かるび(@karub_imalive)です。
2017年2月18日から封切りとなる、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」を見てきました。ややアート系寄りの内省的な映画で、全国わずか13館での公開となるため知名度はイマイチなのですが、非常に心にしみわたる佳作でした。
たまたま応募していた2箇所の試写会の両方に当選するという僥倖にも恵まれたので、公開前ですが「ネタバレ無し」で映画の感想とみどころを書いておきたいと思います。
(公開後、ネタバレ感想に変わる予定)
1.映画の基本情報
<映画公式動画を見る!>

2.主要登場人物とキャスト
ディヴィス・ミッチェル(ジェイク・ギレンホール)
映画の主人公。義父の経営する投資銀行のエース格社員で、義父からも頼りにされている。
カレン・モレノ(ナオミ・ワッツ)
自販機製造メーカーの苦情対応係。交通事故後、妻が運び込まれた病院の自販機の故障に対して苦情の手紙を出したディヴィスの手紙を読み、コンタクトを取ったところから交流が始まる。一人息子のクリスと同居している。
フィル・イーストマン(クリス・クーパー)
ディヴィスの義父。交通事故で亡くなった娘を溺愛していた。頑固一徹で意志の強いやり手経営者。
クリス・モレノ(ジュダ・ルイス)
カレンの一人息子。多感な思春期につき、色々とこじらせていたところ、ディヴィスと交流が始まる。
(※上記画像4枚とも、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」公式HPから引用)
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3.映画の簡単なあらすじ(※ネタバレ無し)
映画の簡単なあらすじは、以下の通り。(公式HPから転載)
ディヴィスは、出世コースに乗り、富も地位も手に入れたウォールストリートのエリート銀行員。高層タワーの最上階で、空虚な数字と向かい合う、味気ない日々。そんな会社へ向かういつもの朝、突然の交通事故で美しい妻を失った。
しかし一滴の涙も出ず、哀しみにさえ無感覚になっている自分に気づいたディヴィス。彼女のことを本当に愛していたのか?僕の心はどこへいってしまったんだー?
「心の修理も車の修理も同じことだ、まず隅々まで点検し、組み立て直すんだ。」親父からの言葉が引き金となり、ディヴィスは、身の回りのあらゆるものを破壊しはじめる。
会社のトイレ、パソコン、妻のドレッサー、そして自らの結婚生活の象徴でもある「家」さえもー。あらゆるものを破壊していく中で、ディヴィスは妻が遺していた幾つもの”メモ”を見つけるのだが・・・。
4.感想や評価
決してわかりやすい映画ではないです
この映画「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」は、ジェイク・ギレンホール扮する主人公、ディヴィスが突然の交通事故で妻を失ったことをきっかけに、自分の本当の心を取り戻していくストーリーです。
派手なアクションやスタントは一切なし。妻の事故死の後、手紙のやり取りから偶然交流が始まった母子とのやり取りを通じて、主人公のディヴィスの心の内側が解体されていく様子をたんたんと描きます。内省的で、アートな香りのするとっつきにくさが漂います。
原題と邦題が全く違う!
★英米版映画ポスター「Demolition」
タイトルも、なんだかわかりにくいですよね。英語の原題は「Demolition」(爆破、破壊という意味)と、ストレートでわかりやすかったのですが、邦題だと「雨の日は・・・」と妙に詩的な長ったらしいものに変えられているのも、内容をわかりにくくしている一因かもしれません。(※見終わった後、あ、なるほど、そのタイトルもありかもね、とニヤリとするとは思いますがネタバレなので伏せます)
映画を良いと思えるかどうかは、ディヴィスの心情に寄り添えるかどうかで決まる
トレーラー動画で、物憂げな表情で、刹那的に周りのものをガンガン壊していく映像はひと目見て、結構面白そうだなと思っていました。最愛の妻を失ったのに、涙一つ出ない自分自身に疑問を持ったエリートビジネスマンである主人公ディヴィス。
義父であり、会社の社長でもあるフィルの「心の修理も車の修理も同じなんだ、一度総点検してみろ」というアドバイスで、スイッチが入ったように自分の周囲の環境を「物理的に」破壊していく展開は、一種の爽快感があります。ここだけは、見ていても非常にわかりやすい絵面でもあります。
ただ、ストーリーは気をつけていないとすぐに置いていかれます。非常に繊細な心の動きを扱った話でもあり、説明的なセリフも少なめなので、集中していないと細い話の筋を理解できず、フラストレーションが溜まる感じ。わかったような、わからないような感覚で、気づいたらエンドロール。
昨年末、1度目の試写会で見たときは、まさにそんな感じでした。アンケートには、「展開は面白いし、ジェイク・ギレンホールの演技も凄いんだけど、何となく心情に入っていけないなぁ」と正直に不完全燃焼な感想を書いて帰宅しました。
2周目からこの映画の良さが本当にわかるかも
そして、改めて別の映画会社から試写会の当選メールが来てから、今度は「ちゃんと理解したい!」と決意し、映画を見る前にサイトを見たり、パンフレットを見たりと予習をバッチリした上で映画に臨みました。
