月29日までの東京限定開催ですが、冒頭にも書いた通り、これから日本全国へ巡回する可能性もあると思います。年末29日までに来れなくても、ひょっとしたらまた年明けにどこかで見れるかもしれませんね。

年末の慌ただしい中ではありますが、ファンには非常に楽しい展覧会となりました。入場無料ですし、スター・ウォーズファンなら、チェックして損なしのうれしい展示ですよ!おすすめです!

展覧会開催情報

「もうひとつのスター・ウォーズ展」

◯展覧会会場
汐留・日本テレビ 2階日テレホール(MAP)
◯期間・開催時間
12月23日(金)~12月29日(木)

各日11時00分~20時00分
◯公式サイト
http://www.ntv.co.jp/rogueone/

アートの力で心豊かに!2017年上半期、オススメの西洋美術展を全力で紹介する16選!

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かるび(@karub_imalive)です。

さて、2016年も終わりが近づいてきましたが、今年もたくさんの印象的な展覧会がありました。そして、来年2017年も、2016年に負けず劣らず、全国の美術館でたくさんの素晴らしい企画展が開催される予定です。

半年に一度、大まかな展覧会回りのスケジュールを立てるのですが、2017年度上半期については、かなり行きたい美術展がまとまってきました。本エントリでは、個人的に「これは絶対に行きたい!」と考えている注目の展覧会を中心に、おすすめの西洋美術展をまとめてみました。

そんな注目の展覧会の中でも、本稿では、

▶ 2017年上半期開催のオススメ展覧会
▶ 主に西洋美術を扱う企画展
▶ アート初心者でも安心して楽しめる

この3点を条件として、ピックアップしています。(※なので日本美術・工芸・現代アート等は別エントリでまた紹介したいと思います)

ここで紹介した展覧会は基本全部行く予定ですし、行ってきたら後日レビュー記事のリンクを随時アップしていきたいと思います。

それでは、順番に見ていきましょう!

1.クラーナハ展(東京・大阪)

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すでに、2016年10月15日から東京で大好評開催中のクラーナハ展。年季の入った美術ファンを中心に評判の高い展覧会ですが、初心者でも間違いなく楽しいです。中世~ルネサンスへの端境期で、ユニークなコンセプトの絵画を量産し、近代的な工房での生産体制を確立した巨匠、クラーナハの貴重な作品群は文句なくお勧め!!

1月末からは、大阪に巡回して、国立国際美術館にてピエール・アレシンスキー展と同時開催されます。関西や西日本の人はお待ちかねですね!

★参考記事「クラーナハ展」感想 

美術展開催情報
展覧会名▶クラーナハ展 ~500年後の誘惑~
開催時期▶
  東京:2016年10月15日〜2017年1月15日
  大阪:2017年1月28日~4月16日
開催場所▶国立西洋美術館(東京)、国立国際美術館(大阪) 
公式HP▶http://www.tbs.co.jp/chasseriau-ten/Twitter▶http://www.tbs.co.jp/chasseriau-ten/ 

2.ゴッホとゴーギャン展(名古屋)

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 2016年下半期、関東で入場者数No.1を記録し、土日には30分以上の入場待ちが発生した人気の「ゴッホとゴーギャン展」。年明け早々、正月三が日から愛知県美術館にて開催されます。初詣のあとは、ゴッホとゴーギャンですね?!

さて、僕は展覧会を見るまでは、ゴーギャンはゴッホと別れてから憎み合っていたのかと思っていました。展示を見るとわかりますが、全くそんなことはなかったんですね。ゴッホ・ゴーギャンの作品群をまとめて時系列順にチェックできますし、「耳切り事件」で終わったアルルでの共同生活を中心に、二人の交流をしっかり追った素晴らしいコンセプトの展覧会でした。ゴーギャン、いいやつでした・・・^_^;

★参考記事「ゴッホとゴーギャン展」感想

美術展開催情報
展覧会名▶ゴッホとゴーギャン展
開催時期▶2017年1月3日 (火) 〜 3月20日 
開催場所▶愛知県美術館
公式HP▶http://www.g-g2016.com/aichi/index.html
Twitter▶https://twitter.com/ggten2016

3.ティツィアーノとヴェネツィア派展(東京)

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2017年の東京都美術館の企画展第1弾は、ヴェネツィア・ルネサンスの第一人者、巨匠ティツィアーノを中心に、ヴェネツィア派を取り上げる展覧会です。去年、国立新美術館/国立国際美術館で開催された「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展とコンセプトはほぼ同一です。

初期ヴェネツィア・ルネサンスのヴェリーニ工房作品から始まり、ハイライトであるティツィアーノ作品、そしてティツィアーノ没後のヴェネツィアを支えた巨匠たちを順番に時系列順に約70点紹介する展示が見どころ。

特に、日本初公開となるティツィアーノの作品「ダナエ」と「フローラ」は絶対に見ておきたいところです!

ティツィアーノ「ダナエ」
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(引用:Wikipediaより)

ティツィアーノ「フローラ」
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(引用:Wikipediaより)

★参考記事「ヴェネツィア・ルネサンス展」感想 

美術展開催情報
展覧会名▶ティツィアーノとヴェネツィア派展 
開催時期▶2017年1月21日 〜 4月2日 
開催場所▶東京都美術館
公式HP▶http://titian2017.jp/
Twitter▶https://twitter.com/titian2017

4.ブリューゲル「バベルの塔」展(東京)

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(展覧会チラシより)

北方ルネサンスの雄、ブリューゲルが残した傑作「バベルの塔」2枚のうち、「小バベル」が24年ぶりに来日。画面に所狭しと描かれた1400人以上の人物をじっくり見れるよう、デジタル複製画の展示も見どころです。

副題に「16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-」とあるように、没後500年で盛り上がる奇想の画家、ヒエロニムス・ボスの油彩画2点も同時来日します。

また、「プロジェクトBABEL」と題して、大規模なグッズ等の関連企画も進行中。奇想の画家たちをモチーフに、斬新なグッズがあふれるんだろうな~。楽しみ。

プロジェクトBABEL|ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL 16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―

美術展開催情報
展覧会名▶ブリューゲル「バベルの塔」展 
開催時期▶2017年2月28日 (火) 〜 5月28日 (日)
開催場所▶東京都美術館
公式HP▶http://babel2017.jp/
Twitter▶https://twitter.com/2017babel

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5.ミュシャ展(東京)

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(引用:展覧会チラシより)

毎年全国各地で開催されるミュシャ関連の展覧会ですが、2017年3月から始まる国立新美術館の「ミュシャ展」は、間違いなく2017年を代表する最重要の展覧会です。

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(引用:国立新美術館HPより)

1点が6m✕8mという、ミュシャの代表作にして巨大な油彩画「スラブ叙事詩」20作全点が一挙に来日決定!国立新美術館のゆったりとしたスペースの中で、心ゆくまで何度でも味わいたいところですね。

美術展開催情報
展覧会名▶ミュシャ展
開催時期▶2017年3月8日〜6月5日 
開催場所▶国立新美術館 
公式HP▶http://www.mucha2017.jp/
Twitter▶https://twitter.com/NACT_PR

6.シャセリオー展(東京)

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(引用:国立西洋美術館HPより)

「シャセリオー、誰それ?」っていうくらい、コアな美術ファンにもあまり知られていない、19世紀中盤に活躍し、37歳で夭逝したフランスロマン派の画家、シャセリオーを特集した意欲的な展示。2015年「グエルチーノ展」みたいに、大規模展覧会をきっかけとして、日本のアートファンにシャセリオーが「見つかる」きっかけになるでしょうか?

マイナーな存在ですが、腕は確か。師匠、アングルから「この子は将来フランス絵画のナポレオンになる!」とお墨付きをもらうくらい上手で、しかもわかりやすい作風だから、初心者でも安心して楽しめそうですよ。

美術展開催情報
展覧会名▶シャセリオー展
開催時期▶2017年2月28日 〜 5月28日 
開催場所▶国立西洋美術館
公式HP▶http://www.tbs.co.jp/chasseriau-ten/
Twitter▶https://twitter.com/chasseriau2017

7.大エルミタージュ美術館展(東京・名古屋・神戸)

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<大エルミタージュ美術館展 公式動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

2006年、2012年に続いて、定期的に開催されているロシアの「エルミタージュ美術館」展の最新版です。300万点以上の収蔵品を所蔵し、世界三大美術館の一つとされる「エルミタージュ美術館」の常設展示から選りすぐった、”オールドマスター”達の作品約80点を展示します。

ティツィアーノ、ブリューゲル、レンブラント、ルーベンス、クラーナハなど、ルネサンス期以降の様々な西洋絵画が楽しめます。東京だけでなく、中部・関西にも巡回するのが嬉しい所。

美術展開催情報
展覧会名▶大エルミタージュ美術館展 
開催時期▶
  東京:2017年3月18日~6月18日 
 名古屋:2017年7月1日~9月18日 
  神戸:2017年10月3日〜2018年1月14日 
開催場所▶森アーツセンターギャラリー(東京)、愛知県美術館(名古屋)、兵庫県立美術館(神戸)
公式HP▶http://hermitage2017.jp/
Twitter▶https://twitter.com/Dai_hermitage

8.アルチンボルド展(東京)

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16世紀後半に、ウィーンやプラハで活躍した知性と意外性の宮廷画家、アルチンボルドの作品を徹底的に掘り下げる展覧会。野菜や花、植物などで肖像画を描いたアルチンボルドは、一般的に「だまし絵」的なアプローチで幅広い認知がありますが、そんな彼の代表作、ルーブル美術館収蔵の「春」「夏」「秋」「冬」の一挙展示が最大の見どころになりそう。

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(引用:Wikipediaより)

具体的な内容はまだ公式HPにアップされていませんが、とにかく楽しそうな展覧会なので、期待しています!

