かるび(@karub_imalive)です。
どんな仕事でも、企画力やアイデアの独創性がより一層必要とされる時代になりましたよね。クリエイティブな人材はあっちこっちで引っ張りだこ。ネットで瞬時にコンテンツがコピペされ、あっという間に大量生産される昨今、「自分らしさ」「独創性」の大切さが叫ばれています。
ただ、僕も含め、どうしたら「オリジナリティ」を手に入れられるのか、さっぱりわからない人って多いんじゃないでしょうか。
テレビやネットなどのニュースで起業家の成功譚を見聞きしたり、著名な芸術家などの独自性あふれる作品を見ていたりすると、「いや、とてもムリでしょ・・・モノが違うわ」と自分の普通さ、才能の乏しさに絶望的になるんですよね。
そんな中、ビジネス書とは知らずに何となくジャケ買いしたこの本、「ORIGINALS 誰もが人と違うことができる時代」が非常に良かったです。分厚い本ですが、久々に夜遅くまで一気読みさせられ、曇った僕の目を開かせてくれました。
この本に僕が魅力を感じ、最後までワクワクしながら一気に読了できたのは、著者アダム・グラントが理論的、科学的なアプローチで「オリジナリティ」に対する既成概念や思い込みを根底から覆してくれたからです。
たとえば、良くある思い込みとして、「オリジナリティ」に対してこんなイメージって持ってたりしないでしょうか?
・オリジナルであるために、素早く行動し、即断即決で競争を勝ち抜け。
・オリジナリティは常に一握りの天才が直感的にひらめくことで達成される。
・才能は若い時に花開き、年をとると創造性は徐々に失われていく。
僕が、会社を辞める前も、辞めた今も一貫して悩んでいるのは、何かに取り組む時の自分の才能の無さです。何をやってもオリジナル、スペシャルな位置にたどり着けない。「オリジナリティ」ってどうやったら身につけることができるんだろう、っていつも悩んでいました。
例えば、ブログを書いていても、最低限、他人のコンテンツをコピーしないくらいの道徳心とプライドはあるわけですが、きらびやかな文筆家や華のあるすごい書き手のコンテンツにはどう頑張っても届く気がしません。
才能あふれる彼らを見ていると、「いや、もうどうしたらいいかわからん」といつも頭を抱えてしまうのですよね。
一般人でもオリジナリティは達成できる!
著者のアダム・グラントは、そんな悩める凡庸な一般人に対して救いの手を出します。
まず、ゼロベースで「オリジナリティ」とは何なのか?最初に再定義から入ります。本書はあくまでビジネス本の文脈で書かれているため、第一章の冒頭で、「オリジナリティ」をこう定義付けし整理されています。
私のいう「オリジナリティ」とは、ある特定の分野において、その分野の改善に役立つアイデアを導入し、発展させることを意味する。
また、オリジナルな人とは、「みずからのビジョンを率先して実現していく人」であり、「オリジナルであること」は一部の天才たちに先天的に与えられた特権ではなく、普通の一般人が、あとから身につけ、達成できるものであると結論づけます。
どうですか?ちょっと勇気づけられませんか?
また、オリジナリティは徹底的にリスクを冒して獲得する必要はなく、じっくりと注意深くやれば良いと説きます。いきなり起業しなくても、少しずつ身の丈にあったところからスタートしろと。
そして、実際、歴史上で傑出した業績を残したオリジナリティあふれる偉人たちを見てみても、彼らは決して起業家スピリットあふれるリスクテイカーとして能動的に動いたわけではないのです。支持者や仲間に持ち上げられて行動したに過ぎず、普通に、発言して目立つことを恐れる人たちだった、と分析されています。
例えば、こんな感じ。
・システィーナ礼拝堂の天井の大壁画を描いたミケランジェロは、ローマ法皇の命令を苦痛に感じ、2年間逃げ回った上、渋々引き受けた。
・コペルニクスは地球が太陽を回っているという独自の発見をしたが、笑いものになるのを恐れ、枢機卿に促されるまで22年間発表しなかった。
・キング牧師は公民権運動が始まる当初、多忙を避けるため教会の活動を優先する意向で、リーダーを断る気でいた。
・アメリカ革命の当初、ジョージ・ワシントンは、自らの事業を優先するため、革命活動への関与を持てる権限のかぎりをつくし、何としてでも降りようとした。
オリジナリティを身につけるための具体的な方法論も満載!
2章以降も目からウロコの展開です。具体的に「オリジナリティ」を身につけるための考え方やメソッド、プロセスがこれまた独創的なのですよね。
たとえば、、、
→アイデアは天才だけのものじゃなくて、我々一般人もブレストを行えば普通に出てくるのです。ただ、そこでどんなアイデアを選び、行動につなげていくかが最重要だと説かれています。
→確かに、名作を残している人は多産ですよね。実際、歴史上の巨匠であるピカソやモーツァルトなども、駄作を含む数多くの作品を死ぬまで作り続けました。その中から評価される名作が「偶然」生まれてくるのだと言います。
→上司は経験からくる固定観念が、自分自身は自己への過信が目を曇らせるため、同業者の厳しい目線に晒すのが一番だそうです。
→「直感」に優れるスティーブ・ジョブズが門外漢の「セグウェイ」に入れ込んで大失敗した事例が紹介されています。マックやベネッセで失敗した原田さんもこの罠にはまったのでしょうか。
→ノーベル賞受賞者と他の一般的な学者では、芸術活動への造詣の深さが顕著に差として出ているそうです。
そして、第3章以降は、主にダニエル・カーネマンら行動経済学や行動心理学の実験・研究結果を踏まえながら、
・独創的なアイデアに周りをどう巻き込んでいくべきなのか(3章)
・独創的なアイデアが受け入れられるのはいつなのか(4章)
・独創的であるためには、誰とどう組むのがいいのか(5章)
・独創的な人をどう育てればよいのか(6章)
・独創的な組織とは何か?どう作り上げていけばよいのか(7章)
と、自分自身だけのあり方から、他者との関係性へと分析を広げ、オリジナルであるための処方箋が総合的に提示されていきます。
必要なのは本書の内容を実践で活かすこと
もちろん、「楽していいよ」と甘いことが書いてあるわけではありません。
本書は、成功した人の行動パターンやその心理傾向を徹底的に分析し直して、「オリジナル」であるために何が必要なのかをゼロベースで定義し直したにすぎず、この本の内容に基づいて「行動」しなきゃ自分自身の中のオリジナリティは育っていかないのですよね。
決して「努力しなくてもいい」「寝てるだけでいい」「すべてを手放してゼロになろう」という安易なアプローチではありません(笑)すごいな~、、、だけで終わらないようにしないと。
まとめ
本書は、データやケーススタディなど、エビデンスを豊富に提示して、多角的に「オリジナルであること」とは何なのか、「オリジナルであるために」何をしたらいいのか、ゼロから読者に再考させてくれます。
そして、読み手がこの本で一番勇気づけられる点としては、オリジナルであるためには、特別な天才性は必要ない、ということです。ごく平凡な一般人であっても、「オリジナル」であるため冷静になり、沢山のアイデアを出し、戦略的に振る舞うことで、たった今からでも「オリジナル」たりえるのです。
そのことが、博士独特の学際的なアプローチで、理知的にあぶり出された良書でした。そして、この本で提示される考え方や一連のメソッドが、唯一無二の「Original」なアプローチとなっていることで、本書に強い説得力を与えている点でもあります。
文句なくお勧めです!
それではまた。
かるび