そんな感じで2回目の鑑賞を終えてみると、映画全体の印象が大きく変わりました。さすがに年末に見たばかりで大まかなストーリーが頭にある程度入っているため、ディヴィスが自分の心を取り戻していくプロセスや、心の揺れ動く様子を集中して味わう余裕も出てきます。
特に、2回目の鑑賞では、ディヴィスの気持ちにしっかり寄り添うことができたので、「おぉ、この映画いいじゃない!」と思えるようになりました。
ネット上の評価を見ていても、日本/外国を問わず、「わからない」「感情移入できない」系の不満を書いている人が多く、そういう人はおそらく1度目の鑑賞では消化不良気味だったのではないかと思われます。
キャストの演技も非常に素晴らしいため、リピート鑑賞に耐える映画ですから、もし「わからない」と思っても、もう一度見直してみることをオススメします。
シリアスな中、コメディ的な一面もかなりある
また、映画中盤以降、徐々に心を開放していく過程で、ディヴィスはだんだんと子供に「退行」したような奇妙な行動を大胆に取るようになっていきます。意識的にそうしているのか、ナチュラルにいかれてしまったのか、ちょうどその中間くらいの危うさの中でエキセントリックな行動を真剣にやっているため、客観的に見るとコミカルに見える場面も多々ありました。
また、映画全体によいスパイスとなる程度の絶妙なバランスで、中盤以降クリスとのやり取りで笑えるシーンがいくつもありますので要注目です。実際、試写会でも途中笑いが結構起きていました。
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5.映画のみどころ
ネタバレなしでおすすめできる見どころを、以下の3点に絞りました。
みどころ1:仕事で疲れ気味の人に意外におすすめ!
トレーラーを見るとわかりますが、妻の死後、少しずつディヴィスは周囲の環境を自分の心の中の投影として認識しだします。自分自身の心の奥底を知るために、自宅の冷蔵庫を解体し、会社の備品を解体し、そして最後には、自宅までを徹底的に破壊しつくします。
この破壊のプロセスが妙に解放的で、映画を見ているだけで一種の癒やしを感じるかもしれません。仕事や人生に疲れ気味の人にこそ、非常におすすめです。
みどころ2:ジェイク・ギレンホールの名演が素晴らしい
ハリウッド若手俳優では圧倒的な技量を持つ演技派俳優、ジェイク・ギレンホールが今作でも神がかった難易度の高い演技を見せてくれました。
10キロ以上減量し、サイコパス的なパパラッチを怪演した2014年の「ナイトクローラー」も凄かったですが、今作でも主人公ディヴィスの微妙な心情の移り変わり・機微を見事に表現しきっています。
みどころ3:子役、クリスを演じたジュダ・ルイスが最高だった
息子クリスのことを、最初にディヴィスに紹介する時「年齢は15歳、見かけは12歳、でも行動は20歳なの」と、ヒロイン役の母、カレンが言った通り、非常に難しい役どころ。不登校でマセた悪ガキなのですが、性的に微妙に・・・な(ネタバレだから書けない!!)ところもあり、コケティッシュで小悪魔的な魅力のあるキャラクターを見事に演じきっています。
ジュダ・ルイスの本当の年齢は何歳なのか知りませんが、子供から大人になろうとする今この時期にしか演じられない中性的な雰囲気も素晴らしいです。
前述した通り、妻の死後、ディヴィスは自分の身の回りのものをどんどん壊しまくり、自分の心を取り戻そうとしますが、カレン、クリス親子との交流は、全体のストーリーの中で、ディヴィスの心の破壊→回復のプロセスを促進する、一種の「触媒」として機能します。彼らと飾らない素朴な交流を重ねていく中で、ディヴィスの心境に著しく変化が起きて行くわけです。
ストーリー前半では、母カレンとディヴィスの交流がメインとなりますが、後半からクライマックスにかけては、ディヴィスとクリスのバディ映画のようになっていきます。ジェイク・ギレンホールにも見劣りしない好演が光りました。
6.まとめ
内容の詰まった良質の映画は見るたびに新しい発見があり、複数回の鑑賞に耐えますが、この映画「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」も、まさにかめばかむほど味がある、スルメのような映画でした。
単館系映画なので上映館が限られるのが非常に残念ですが、じわじわと心にしみわたるような、やさしいサプリのような映画です。是非、興味があれば映画館に足を運んでみてください。おすすめ映画です。
それではまた。
かるび
★映画の予習に役立つ書籍やDVDなど★
映画「ナイトクローラー」
同じパパラッチものでもこちらはハリウッド洋画もの。ロサンゼルスの夜の事件現場を走り回り、次々にスクープをゲットして成り上がっていく狂気のフリーランスカメラマンを描いた作品。目が血走ったサイコパスな主人公に扮した名優ジェイク・ギレンホールの怪演が最高です。
「TOMATOMETER」 驚異の満足度95%!!
(引用:Nightcrawler (2014) - Rotten Tomatoes)
アメリカ大手映画批評サイト「RottenTomatoes」で、世界中の辛口映画ファンから驚異の満足度95%を獲得した秀作!「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」と一緒に見ておきたい映画。