美術展開催情報
展覧会名▶アルチンボルド展 
開催時期▶2017年6月20日 〜9月24日 
開催場所▶国立西洋美術館
公式HP▶http://arcimboldo2017.jp/
Twitter▶未定(オープン次第更新します)

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9.アドルフ・ヴェルフリ展(神戸・名古屋・東京)

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世界的に再評価が進む、特定の流派や流行に沿わず、独自の芸術世界を表現した「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」の代表格であるアドルフ・ヴェルフリ。2017年、日本で初めてとなる彼の総合回顧展が3箇所で開催されることになりました。

「聖アドルフ=王座=アルニカ」
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(引用:展覧会|特別展|名古屋市美術館

30代以降、亡くなるまでずっと精神病院で過ごしたヴェルフリが独自の感性で描いた作品群は、ユニークそのもの。入院中、時には鉛筆や日用品との物々交換のために大量に作品を描いたという逸話も面白いですし(Wikipediaより)、今回まとまって、そのやりすぎなまでに緻密に作り込まれた作品群を見るのが楽しみです。

美術展開催情報
展覧会名▶アドルフ・ヴェルフリ展
開催時期▶
  神戸:2017年1月11日 〜2月26日 
 名古屋:2017年3月7日 〜4月16日
  東京:2017年4月29日~6月18日
開催場所▶兵庫県立美術館(神戸)、名古屋市美術館(名古屋)、東京ステーションギャラリー(東京) 
公式HP▶http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1701/index.html
Twitter▶特になし(各美術館の公式Twitter参照)

10.ディズニー・アート展(東京)

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厳密には「西洋美術」じゃないんですが、まぁわかりやすさではダントツだろう、ということで取り上げてみました。約90年に及ぶディズニーのアニメーションについて大特集する原画展で、ミッキーマウスからアナ雪、ベイマックス、そして最新作「モアナと伝説の海」まで、日本初公開となる原画・アニメ・資料集を大展示する展覧会です。

<ディズニー・アート展公式動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

グッズやタイアップイベントにも要注目ですね。すでに全世界でヒット中のディズニーの最新作「モアナと伝説の海」が日本でも3月に公開となり、GWや夏休みは大混雑必至の人気展になりそうです。

美術展開催情報
展覧会名▶ディズニー・アート展
開催時期▶2017年4月8日〜9月24日 
開催場所▶日本科学未来館
公式HP▶http://da2017.jp/
Twitter▶https://twitter.com/d_art2017

11.ランス美術館展(広島・東京・山口・名古屋)

2016年の静岡展から始まり、広島、東京、山口、名古屋と全国をくまなく回り、ランス美術館収蔵の名品群をまとめて見れる展覧会です。

フランス絵画が西洋美術史の中で最前線に躍り出たバロック期以降、ロココ、新古典主義、ロマン主義、バルビゾン派、印象派、ポスト印象派あたりまでの名画をまんべんなく特集した展示。見るだけで、18世紀以降の西洋美術史を振り返れてしまいますね。

割と地味ですが、来ている作品は見逃せない佳作揃いです。

ダヴィッド(かその工房)「マラーの死」
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ピサロ「オペラ座通り テアトル・フランセ広場」f:id:hisatsugu79:20161225185005j:plain

美術展開催情報
展覧会名▶ランス美術館展 
開催時期▶
  広島:2017年2月11日 〜3月26日
  東京:2017年4月22日 〜6月25日
  山口:2017年7月6日 〜8月27日
 名古屋:2017年10月7日~12月3日
開催場所▶ひろしま美術館(広島)、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(東京)、山口県立美術家(山口)、名古屋市美術館(名古屋) 
公式HP▶特になし(各美術館のHP参照)
Twitter▶特になし(各美術館の公式Twitter参照)

12.ベルギー奇想の系譜展(宇都宮、東京)

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(引用:宇都宮美術館HPより)

4月から開催される「バベルの塔」展では、ネーデルラント出身のヒエロニムス・ボスやブリューゲルなど幻想的なテーマの作品群が紹介されます。こちらの巡回展も、ベルギーやその周辺地域で活躍した中世~ルネサンス期の画家から、宇都宮美術館が所蔵するマグリットなどの現代アート作家まで、ユニークな画題・作風で名を知られた「奇想の」画家たちを取り上げます。

詳細はまだ明らかにされていませんが、2016年にベルギー・日本国交150周年を迎えてから、ポール・デルヴォー、ピエール・アレシンスキーなどベルギー関連の展示が増えてきていますね。楽しみな展覧会です。

美術展開催情報
展覧会名▶ベルギー奇想の系譜展
開催時期▶
 宇都宮:2017年3月19日〜5月7日
  東京:2017年7月15日~9月24日 
開催場所▶宇都宮美術館、Bunkamuraザ・ミュージアム
公式HP▶http://u-moa.jp/index.html
Twitter▶特になし

13.オルセーのナビ派展(東京)

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(引用:三菱一号館美術館HPより)

20世紀美術と印象派をつなぐ「ミッシング・リンク」として、長年あまり注目されなかった19世紀終盤~20世紀初頭に活動した「ナビ派」を取り上げます。ゴーギャンに影響を受けた若い芸術家たちが目指した、平面で革新的な絵画技法やその背景思想を、オルセー美術館のナビ派作品群で振り返る展覧会。

ちょうど、「ゴッホとゴーギャン展」で、ゴーギャンの画業について学んだアートファンが「次」見るべき展覧会として、ぴったりの時期に開催されます。個人的な印象ですが、ナビ派は、見れば見るほど味わい深い、「スルメ」的な作品が多いんですよね。

ヴァロットン「ボール」f:id:hisatsugu79:20161225174214j:plain

ゴーギャン「黄色いキリストのある自画像」f:id:hisatsugu79:20161225174223j:plain

初心者でもちゃんとついていけるよう、まだ「具象絵画」の領域ですし、後世の金現代美術につながっていった過渡期の芸術家達をまとめてチェックできる貴重な機会だと思います。個人的に、ものすごく楽しみにしています! 

美術展開催情報
展覧会名▶オルセーのナビ派展:美の預言者たち
開催時期▶2017年2月4日 〜5月21日 
開催場所▶三菱一号館美術館
公式HP▶http://mimt.jp/nabis/
Twitter▶https://twitter.com/ichigokan_PR

14.ジャコメッティ展(東京)

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(引用:箱根彫刻の森美術館より/「腕のない細い女」)

国立新美術館で開催されるジャコメッティ展。まだ何も情報が出てきていませんが、彫刻や絵画、素描などが並ぶんでしょうか・・・。これも「西洋美術」というより、「20世紀アート」の巨匠という感じですが、一度見たら忘れられない「縦に引き伸ばした人間や動物たちの」作品群は、今回是非まとまってみておきたいところ。

どんな作品が出てくるのか楽しみですが、一つ言えるのは、天井の高い国立新美術館なので、どんな縦長の作品が来てもちゃんと収容・展示してくれることでしょう!

美術展開催情報
展覧会名▶ジャコメッティ展
開催時期▶2017年6月14日 〜 9月4日 
開催場所▶国立新美術館 
公式HP▶未定(オープン次第更新します)
Twitter▶https://twitter.com/giacometti2017

15.ルノワール展(仙台)

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(引用:宮城県美術館HPより)

モネと並び、日本で一番企画展の開催頻度も高いルノワールですが、2017年上半期は、宮城県美術館で開催される「ルノワール展」が一番レベルも高く見ごたえがありそう。

『第1回印象派展』出品の代表作「バレリーナ」(上記チラシ画像)を皮切りに、ルノワールの画業の変遷がわかるように、まんべんなく初期から後期までの作品群を海外から取り寄せて展示しています。個人的には、春スキーなどで東北旅行に行った時に、必ず立ち寄ろうと思っています。楽しみ。

美術展開催情報
展覧会名▶ルノワール展
開催時期▶2017年2月28日 (火) 〜 5月28日 (日)
開催場所▶宮城県美術館 
公式HP▶http://www.tbc-sendai.co.jp/tc_event/special/renoir2017/index.html
Twitter▶https://twitter.com/miyagi_bijutu

16.夢の美術館展(長崎)

九州で、同時期にリニューアル工事を実施中のため休館する北九州市立美術館と福岡市美術館。両館のリニューアル工事中、この2館の保有するコレクションの美味しいところを借りて、各地美術館で展示する「夢の美術館展」企画。ラストは、長崎へと巡回します。

モネ「睡蓮」
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ダリ「ポルト・リガトの聖母」
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モネの「睡蓮」、ダリの大作「ポルト・リガトの聖母」、そして、草間彌生「南瓜(かぼちゃ)」など、西洋絵画から現代美術まで、幅広い時代を押さえた名作たちを見れるチャンスです。九州方面在住のアートファンは必見の美術展ですね。

美術展開催情報
展覧会名▶夢の美術館~めぐりあう名画たち~ 
開催時期▶2017年2月23日 〜4月2日 
開催場所▶長崎県美術館 
公式HP▶http://www.nagasaki-museum.jp/exhibition/archives/445
Twitter▶https://twitter.com/nagasaki_museum

まとめ

こうしてまとめてみると、本当にたくさん良さそうな展覧会があるものですね。この他にもまだ、日本画や工芸、現代アートなども含めると、本当に日本は美術展が充実しているんだなと改めて実感させられます。

みなさんも、気に入った美術展があったら、是非チェックしてみてくださいね。
それではまた。
かるび

2017年の展覧会「予習」に役に立つ書籍たち!

日経おとなののOFF 2017年1月号

毎年欠かさずこの時期に次年度の美術展を特集してくれる「日経おとなのOFF」。別冊の美術展スケジュールカレンダーや、付録のクリアファイルも重宝します。題名どおり、「絶対に見逃せない美術展」を厳選した特集ページや、恒例となった山下裕二教授と山田五郎のマニアックな美術展対談も楽しいです。お勧め。

美術展完全ガイド「美術展2017」

いろいろなテーマでまとめ本的なムックを製作する「晋遊舎」から、2017年の美術展まとめ本が出ていました。こちらも購入してみました。「日経大人のOFF」よりも、よりマニアックな視点で、マイナーな展覧会や地方開催の一押し企画展なども拾い上げて特集しています。日経おとなのOFFと併読して、予習に役立ちました。これもおすすめ。

【書評】箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ ちょっと切なくてあたたまる小話が詰まってました

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【2016年12月28日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

毎年、箱根駅伝の直前期になると、テレビの特集やネットニュースなどで沢山の記事をみかけますよね。そして、各社から出場大学の戦力分析本や監督本の出版も相次いでいます。

ふふっ、今年もまた出てるな~と思いつつ、結局はAmazonで1click予約してしまうのですが、今日はそんな箱根駅伝についての1冊を紹介したいと思います。

まずは本の紹介から

著者の生島淳氏はベテラン箱根ウォッチャー

生島淳氏は、ベテランのスポーツライターで、様々なジャンルのルポやドキュメンタリー本を出版しています。例えば、野球、ラグビー、フィギュアスケート、卓球など。陸上にも造詣が深く、トラック、駅伝、マラソンを問わず、陸上長距離には熱い思いを持っている方のようです。

箱根駅伝だけでも毎年のように著書を上梓していますね。長距離陸上ファンの僕もこの中の大半は読了済みです。特に、彼の本でおすすめなのは、こちら。

日本のマラソンが世界で戦えなくなって行った反面、日本のローカル競技にすぎない箱根駅伝に代表されるである駅伝が隆盛を極める昨今、なんとなく陸上関係者の中で語られていたことを、バシっと言い切ってしまった問題作。

出版当初は賛否両論ありましたが、最近の流れとしては、彼の著者を踏まえた上で、箱根駅伝がなかったらもっと弱体化していたんじゃないの?みたいな話が優勢になってきていると思います。ちょっと古い本ですが、生島氏の駅伝の中では、この本がまずおすすめ。

すでに3年半前の著作ですが、箱根駅伝の各校を分析する中で、いちはやく青山学院大学の躍進を言い当てていた慧眼はさすがでした。この本が出版された翌年、第5位へと躍進し、2015年、2016年と連覇を果たしました。彼の正確な取材に裏打ちされた予測が見事に的中したのでした。

箱根駅伝に関しては、長年にわたって取材を積み重ねてきているだけあり、近年の各著作からは、各校の監督や選手ともかなりコミュニケーションが取れている様子がわかります。

箱根駅伝本は毎年11月頃から集中的に出版される

去年も2冊程出てましたし、生島淳氏も箱根駅伝 勝利の名言 監督と選手34人、50の言葉 (講談社+α文庫)を出版してました。(もちろん買った笑)この手の箱根駅伝取材本やエピソード本などは、どうしても、売れ行きなどを考えると11月とか12月に出版されることが多いみたいですね。

監督取材を中心に2015年時点の最新エピソードが入っている

緊急書下し、ということで、少なくとも2015年秋口ギリギリまでの最新状況を前提に書き下ろされています。

この本は、各学校のスタープレーヤーや監督、そして生島氏のお気に入りのバイ・プレーヤーたちがそれぞれの箱根駅伝に賭けた思いやこだわり、物語を短編に凝縮して読みやすくまとめてられています。

ゆえに、1つ1つのエピソードはサラッと読めてしまい、読後感はさわやかで、でもどこか切ない気分にさせてくれます。文庫本220ページと短い本なので、僕は約2時間くらいで一気に読み終えました。通勤の行き帰りや寝る前などのスキマ時間に1個ずつのエピソードを読み終えていっても良いと思います。

特に気に入ったのは青学大の高橋宗司のストーリー

エピソード4「横に曲がった人もいる」で取り上げられていた、2014年度の箱根駅伝で初優勝した青山学院大学で、復路8区を走った高橋宗司。見事区間賞に輝く快走で、本当に楽しそうに走っていた姿がすごく印象的で目に焼き付いていました。

読み進めていくと、その高橋のエピソードが。高校時代自ら青学の原監督に自費で東京まで出ていき売り込んだ話や、のびのびと青学のカラーにはまり、4年間を楽しんで陸上に打ち込んだ姿がいきいきと描写されていました。

正直なところ、監督系の美談はやや食傷気味でした。だから、こういったバイ・プレーヤーの頑張りに陽を当てるサイドストーリーはオリジナリティがあり、味わい深くて好きです。

ちなみに、高橋は卒業後は実業団には進まず、飲料メーカーの営業職として、また市民ランナーとして陸上も頑張っているようですね。

まとめ

ということで、箱根駅伝ファンなら押さえて損のない本です。というか、必読で予習すべきかと(笑)2015年時点での最新エピソードがコンパクトに収められた本書は、ぜひ箱根駅伝の直前にさらっておくのがいいと思います。おすすめです。

それではまた。
かるび

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かるび(@karub_imalive)です。

さて、今年も箱根駅伝の季節がやってきました!毎年、実家でゴロっとしながらダラダラみつつ、4日以降は往路・復路ともに自宅で録画した映像をえんえんと1月末頃まで復習する毎日です。

でも、僕にとって一番面白いのは、駅伝本番が始まる前の順位予想やオーダー予想なんですよね。誰が何区を走って、区間賞は誰が取るのか、往路はどこが優勝するのか?そのあたりを考える時間が実に楽しいです。また、12月になると、毎年箱根駅伝に関する様々な関連書籍も一斉に各社からリリースされますので、これを一通りチェックするのもマニアとしてはまたたまらない作業なのです。

このエントリでは、箱根駅伝をより楽しむための関連書籍について、「読む箱根駅伝」というコンセプトで、今年リリースされたものを中心に、僕のおすすめを紹介していきたいと思います。

それでは早速行ってみましょう。

1.駅伝監督本

箱根駅伝では、毎年のように11月末頃から、有力大学の監督が「監督本」をリリースします。マニアとしては、これをチェックするのが非常に楽しいのです。その学校の監督じゃないと知り得ない現役・OB選手の素顔や、選手の育成方法、チームの指導法などが満載ですから。

ここでは、特に僕が読んで面白かったな、と思った監督本を紹介したいと思います。

1-1.「勝ち続ける理由」原晋@青山学院大学

昨年度は、出雲・箱根を制し、今年もここまで出雲・全日本を連勝して3冠に王手を掛けた青山学院大学。マスコミ向けの露出が増え、さらにビッグマウスが冴え渡る原監督ですが、本業を決して疎かにせず、さらにその指導の方法論に磨きを掛けていることがよくわかる一冊。2015年~2016年に青学がどう動き、何を強化してきたかもかなり詳細に書かれており、まさに勝者の余裕を感じさせる本でした。

別エントリでもレビューしていますので、もし良ければこちらもご覧ください。

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1-2.「駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか」大八木弘明@駒澤大学

駒沢大学といえば、監督車から聞こえてくる強烈な「だみ声のハッパ」が箱根駅伝の風物詩となった、有名な大八木弘明監督。しかし、この本を読み解くと、そのマイルドヤンキーで強面の風貌とは裏腹に、選手に寄り添い、住み込みで緻密で的確な指導を継続していることがよくわかります。長年、結果を残し続けている大八木監督の「原点」がわかる本です。

1-3.「その1秒をけずりだせ」酒井俊幸@東洋大学

部員の起こした不祥事の責任を取って急遽退任した前任の川嶋監督の後を引き継いで、すぐに箱根で結果を出した酒井監督。山の神・柏原竜二~設楽兄弟で箱根駅伝を席捲した黄金時代に出版されました。現役時代は三流選手だった酒井監督が、基本を大切にした丁寧な指導と大胆な抜擢で東洋大を常勝軍団に育て上げた手腕がまとめられています。当時まだ無名だった口町くんのスナップ写真での幼い笑顔が素敵(笑)

1-4.「「脱管理」のチームづくり」岩本真弥@世羅高校

2007年以降、チーム指導で徹底したスポ根的指導をやめ、「脱管理」にカジを切った世羅高校の岩本監督。従来から180度変化させた、生徒の「自主性」を信じた指導方法が身を結び、2015年の高校駅伝で男女アベック優勝を果たすまでのプロセスを振り返ります。世羅高校OBである青学の原監督との対談も見どころ。

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2.ガイドブック

ここ数年、毎年のようにガイドブックが各社から出てきますが、特に今年はガイドブックが非常に充実しています。今年も、すべて目についたものだけで5冊買いましたが、中でもこれは良かったな、というガイドブック上位3誌を紹介したいと思います。

2-1.「箱根駅伝 公式ガイドブック2017」

月間陸上競技の増刊号で、箱根駅伝の公式ガイドブックという位置づけです。時期的には各大学の出走候補者エントリー16名が確定してからの掲載のため、1冊だけ購入するならこれが一番良いと思います。詳細なコースガイドも役に立ちます。ただし結構売り切れがちなので、ネット書店になければリアル書店で入手するしかないかも。

2-2.「箱根駅伝2017 完全ガイド」

陸上競技マガジンの増刊特集号。大学駅伝特集ムックを季刊ペースで出しているだけあって、各大学への取材の精度の高さと学生のキャンパス内での練習風景写真、各大学戦力分析はこのガイドが一番。ライターの分析記事も詳細で、読み応えがあります。おすすめできるガイド本。

2-3.「箱根駅伝2017 出場20校名鑑」

他の特集ムックより一回り小さいB5サイズの週刊誌版で白黒ベースですが、カタログとしての利便性に加え、名鑑以外にコラムが29本もあり、読み物としての面白さが際立ちます。500円とダントツに安いですし、複数買うなら2冊めはこれがいいかも。

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3.箱根駅伝論評本・ノンフィクション

スポーツ記者や熱心なライターが書いた箱根駅伝についての論評・分析本、ドキュメンタリーにも読み応えのある書籍が多いです。最近は主に「新書」形式が多く、忙しい社会人でもサラッと読めるものが増えてきていますね。内容は、競技のあり方の是非を問うもの、マラソン競技と絡めた分析、詳細なレース分析、駅伝選手達のエピソード、サイドストーリーを集めたドキュメンタリー、歴史本など、とにかくバラエティに富んでいます。ここでは、特にここ2~3年僕が読んだ中で、これは良かった!と思う論評・分析本を紹介したいと思います。

3-1.新・箱根駅伝

「世界に通用するマラソン選手を育てる」その大義名分の下、往路の山登り最終5区が最長区間23.2Kmになってから、過去11回中、5区で区間賞を獲った大学が7回優勝するなど、事実上「山を制する大学」が箱根駅伝を制してきました。2017年度から、5区が第81回大会までの20.8Kmになり、その分4区が18.5Kmから20.9Kmへと増えることになりました。

本書では、そのコース距離変更の影響による箱根の戦い方・見どころや、有力選手の動向などをじっくり論じています。著者、酒井政人氏は、実際に箱根駅伝経験者でもあり、個人的に一番信頼している書き手なので、出版された時速攻で購入しました。

3-2.箱根駅伝ナイン・ストーリーズ

2000年代中盤から、毎年のように箱根駅伝に関する書籍を出版してきた生島淳氏が2015年秋に出版した箱根駅伝のサイドストーリー。力の抜けた、でもちょっと切なくなるエピソードは、何度も読み返してしまいました。こちらも、過去にブログで書評を書いていますので、もし良ければご覧ください。

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3-3.駅伝がマラソンをダメにした

2016年現在、箱根駅伝は、陸上長距離選手にとっての「甲子園」みたいな存在となっています。長距離ランナーのほぼ全員が、箱根駅伝にあこがれ、箱根で走ることを陸上人生の第一目標に置きすぎることで生じる様々な弊害について問題提起した著作。割と脇の甘い論調で、タイトルの過激さから賛否両論がありましたが、箱根駅伝の是非について正面から問うた力作だと思います。やや古くなりましたが、駅伝ウォッチャーなら外せない一冊。

3-4.駅伝日本一 運命のたすきをつなげ

一介の公立高校に過ぎなかった西脇工業高校に赴任した渡辺監督が、学内で駅伝チームを立ち上げ、チームを高校駅伝で日本一に導くまでのプロセスを追った短いドキュメンタリーの書籍化。マンガみたいな展開の実話に、読んでいて胸が熱くなります。

3-5.第93回箱根駅伝~熱き戦いの軌跡~6強と青山学院包囲網!

箱根駅伝のファンで、毎年Kindleで本を出版するほどマニアックに分析し、箱根を語り尽くすのが好きな堤智樹氏。区間別のコース紹介と、大学別の分析、当日の予想オーダーまで、コンパクトにまとめられています。Kindle Unlimited加入者は、無料で読めますよ!

4.箱根駅伝についての小説

箱根駅伝人気が高まるにつれて、ノンフィクションだけでなく、小説でも優れたものが沢山出版されるようになりました。小説は大学だけでなく、中学や高校モノもかなり多いですね。

4-1.「冬の喝采」/黒木亮

大学2年から駅伝競技を始め、箱根駅伝を早稲田の名物監督、中村清監督の下で、世界の瀬古と一緒に走った著者が、ランニングに明け暮れた大学時代を自伝的に綴る長編小説。スポ根はマンガだけの世界ではなく、リアルにあったんですねぇ!世界の瀬古を鍛え上げた鬼監督の罵声や奇人ぶりも見どころ(笑)駅伝競技中の臨場感や、主人公の心理表現は、競技経験者ならではの鬼気迫るものがあります。Kindle Unlimited加入者は上巻が無料で読めます。

4-2.「チーム」/堂場瞬一

箱根駅伝で毎年予選落ちしたチームからの選抜メンバーを集めた「学連選抜」チームに着目して描かれた小説。予選会から本番までの「学連選抜」チームに関わる人達の心境と、最初完全にバラバラだった個人個人が、監督の指導の下、次第にチームとしてまとまっていくプロセスが見どころの傑作です!

4-3.「駅伝激走宇宙人」/つるみ犬丸

「山中鹿介」という戦国武将のような名前の宇宙人が幼馴染の駅伝チームに助っ人として参加するぶっ飛んだ設定は、青春小説なのかSFなのかよくわからないジャンル。でも、特殊能力もチートもハーレムもなくて、純粋に高校生が駅伝競技で切磋琢磨する姿を描いた地に足のついた展開は、以外にも駅伝ファンの心をつかむ良作でした。

4-4.「あと少し、もう少し」/瀬尾まいこ

2017年に「僕らのごはんは未来で待ってる」で映画化も決定している瀬尾まいこが描く、中学生の駅伝青春ストーリー。メンバー集めから始まり、力を合わせて地区大会突破を目指すところまでを、キャラの個性豊かに瀬尾まいこが描きました。これも映像化に向いた作品かも。

4-5.「駅伝ランナー」/佐藤いつ子

駅伝好きの父親から半強制的(?)に駅伝競技に巻き込まれ、やがて駅伝の魅力に引き込まれ、箱根を目標にして成長していく主人公の走哉を中心に、小中学生の揺れやすい心情を描いた傑作。現在、3作目まで継続している人気シリーズ。おすすめ!

4-6.「陸王」/池井戸潤

行田の地下足袋を手がける中小企業が、新規事業としてランニングシューズを作りに乗り出す物語。大手からの嫌がらせや経営危機を機転と工夫で乗り越え、足の故障に悩む元箱根駅伝ランナーと開発を進めて、プロジェクトを成功させる、池井戸節が冴え渡る勧善懲悪もの。「下町ロケット」ランニングシューズ版です。おすすめ!

5.箱根駅伝マンガ

5-1.「ハコネのネコハ」

高校時代、箱根駅伝に魅せられた太一が、扁平足を治して晴れて、あこがれの葉山先輩が活躍する城海大学駅伝部へ「一般組」として入部し、箱根駅伝本戦出場を目指す青春ストーリー。実力差を埋めようと、オーバーワークでたびたびダウンする太一。なかなか浮上のきっかけをつかめない中、「扁平足」の治療の副産物として、人と違う太一の筋肉の付き方が意外な活路につながっていきます・・・。

5-2.「TRUST!」

前作「マラソンマン」で好評だった井上氏が描いた駅伝モノマンガ。長距離ランナーの両親から受け継いだ才能はあるが、その一方で病気で思うように走れない主人公、颯の駅伝青春ストーリー。惜しくも打ち切りとなりましたが、熱いストーリーでした。

5-3.「かなたかける」

自身も箱根ランナーだった高橋しん氏の最新作。都会からの転校生桜庭かなたが、仲間とともに駅伝を目指すストーリー。年内で小学生編が終了し、今後大学まで続いていく大河的な長編になりそうです。

5-4.「風が強く吹いている」

三浦しをん氏の原作小説をマンガ化した作品。膝の故障でくすぶっていた灰二が、天才ランナー、カケルと出会い、本格的に箱根駅伝を目指すストーリー。作画レベルも高く、マンガならではの表現力で、作品の魅力を引き出しています。映画化もされて、話題になりましたね。只今絶版になっており、せめて電子書籍化してほしいところです・・・

5-5.「奈緒子」

波切島の野生児、壱岐雄介と、東京から引っ越してきた篠宮奈緒子を中心とした、陸上ものヒューマンドラマ。短距離から始まり、駅伝、マラソンとオールラウンドに超人的な活躍を見せる壱岐雄介の現実離れしたバケモノぶりは思わず笑ってしまいますが、(マラソンを2時間2分で走るとか!?)長く続いただけあって、話はやや重いですが、このジャンルでは一番のデキだと思います。こちらも、電子書籍化が待たれるところ。

5-6.「サブテン」

試合でのケガで投げられなくなった失意の野球少年が、新たに高校駅伝で全国出場を目指して頑張る青春ストーリー。テンポも作画も良かったのに、2巻で打ち切りとなってしまう残念な展開ですが、個人的には楽しめた作品でした。電子書籍でサクッと2巻完結で読めるおすすめ作品。

まとめ

毎年12月になったら、なんだかんだで駅伝関係の書籍を大量に買っていたら、いつのまにかマンガ、小説、新書と、かなりたまってきました。今まで読んだ中で、個人的にこれは良かったな、と思った箱根駅伝関連書籍をまとめておすすめとして紹介しましたが、興味を持てそうなものがあれば、是非手にとって見てくださいね。
それではまた。
かるび 

こんな記事も書いてます

「ポーラ美術館新春ギャラリートーク駅伝」バスツアー(2017/1/8)が良さそうなので申し込んでみた!

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かるび(@karub_imalive)です。

いつも年始は、仕事始め明けの3連休に箱根に行くようにしています。年末年始の遊び疲れから、この3連休はどこの行楽地に行っても3連休とは思えないほど空いていることが多いからです。

2017年はどうしようかな~と思っていたら、強羅のポーラ美術館でこんな企画が。

毎年恒例の「ギャラリートーク駅伝」を、今年も開催します!
企画展「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ―境界線への視線」と常設展示の中から、ルソー、ピカソ、モネなど代表的な作家の作品について展示室で解説します。10:00から16:00まで(12:30-13:30を除く)を10区に分け、全6名の学芸員がタスキをつなぎながら美術館全体をめぐります。お好きなテーマを選んで参加してみたり、全区間制覇に挑んでみたり…、楽しみ方はそれぞれです。来年のお正月は、ぜひポーラ美術館のギャラリートーク駅伝で快走しましょう!

正月早々、ポーラ美術館で現在展示されている企画展「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ―境界線への視線」他5つの展示をめぐり、入れ代わり立ち代わり学芸員さんたちが1日中ギャラリートークをしてくれるらしい(笑)タイムテーブルは、こんな感じです。

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箱根駅伝マニアの自分としては、思わず笑ってしまったのですが、なんとこの企画、初めてじゃなくて、今年すでに5回目だというのが凄い。

さて、どうやって行こうかな~と考えていたら、なんとこの日に限って、渋谷発でツアーバスまで出ているらしいです。いつも貴重な情報源&美術展のブロガー内覧会などでお世話になっている「青い日記帳」のTakさんとポーラ美術館が、この日に合わせて見学ツアーバスを出す企画をやっていました。

★「ポーラ美術館新春ギャラリートーク駅伝」バスツアー
http://peatix.com/event/218171

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アートブロガー「青い日記帳」Takさんと行く「ポーラ美術館新春ギャラリートーク駅伝」バスツアー | Peatix

値段を見ると、渋谷からの往復バス+入館料で6,000円と、なかなかリーズナブルな感じです。東京から往復すると入館料含め、8,000円~10,000円は飛んで行くので、これにエントリーさせていただくことにしました。車内でビールを頂きながら、着いたらアート三昧とは正月からめでたい!

当日見れる展示について

ちなみに、当日行って、見れる展覧会はポーラ美術館で開催中の以下の6展です。

1.ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ

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http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160910s01/

アンリ・ルソー、藤田嗣治、アジェの3人を特集し、彼らが表現した絵画・写真の中のパリの街並みを見ていくことで、近代都市の中の美意識を見出そうとする企画展だそうです。

2.ルノワールと色彩の画家たち

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https://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160907c01/

ポーラ美術館が保有する安定の印象派コレクション。マティスやデュフィなど、印象派から影響を受けた近代画家の作品も合わせて展示されているようです。

3.ドーム兄弟の世界

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http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160907c03

アール・ヌーボーのガラス工芸では、ガレと双璧をなす世界的に有名なドーム兄弟の作品について、ポーラ美術館の保有するコレクションを一気に見れる展示です。

4.日本の洋画―明治から大正、昭和へ

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https://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160907c01/

ポーラ美術館の保有する、明治~大正、昭和期に至る洋画家を中心としたコレクション。黒田清輝の「野辺」は要チェックかも。

5.シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に

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http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160907c04

トルクメニスタンの服飾、装飾品を中心に、シルクロードの生活文化をじっくり見れる展示です。

6.美術をじっくり楽しむプロジェクト 「07 ちかづく」

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http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20160909c01/

じっくりとアートの鑑賞の仕方について、ポーラ美術館がより楽しめるための提案を行う企画です。

一押し展示はどれなのか?Takさんに聞いてみた

ところで、どれがこの中で一押しですか?と主催者のTakさんにお聞きした所、常設展示では、「シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に」と題されたコレクション展がなかなか面白いんじゃないかってことでした。

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ポーラ美術館は、調度品や装身具など、身の回りの生活用品のヴィンテージ・コレクションを多く所蔵していると聞きましたが、トルクメニスタン周辺に住む遊牧の民(トルクメン人)の精緻で美麗な装身具コレクションの展示「シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に」はポーラでしか見れない貴重な企画だそうです。

今年は、「ブータン展」「黄金のアフガニスタン展」など、アジア系の服飾や宝飾、調度品などの展示もいくつか見ましたが、このトルクメニスタンの展示も面白そう。

詳しくは、Takさんの「Gooいまトピ」での記事が参考になります。

そう言えば今まで読んだことがなかったのですが、森薫が現在連載中で、シルクロードの遊牧民達の生活や文化を描いた人気マンガ「乙嫁語り」は、トルクメニスタン人をモデルにしているのだとか。

「乙嫁語り」のファンの人にも、ポーラ美術館の企画展「シルクロードのよそおい―トルクメンの装身具を中心に」はいいかもしれませんね。(僕もこの正月、読んでみたいと思います・・・)

まとめ

ということで、来年1月8日は、初めての体験になりますが、バスツアーで1日箱根のポーラ美術館に行ってくることにしました。終わったら、また感想レポートを書きたいと思います。

申込みは、1月3日まで。こちらのページから、申し込みできるようです。

(※ブログの文面、見直したらかなり売り込んでいるようなトーンになってますが、ポーラ美術館からお金をもらっているわけではありませんのでご安心を/笑)もしご一緒できる人は、当日よろしくお願いいたします!

それではまた。
かるび

【ネタバレ有】動員大苦戦?映画「土竜の唄 香港狂騒曲」の感想とあらすじの徹底解説!/生田斗真が孤軍奮闘するもやや期待ハズレだった

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かるび(@karub_imalive)です。

お正月映画として封切りされた、生田斗真の主演映画「土竜の唄 香港狂騒曲」を見てきました。早速初日に気合を入れてみてきましたので、以下感想やあらすじを書いてみたいと思います。

※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

<土竜の唄 予告動画を見る>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】三池崇史(「土竜の唄潜入捜査官REIJI」「テラフォーマーズ」)
【脚本】宮藤官九郎
【原作】高橋のぼる「土竜の唄

監督は、多作多産の三池崇史監督。2016年、「テラフォーマーズ」実写版で大コケしましたが、とにかくオファーがあった映画はガンガン引き受ける姿勢はある意味プロ意識を感じます。2017年度も、木村拓哉主演「無限の住人」、「ジョジョ」など、マンガ原作モノが続きますね。一抹の不安はありますが、期待しています(笑)

2.主要登場人物とキャスト

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キャスト陣は、前作からの継続出演組を含め、かなり豪華に有名どころを起用。キャストにかかる費用がかさばったので、香港現地ロケがなかったのでしょうか・・・

菊川 玲二(生田斗真)
広域暴力団「数寄矢会」へモグラとして潜入捜査中。数寄矢会のドン、轟周宝の決定的な麻薬取引の証拠を掴み、現行犯逮捕することが最終目標。 
兜真矢(瑛太) 
新たに警視庁組織犯罪対策本部に配属されてきた若手エリート課長。父は捜査中に殉職するなど、暗い過去も持つ。 
轟迦蓮(本田翼) 
轟周宝の一人娘。目に入れても痛くないほどの可愛がりよう。今回のヒロイン役。
古田新太(桜罵百治)
モモンガ一家のボス。「イシシシシ」という笑い方が非常に個性的で良かった。
胡蜂(菜々緒)
本映画中で何度も何度も執拗に玲二に絡んでくるチャイニーズマフィアの女暗殺者。
黒川剣太(上地雄輔)
「クロケン」は、今回黒子的な動きをしています。 
若木純奈(仲里依紗)
ほぼ忘れられた玲二の彼女。 
日浦匡也(堤真一)
玲二の義兄弟にして、数寄矢会直参日浦組の組長。前向きでエネルギッシュな性格。
酒見路夫(
吹越満)
赤桐一美(遠藤憲一) 
福澄独歩(皆川猿時) 
警察側で、モグラである玲二と水面下で情報交換を続ける3人組。遠藤憲一は「妖怪ウォッチ」のじんめん犬など、最近変な役が多いですね・・・。
轟周宝(岩城滉一)
広域指定暴力団、数寄矢会の会長。

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3.結末までの詳細なあらすじ(※ネタバレ有注意)

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 広域暴力団組織、数寄矢会トップの轟周宝を現行犯逮捕するため、潜入捜査官、通称「モグラ」としてその下部組織、阿湖義組へと潜り込み、捜査を続行中の菊川 玲二。義兄弟の盃を交わした、クレイジーパピヨンこと日浦 匡也と行動をともにし、頭角をあらわすと、轟周宝の命で関西の有力暴力団、蜂ノ巣会との抗争にケリをつける重要な働きをした。

抗争終了後、日浦は蜂の巣会のドン、鰐淵 拓馬と五分の兄弟盃を交わす約束をし、その結果に不満を持つ残党狩りにもメドがついたところだ。

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東京へ帰ると、日浦と玲二は数寄矢会の四天王と轟周宝の前で、鰐淵との兄弟盃と、轟周宝直参として、日浦組立ち上げを願い出る。日浦の露骨な野心に警戒した四天王が反対する中、轟周宝は、OKを出す。

日浦組の直参としての初仕事は、非常に重たいものであった。急速に力を伸ばしてきているチャイニーズ・マフィア「仙骨竜」の殲滅である。また、日浦の裏切りへの保険として、日浦組若頭の玲二は、轟周宝のボディーガードを務めることになった。

日浦組立ち上げとなった初日。組員に訓示をする日浦をよそに、玲二は酒見・赤胴・福澄ら、玲二がモグラになって以来、ひそかに情報交換を続けている警察のメンバーのところに連れて行かれた。

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近頃、警視庁組織犯罪対策部の新任課長として、「清廉潔白」をモットーに、警察組織内の不正取締に力を入れる、兜真矢が赴任してきた。元警察官で、現在暴力団関連事件で全国指名手配中となっている玲二を特にマークしているという。

いつもの通り、箸にも棒にもかからないやりとりを終えると、翌日、玲二は約束通り、ボディーガードとして轟周宝の自宅へ赴いた。中に入り、轟周宝夫人に裸にされておもちゃにされていた最悪のタイミングで、轟周宝とその娘、迦蓮が帰宅してきた。

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その晩、早速迦蓮のボディガードとして外出に引き回された。運転中、突如迦蓮から「初めての男」になってくれ、と言われ、動揺する玲二。結局、煮え切らないまま断った玲二は、迦蓮を怒らせてしまい、車から放り出されてしまった。

一方、日浦はチャイニーズマフィア「仙骨竜」の台頭には、過去に数寄矢会を破門になったはぐれヤクザが手引としてバックにいると踏み、中でも桜罵百治、通称モモンガが怪しいと感じていた。

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そんな中、怒って玲二を車外へ放り出し、一人でいた迦蓮を、仙骨竜が急襲し、誘拐する。轟周宝に報告し、指をツメようとした玲二だったが、周宝からは指ツメよりもどうするか考えろ」と一喝される。

しかし、仙骨竜の魔の手は周宝のすぐ側にも及んでいた。周宝がトイレに立った一瞬、店内スタッフを装った女性ヒットマン、胡蜂がワイヤーで周宝を絞め殺そうとした。宙吊りにされる周宝の元へ、かけつける玲二。玲二は、何とか周宝を助け出すも、ヒットマンは逃してしまった。

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そこへ、仙骨竜と行動をともにしていた桜罵百治から周宝に、娘を誘拐した旨の連絡が入る。日浦が睨んだ通り、仙骨竜と百治はつながっていたのだ。百治は、周宝に即時の引退と数寄矢会の解散を迫った。

しかし、日浦がその誘拐現場をみはる埠頭の広東食品第4倉庫であることを突き止め、遅れて玲二らも現場へ到着する。現場で乱戦となるが、なんとか迦蓮を救い出すことに成功した。さらに、兜率いる警察も現場に到着し、日浦・玲二は分かれて逃げることに。玲二は、迦蓮を伴い安全な場所へ移動した。

玲二に抱きつきキスする迦蓮だったが、そこへ玲二の彼女、純奈がやってくる。鉢合わせする3人。うまく説明できない玲二に再度迦蓮は愛想をつかし、通りかかったパトカーに乗り込んで去ってしまう。しかし、迦蓮が乗り込んだパトカーは先の暗殺者、胡蜂が警官を偽装して乗り込んでいた仙骨竜のものだった。玲二は懸命に迦蓮を取り戻そうとするが、逃げられてしまった。

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モグラとして潜入捜査中だった玲二は、その場に残った純奈にうまく説明できなかった。そこへ、兜率いる警察部隊が突入してくる。玲二は、肩を撃たれて海へと落ちてしまうのだった。

翌朝、玲二が気づくと、日浦とともに香港へ向かうセスナ機の中にいた。結局迦蓮は仙骨竜により香港の高級ホテルで予定されている人身売買会場へと連れ去られたため、それを追って不法入国するというのだ。ガス欠もあり、ギリギリ不時着させて香港へ潜り込むことに成功した。

玲二は傷を手当し、日浦はみはる埠頭で百治に破壊された義足をそれぞれ治し、先に入国していたクロケンと合流した。

地下の下水道から変装して人身売買会場へ入った日浦・玲二・クロケン。玲二は、女装して人身売買オークションの舞台に立つのだった。

一方、百治は、TV電話の回線をつなぎ、轟周宝へ、娘の迦蓮をオークションに出したくなければ即時引退と数寄矢会の解散を迫った。しかし周宝は、迦蓮のへその緒を口に含むと、断固として脅しに屈しない姿勢を貫いた。

そして、百治の後ろ盾は、なんと警視庁の兜だった。香港に来て、仙骨竜、桜罵百治と組んで、裏の顔として、人身売買ビジネスに手を染めていたのだ。

人身売買オークションは全部で24人+女装した玲二だった。早速活発に品定めとオークションが開始されるが、24番の札をつけた迦蓮(つまりオークションのオオトリ)もその中にいた。

オークションは進み、いよいよ迦蓮のセリが始まった。そして迦蓮の落札者が決定した瞬間、玲二が会場に乱入し、迦蓮をさらうと、会場は大混乱に陥った。

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怒った兜は、会場内で銃を乱射する。それを合図にしたかのように、仙骨竜と日浦達が大乱闘となった。会場内で再び戦う百治を日浦を残して、迦蓮を連れてビルからの脱出を図る玲二。

ビルを爆破し脱出口を開き、パラシュートを装着していたら、そこへ兜が追いすがってきた。兜と1対1で戦う玲二。かろうじて兜を打ちのめすと、そこへ、百治を倒した日裏が遅れてやってきた。日浦と迦蓮が先に脱出口から脱出する。

玲二も脱出しようとしたところ、土壇場で三たび胡蜂が来襲し、虎を玲二に放った。玲二も慌てて脱出したが、落下しながら虎に頭を噛まれてしまい、世界各国の報道番組で国際指名手配容疑者として報道されてしまうのだった・・・。

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4.感想や評価(※ネタバレ有注意)

今作は、12月24日に1回目を見ました。最初に見た時にあまりピンとこなくて、もういちど原作マンガを読み直して、5日後の12月29日に2回めを見たのですが、やはり2回めが終わった時点で、評価の甘い僕にしてはやや辛辣な感想になります。

クドカンの脱力系コメディ路線は良かったですが、原作の世界観が薄まったキャラクター設定や、間の悪さなど、作りの粗さがどうしても目立ちました。

4-1.徹頭徹尾、コメディ路線だった

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2014年に公開され、大ヒットし前作から、監督も脚本もそのままの体制だったので、おそらくカラーは変えて来ないだろうと思っていました。予想通り、前作同様、コメディ路線でした。

冒頭から、大阪上空を素っ裸でヘリコプターに吊るされて飛びつつ、ヘリコプターの到着先で待つ数寄矢会の幹部がマイムマイムをしながら捕虜の見聞を行うなど、「あぁ、これはシリアスにやる気は全くないわけね。OK、じゃあコメディ路線として楽しむか!」と切り替えました(笑)

原作でも、主人公の玲二は機転と強運でピンチの連続を乗り切るタイプで、都合よくストーリーが展開することが多いので、強引な展開はまぁ目をつぶることにしました・・・。

4-2.冗長なシーンが多く、展開が止まりがちなのが少し気になった

迦蓮と玲二の車中でのラブシーンが冗長すぎるほど長かったり、敵役との真剣な対決中に、敵が手を止め、自分語りを長々と始めるシーンなど、要所要所で不自然にストップしてしまう展開がもどかしかったです。

原作11巻分の分量を映画1本に詰め込まないといけない事情はあるにせよ、鑑賞者の想像の余地を全部奪い去るほど、ストーリーの説明をセリフに詰め込むのはちょっと安易なのでは?「妖怪ウォッチ」など、小さい子供向けの実写映画ならわかるのですが・・・。

4-3.轟周宝の悪さが伝わってこない残念さ

マンガ原作では、轟周宝は巨大なヤクザ集団に登りつめたボスらしく、厳しさと情け深さ、そして狡賢さを兼ね備えた「巨悪」としての凄みが非常に上手に表現されています。部下の手なづけ方、厳しい局面で見せる精神的な強さなど、読んでいてひしひしと感じます。

それに対して、岩城滉一扮する映画での轟周宝は、せいぜいが中小企業の叩き上げのオヤジのようで、ちっとも凄みが感じられません。原作から拾い上げたエピソードが、「へその緒」を食べるシーンだけだと、キモいオヤジで終わってしまうような。玲二が決死の思いでモグラとして活動する意味を持たせるために、轟周宝の描き込みはもう少し気を使ってほしかったです。

4-4.仙骨竜のボスが出ないのもどうなの?!

今作は、チャイニーズマフィア編ということでしたが、原作では描かれる仙骨竜のボス藍虎やその手下(とにかく凶暴!)が本作では出てきませんでした。香港まで行って、出てくるのはモモンガや兜など日本人ばかりというのも締まりがなかったかなと思いました。

現地ロケをする製作費がなく、VFXで補完するところまでは許容範囲です。それは仕方ない。でも、映画中でメインキャラに中国人が一人も出てこないのはちょっとどうでしょうか・・・。これじゃチャイニーズマフィア編というか、モモンガ編やん!とか毒づいてました。

4-5.生田斗真、孤軍奮闘

キャラ設定で、唯一前作と比較して良かったのは、生田斗真演じる主人公の玲二。決め台詞「ばっちこーい」が要所要所で決まり、前作よりさらに振り切れたようなパワフルな演技が良かった。後先考えず、ピンチには機転と根性、強運で切り抜けていく玲二らしさが非常に良く出ていました。生田斗真の演技力で、なんとか映画がかたちになったのかな?という感じです。

5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意)

5-1.なぜ百治は中国マフィアと組んだのか

映画ではきちんと説明されていませんでしたが、武器の密輸で下手を打って、「使用者責任」を問われる前に数寄矢会からトカゲのしっぽ切りで破門されてしまった百治。

マンガやノベライズ版では、モモンガ一家が数寄矢会を抜けて独立系の団体になってからは、日々のシノギが厳しくなったため、暴対法が及ばない外国で「人身売買ビジネス」に手を染めるようになったようです。

香港(原作では上海)での人身売買での利権に食い込む代わりに、兜の後ろ盾を利用して、仙骨竜の関東進出の支援を行っていったということですね。

5-2.日浦がクスリを忌み嫌う理由と、過去の兜真矢との絡み

しかし、日浦が兜真矢を全く知らない設定は、原作との整合性という面で少しどうかな?とも思いました。というのも、日浦の若い時代を描いた漫画原作のスピンオフ「土竜の唄外伝~パピヨンダンス」で、日浦が極道に入る直前の18歳の時、悪徳シャブ中刑事、兜と死闘を演じる重要なエピソードがあるからです。

本編序盤、日浦組結成の訓示の中で、「一つ、シャブは絶対にやらない」と、麻薬に対して強い嫌悪感を抱くようになった理由の一つが、この兜との苦い思い出にあります。大切な彼女だけでなく、日浦自身もシャブ中にされてしまい、「楽しく生きる」ことを何より大切にする日浦にはつらい経験となりました。
だから、香港に行って兜と鉢合わせた日浦が「兜って誰?」的な流れで絡みがまったくなかったのはちょっとどうだったのかな?とも思いました。

5-3.「暴対法」で実際に構成員の減少が止まらない

映画でもあったように、末端組員の不祥事であっても、組織のトップに厳しく「使用者責任」を課す新・暴対法。映画中でも、モモンガのように幹部クラスであってもあっけなく「破門」される様が描かれましたが、実社会ではどうなっているのでしょうか?

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平成20年に、暴力団トップの「使用者責任」の範囲を一気に広げた改正暴力団対策法が施行されました。映画でもあったように、これをきっかけとして「破門」「脱退」が急速に進み、平成22年に80,000人を割ると、その5年後にはわずか45,000人あまりに激減していることがわかります。その中には、モモンガこと桜罵百治のように「トカゲの尻尾切り」的な破門を受けた構成員もかなりいたのでしょうね。

5-4.玲二の決めセリフ「バッチコーイ」の意味や由来とは?

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まぁ見てれば大体前後の状況から、「かかってこいやー!!」的な意味だっていうのはわかりますよね。「バッチコイー!」は、元々野球用語から来ていると言われます。守備練習など練習風景で、守っている野手が、どこに飛んできても捕ってやる!という意気込みで、「バッター、どこからでも打ってこい!」と発した気合いの掛け声が、次第に省略されて「バッチコーイ!」に変化していったそうです。

5-5.続編は?映画中、次作を匂わす発言もあった!

さて、気になる続編についてです。最終的には興収次第という気もしますが、映画本編では、以下の2箇所で続編を匂わすようなポイントがありました。

▶酒見・赤胴・福澄の3人で、拘置所でアカペラで歌った土竜の唄2番の最後の歌詞で「3番もあるよ・・・」とあったこと
▶ラストシーンで、玲二のナレーションに「次こそ刑務所にぶち込んでやるぜ」と「次」を強調していたこと

次作は、第36巻以降の「シチリアマフィア編」でいよいよ轟周宝と対決する最終編になるのでしょうか?

6.まとめ

原作を読んでいるぶんだけ、いろいろ感想では細かい所で不満が出てしまいましたが、主演の生田斗真の振り切れた野生児のような演技と、敵役の瑛太の怪演は非常に良かったです。願わくばもう少し、原作の世界観を尊重して、締めるところは締める感じで作ってほしかったなという思いは正直ありますが、次回作があるのならば、最後までしっかり見届けようかなとは思います。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連書籍など

「土竜の唄」原作全52巻を冬休みに一気読み?!

原作マンガは、現在シチリアの海外マフィア編へと突入し、既刊52巻まで出版されていますが、まだまだ終わる気配はありません。しかし、独特の面白さがあり、読み出すとこれが手が止まらないのです!コマ割りがデカいので、この年末年始に全巻制覇もそれほど時間はかからないと思います。映画から入った人は、是非マンガ原作の圧倒的な高橋のぼるの個性を味わってほしいです!

映画とタイアップして、1月10日までかなり無料で読めます!

2017年1月10日まで、第1巻~第6巻、そして、チャイニーズマフィア編のスタートする第25巻が、映画とのタイアップでKindle、楽天koboとも無料で読めます!

クレイジーパピヨンこと日浦のスピンオフ外伝も1~2巻が無料!(~1/10)

映画では堤真一が演じている、日浦組組長ことクレイジーパピヨンの若き日を描く外伝も、現在1月10日まで第1巻~第2巻がKindle、楽天koboともに無料となっています。映画で日浦の魅力にハマったひとは、こちらは必読です!

第1作「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」のDVDもおすすめ!

三池崇史監督とクドカン脚本など話題にもなり、興収21.9億円を記録する大ヒットになった映画第一作のDVD。前作は、まだそれほど玲二のキャラが色濃く立っていませんが、純奈演じる仲里依紗が若い(笑)素行不良で型破りな巡査であるレイジが潜入捜査官になり、阿湖義組組長を逮捕するところまでを描きました。玲二が盃をもらうところで、作法がわからず盃を食べちゃうシーンが個人的には一番記憶に残っています。

【映画レビュー】2016-2017年末年始に上映中のお正月映画感想記事まとめ【随時更新】

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かるび(@karub_imalive)です。

2016年12月は、特に映画館によく足を運びました。年末年始映画のラインナップを見ていると、メジャーどころはほぼ全部行って、感想/レビュー記事を書いているんですよね。いやー、よく書いたなぁ。

せっかくなので、この2016年~2017年の年末年始に全国の映画館で上映中の映画の中で、感想を書いた映画レビュー記事について、まとめ記事を作成してみました。

もしこれは面白そうだな、という映画があれば、是非映画館に足を運んでみてくださいね。それでは、行ってみましょう。
※基本的に、全ての記事で映画本編内容について、メジャーなネタバレ事項を含んでいます。予めご了承ください。

「バイオハザード:ザ・ファイナル」

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ミラ・ジョヴォヴィッチが主役を務める映画「バイオハザード」シリーズも、1作目から足掛け15年となりました。本作が、とうとう最終作となります。とにかく映像も音響も派手で、ホラー要素、アクションともに過去最高に楽しめる出来だと思います。ハラハラドキドキしっぱなしの100分です。ローラもちょこっとだけ出てますよ。  

「ローグ・ワン スター・ウォーズストーリー」

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昨年度「フォースの覚醒」以降、スピンオフと本編を交互に繰り返ながら毎年新作をハイペースでリリースすることになったスター・ウォーズシリーズ。「ローグワン」は、シリーズ初のスピンオフ映画にして、フォースも使えない名も無き反乱軍の英雄たちを取り上げました。見どころは後半の戦闘シーン。宇宙空間~地上戦まで、あらゆる兵器・武器が入り乱れて戦う場面は、手に汗握る屈指のハイライトでした。エピソード4につながる、素晴らしい作品でした。 

年末の12月23日~29日までの1週間、東京の日本テレビ本社内にて無料で開催された「ローグワン」についてのミニ展覧会です。年明け以降、全国各地の百貨店等のイベントスペースへ巡回するのではないかと予想しています。個人的には、息子を「ジェダイ・アカデミー」に入れてみたかった・・・。

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」

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完結したハリー・ポッターシリーズより、少し前の時代を描いた新たなシリーズがスタート。その第1作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」では、1920年代のニューヨークを舞台に王道の魔法ファンタジーが繰り広げられます。どうしても原作に縛られた旧シリーズと違い、今作は映画だけに集中して製作されたため、場面展開やストーリーが非常にスムーズです。

VFX等、コンピュータで処理された美しい画面も見どころ。アカデミー賞の視覚効果部門でノミネートされていますが、どうなるでしょうか? 

すでに「ファンタビ」シリーズは全5部作で製作されることが決定していますが、2作目以降の情報が制作チームからいい感じで飢餓感を煽るように小出しにニュースで流れてきていますね。本エントリでは、自分自身の情報整理も兼ねて、2016年12月時点で判明している次作以降の情報をまとめてみました。 

「君の名は。」

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この映画は、封切り初日の8月26日に映画館で見てきたのですが、その当時はまさかこれほどロングランで世界的に大ヒットする作品になるとは思いもしませんでした。アニメ界どころか、邦画全体で見ても歴史的に名が残る映画となりましたね。SF、恋愛、アクションなど、様々な要素がつまった王道青春ストーリーです。

年末年始も非常に良くお客さんが入っていて、どこまで興収と動員数を伸ばせるのか、僕も非常に注目しています。

「土竜の唄 香港狂騒曲」

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広域指定暴力団「数寄矢会」に潜入捜査官(モグラ)として組織に潜り込んだ主人公、玲二。組織のトップ轟周宝の現行犯逮捕を目指すため、内偵中の玲二がヤクザ世界を機転と直感で生き延び、出世していくマンガ原作の実写化第2弾。徹底したコメディ路線は、前作とほぼ同様。主演の生田斗真は、前作より更にパワーアップして暴れまわっています。

「この世界の片隅に」

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マンガ原作、映画ともに、それぞれのメディアの特性を最大限活かして丁寧に仕上げられた傑作。特に、普段辛口批評で知られる映画評論家をも唸らせ、絶賛させたクオリティです。11月封切り時にわずか60館あまりでスタートした上映は、お正月でとうとう200館以上へと上映拡大中。 

「海賊とよばれた男」

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出光興産の創始者&会長であった出光佐三氏をモデルに、彼の所業や実績を限りなく事実に近い形でまとめ上げました。「船出せ~」「油もってきたけぇ~」「下を向いとる暇はない!」など岡田准一扮する国岡鐵造の発する言葉が印象的でした。岡田准一のリアルな老け顔メイクと、社長になり切った演技力が光る、泣ける傑作です。 

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

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タイトルこそ「ぼく明日」とキャッチーですが、決して若い男女が仲良くするだけの軽い恋愛スイーツ映画ではなく、お互いの運命を受け入れ、お互いのことを思って行動する切ない二人の心情描写が優れた普遍的な映画です。1回目は、主人公「高寿」の視点で見た後、2回めをヒロイン「愛美」の視点に立って鑑賞すると、より切なくなる、何度でも見返したい作品です。

「疾風ロンド」

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シリアスな雪山サスペンスかと思わせて、コメディ要素も強く織り込まれた作品。研究所務めの、サラリーマン根性が染み付いた情けない主人公を、阿部寛が上手に演じています。雪山での手持ちカメラGoProで撮影されたチェイスシーンは非常に迫力がありました。 

まとめ 

いかがでしたでしょうか?2016年-2017年の年末年始も、大手のシネコンは毎日無休で営業しています。シリアスな作品から、コメディタッチの作品までいろいろ揃っていますので、もし興味がある作品があれば、チェックしてみてくださいね。

それではまた。
かるび

池上彰って過小評価されてない?教養を身につけるなら外せないと思う。

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(引用:http://honvieew.com/business/1613

【2016年12月30日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

ここのところ、「読書」に力を入れています。

人生80年として考えると、今ちょうど自分は41歳。人生の折り返し点です。2016年~2017年にかけては自分の後半生の血肉になって世界を広げてくれるような知識や教養を一杯身につけたい。そのために、いろんなジャンルの本を読んでいきたいなと思っています。

そこで、今年の3月頃から、1日1冊を目標に、知識・教養を補強するため、あらゆるジャンルの本をとりあえず乱読・多読することに決めました。小説やエッセイからノンフィクション、人文・社会科学系から自然科学系まで、古典・新刊を問わず、目についたものを片っ端から試しています。

特に、高校時代で選択必修の際に選ばなかった「世界史」やそれに続く「現代史・時事ニュース」については、非常に知識が弱く、このあたりは入門書から入っています。

で、どのあたりから入ろうかなーと思っていた所、見つけたのが「池上彰」の一連の書籍。図書館に行っても、古本屋の100円コーナーにも大量に転がっています。

その膨大な流通量の割には、HONZなどの書評サイトではあまりレビューされてなくて、きっと適当な本を粗製濫造してるんだろうな、と思って最初はスルーしていました。というか、最初見た時アナウンサー上がりの芸能人だと思ってた(笑)

でも、世の中に大量に出回っているということは、必ず売れている理由があるということです。きっと何かしら良い点があるのだろう、食わず嫌いはよくないな、と思って、思い直して古本屋で何冊か軽い気持ちで買ってみたのですが、これが意外によかったのです。

それ以来、本屋や図書館での試し読み・立ち読みを含め、池上彰の本を20冊ほど固め読みしてみました。著作を読めば読むほど、硬派で、かつユニークな考え方を持った、しっかりしたジャーナリストなのだということが分かりました。何が芸能人だ・・・

ということで、前置きが長くなりましたが、今日はこのエントリで、池上彰の何が凄いのか?書いてみたいと思います。

どんなジャンルの本を書いているのか

池上彰は、元NHKの政治記者で、2005年にNHKを退職して独立。現在はフリージャーナリストとしてテレビ・講演活動・大学教授・著作家とマルチな活躍をしています。池上彰氏の著作をAmazonで調べると、5月1日現在、共著も含めると393冊も出てくるほど、大量の著作を残しています。

主なジャンルは、「近現代史」「時事ニュース」「国際情勢」から「教養論」「コミュニケーション論」「自己啓発」「マスコミ論」など。人文/社会科学系の主要論点であれば、ほぼ百貨店的に全領域で網羅されています。中でも一番得意なのは、ジャーナリストとして長年積み上げてきた膨大な知見が売りである「時事問題」「国際ニュース」「近現代史」といったところでしょう。

逆に、「サブカル系」「科学系」「IT系」「芸術・文化系」には、ちらほら著作はありますが、そこまで明るくない印象です。(ただし、出版されている著作はわかりやすい)いまだにTwitterアカウントや公式ブログを持たない所や、新聞のクリッピングを日課にするなど、デジタル系サービス・機器には疎いところが垣間見えます。仕方ない。歳ですよね。(参考文献:『学び続ける力』

池上彰の本がすごい3つの理由

ここ2週間ほどで、20数冊一気読みしてみて自分が感じた池上彰の凄さは、一言で言うと「自分の知らない分野に入門する際の、信頼感」です。ジャーナリスト・評論家として、新たな分野を学び始める時、この著者の言っていることは信用できるのか?と考えた時に、池上彰の本からは、内側から滲み出る安心感みたいなものが常に醸しだされている。そう感じます。

その安心感はどこから来ているのだろうか?と考えたのですが、その理由は主に以下の3つに集約されると思います。

1.わかりやすく伝える力を極めている

池上彰が評価される一番の理由は、これだと思います。元々、テレビでの時事ニュース解説等で、「わかりやすさ」は評判でしたが、その自身の知見を新書にまとめて書き下ろした2007年の『伝える力』 はベストセラーになりました。

彼の著作の凄いところは、単に情報量を削って物事を安易に単純化しているわけじゃないところです。わかりやすさを優先しながらも、全く未知な状態からその分野へ入門する際の、必要十分なレベルの分析と情報量が確保されている。

本質をつかむまで、徹底的に自身で掘り下げて勉強した上で、長年培ったコミュニケーション技術を応用して、わかりやすい文章へと噛み砕いていく、いわゆる和文和訳的な作業を、極限まで突き詰めています。

一見、簡単そうですが、やってみるとこれが非常に難しいのです。いわゆる、「NAVERまとめ」的な無料媒体の表面的なキュレーション記事なら我々素人ブロガーでもできますが、そういった無料ブログレベルとは、一線を画すクオリティです。

2.徹底した現場主義

1950年生まれの池上氏は、もう60代後半。サラリーマンならとっくに定年を過ぎています。かなりのご老体なのに、今でも必ず年に数回は世界中のニュース現場に出かけていきます。

特に、イラクやリビア、ヨルダン、パレスチナといった中東の紛争地域にも危険を顧みずガツガツ出向いて行き、取材して一次情報を取りに行く姿勢は素晴らしい。実際に、宿泊したリビアのホテルは、その後まもなく、内乱で爆撃されて跡形もなくなったそうです・・・。

現場に行かないと決してわからないであろう、池上彰自身の五感で感じた現場での肌感覚を、著作の中で凝縮して反映することで、わかりやすさにリアル感や凄みが加わり、著作中での言説に説得力を与えているのだと感じます。

安易にネット上などの二次情報でよしとするのではなく、一次情報の取得に余念がない貪欲な姿勢は、場末のブロガーとしても見習わないとなと思っています(笑)

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3.ジャーナリストとしてのプロ意識と日本人的感性

どんなジャンルでも、一流のプロは奢ることなく技芸や知識を貪欲に追求するものですが、業界を代表するジャーナリストとして活躍する彼も、著作『伝える力』

知ったつもりになっても、実は知らないことは、誰しも山ほどあります。謙虚になれば、それが見えてきます。逆にいうと、謙虚にならないと何も見えてこないし、成長も上達もしません。[・・・]三十数年間におよぶジャーナリスト生活を振り返って、一つ明らかにいえるのは、よけいなプライドを持っている人は、「そこまで」だということです。意味のないプライドが邪魔をして、成長できるせっかくのチャンスを自らみすみす逃してしまうのです。

このように書いています。キャリアを積み重ねても、まだまだわからないことは沢山ある、という謙虚な姿勢が非常に共感を呼ぶのです。超多忙な毎日の中、日々の取材の他に毎朝全国紙5紙に目を通し、年間300冊読書するアグレッシブな姿勢はプロそのものですね。

そして、資料や読書に対する姿勢も非常にユニークです。限られた時間の中で、自分自身にぴったりあったフォームを完全に確立し、効率的な情報収集を心がけている。(引用:「僕らが毎日やっている最強の読み方 新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意」

また、取材する際は、良い意味での日本人としての美徳や、大衆としての目線をベースとして、権力に対して物怖じせずズバッと切り込んでいく、いわばジャーナリストとしての美徳・プライドも著作からはビシビシと感じられ、読んでいて一種の爽快感ももたらしてくれます。

特におすすめの著作を幾つか紹介します

1.「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズ

2009年以来、1年に1冊ずつ上梓されている、定番のベストセラーシリーズです。最新刊は2016年5月10日に「7」が出版されました。世界のリアルタイムでの国際時事ニュースを、極限までわかりやすく解説した本です。教科書的に事実が単に羅列されているわけではなく、近現代史や文化史や経済学的な観点から掘り下げて、ストーリー仕立てでビジュアルも交えた説明もあり、理解を促進する仕掛けが満載。アメリカやアジアだけでなく、ロシア、イスラム圏、アフリカなど、全世界での時事トピックをまんべんなく網羅していますので、これはおすすめ。

ぼくは、図書館で全部借りて、それぞれ1度ずつ読み返しましたが、このシリーズが一番役に立ちました。最新の「7」も発売日に買いましたが、ここ数年の池上氏の勉強成果が反映され、特にイスラム世界やヨーロッパについての分析が非常に充実していました。読み応えは過去6作を上回ります。

前作までコンプリートした読者に対して、コンテンツの重複を避け、前作までの内容を踏まえて最新の分析を提供する姿勢は非常に評価できると思います。

2.「伝える力」シリーズ

いわゆる「自己啓発系」ジャンルでは一番良く出来た本だと思います。ベストセラーとなり、フォロワーとなる類似書もたくさん出版されました。2007年に出版された「伝える力」では、仕事や生活におけるコミュニケーションのあり方や姿勢について、2011年の「伝える力2」ではそれを踏まえたより詳細なコミュニケーション技術について、池上氏の長年のジャーナリストとしての経験からノウハウが語られています。ここでも、やはりキーワードは、「わかりやすさ」でしょう。如何に「わかりやすく」物事を伝えることが大切か、非常に平易な語り口で書かれています。

3.池上彰の「経済学」講義 歴史編/ニュース編

現在、東工大でも講義を受け持つ池上氏ですが、少し前に愛知学院大学でも教壇に立っていました。その愛知学院大学での「経済学」講義15回分を収録・編集した実況中継的な本です。20世紀の終戦直後あたりから日本・世界の現代史を踏まえながら、経済に焦点を当てて解説されています。現代史と経済について二つを一気に学べる、濃い内容の本でした。東工大の講義本よりこちらの方が内容は濃いかなと思います。

さすがに濃い内容なので、かなりの学生が単位を落としたらしい(笑)授業はわかりやすくて、テストも持ち込みオール可なのですが、池上先生の授業は採点は厳しかったそうですね。

4.2017年度のトレンドを「読む」著作

ビジネスで成果を挙げるためには、時代を読み、トレンドの半歩先を行く必要があるとよく言われます。年末年始、いろいろな経済学者やジャーナリストが2017年についての展望をテレビや雑誌で語りますが、ここでも池上彰の著作が非常にバランスよくまとまっており、参考になるのです。

毎年年始に出版されている、2017年度の世界情勢を池上彰がわかり易く解説した本。例年1月中旬にリリースされますが、非常に楽しみ。

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番外編.池上無双

これは、池上氏自身の著作ではないのですが、面白かったので紹介します。

この本は、池上氏が司会を務めるテレビ東京系列の選挙速報番組における、縦横無尽な活躍ぶり、いわゆる”池上無双”について、彼に近い関係者が書き下ろしたドキュメンタリー本です。特に、池上氏の遠慮無く、鋭く切り込んでいく話術巧みな政治家へのインタビューは見ていて本当に痛快ですし、飽きません。

本書は、その過去の「池上無双」で秀逸だったやり取りや、池上氏がなぜここまで選挙特番に力を入れ、そして歯に衣着せぬストレートなインタビューが取れるのか分析を行っています。読み物として、非常に面白い一冊でした。

まとめ

2016年度の夏の参議院選挙、東京都知事選でも、選挙速報番組での「池上無双」はますます冴え渡りました。民放5社の中で、視聴率もトップ独走だったとか。時には政治家を怒らせるくらいズバッと歯切れよく切り込む姿勢は、今回も日本中の視聴者に感嘆の嵐を巻き起こしました。

また、東京都知事選では、小池、増田、鳥越有力3氏の中で、選挙後の池上氏インタビューに応じたのは、小池氏だけで、鳥越氏に至っては、「池上無双」を恐れ、池上氏とのインタビューを明確に拒否して逃げ出すほどでした。

池上彰の本は、書評サイトや、知識人系の書いた「読書推奨本リスト」にはほとんど挙げられることがなく、やや過小評価されているきらいがあります。恐らく、そんな入門書レベルなんて簡単すぎていまさら読まなくても・・・と思われているんでしょう。

物事を難しく語るのは誰でもできます。でも、誰でもわかるよう簡単に説明するのは、一見易しそうに見えて、実は奥が深く修養を必要とするのです。そんなわかりやすく伝えるプロである池上氏の本は、実務的にも、教養を広げるための第一歩としても、幅広く使えるんじゃないかなと思います。

それではまた。
かるび

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