(C) 2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
かるび(@karub_imalive)です。
6月24日に封切られた映画「いつまた、君と 何日君再来」を見てきました。今から2世代ほど上の、第二次世界大戦~戦後の激動の時代を生き抜いてきた家族のファミリーヒストリーを取り上げたヒューマンドラマです。
これが、予想に反して物凄く良い映画だったんです。有名人でもなく、どこにでもいるような一般人の昭和時代を切り取ったホームドラマの何が面白いんだろう、と、当初完全にノーマークだったんですが、試しに買ってみたノベライズ小説を読んで「これは・・・」と気が変わり、そして見てきてびっくり!良い作品でした!
「事実は小説より奇なり」とは良く言いますが、多少脚色されているにしても、終戦直後の芦村家の過酷な生活と、そこで育まれたお互いを思いやる家族愛の強さに強いドラマ性を感じました。
早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。
- 1.映画「いつまた、君と」の基本情報
- 2.映画「いつまた、君と」の 主要登場人物とキャスト
- 3.映画「いつまた、君と」の結末までの簡単なあらすじ紹介
- 4.映画「いつまた、君と」の感想・評価
- 5.映画「いつまた、君と」をもっと楽しむための7つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!~
- 6.まとめ
- 7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「いつまた、君と」の基本情報
<映画「いつまた、君と」テーマソング>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

【監督】深川栄洋
(「神様のカルテ」「洋菓子店コアンドル」他)
【脚本】山本むつみ
(「ゲゲゲの女房」「八重の桜」)
【配給】ショウゲート
【時間】114分
【原作】公式ノベライズ「いつまた君と」
本作は、向井理の祖母が残した手記をベースとした実話に基づいたヒューマンドラマです。大学時代、祖母から言われて手記の自費出版作業を手伝った時、祖母と祖父が生き抜いた激動の半生について強い感銘を受けた向井理。いつか映画化したいと考えるようになりました。
その後、俳優として彼が大きくブレイクするきっかけになったNHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」で出会った脚本家の山本むつみに映画化企画を持ち込んだところから、7年越しで少しずつ作品が形になっていきました。
引用:http://eiga.com/news/20161023/5/2/
監督は、悲しい物語の中にも救いのある温かみをじんわり描き出すことに定評がある深川栄洋。今作のように「悪人」がおらず、名も無き一般の人たちを扱ったヒューマンドラマは、ぴったりだったと思います。ちなみに、去年の10月、女優の宮澤美保と「勢い余って」交際半年で結婚しているんですね。本作の吾郎&朋子のようであります。
2.映画「いつまた、君と」の 主要登場人物とキャスト
向井理自身も映画の登場人物として出てきますが、本作では本人役は、成田偉心にまかせ、自身は祖父、吾郎を演じました。
芦村吾郎(向井理)
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隔世遺伝なのか、祖父に非常に外見が似ていると言われる向井理。作中では本人「理」役は新人俳優に任せ、自らは祖父、吾郎を演じています。尾野真千子とはTVドラマ「サマーレスキュー」以来の共演となりました。吾郎が病に倒れる晩年の衰弱ぶりを表現するため、顔の骨格が変わるくらい大減量して臨んでいたラストシーンに、並々ならぬ意気込みとプロ意識を感じました。
芦村朋子(尾野真千子)
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初日舞台あいさつで、満員の観客を前に、始まる前から号泣して喜ぶほど、本作への思い入れが深かった様子。この人はあらゆる映画・TVドラマ作品で高確率で「主婦」を演じる機会が多い俳優ですが、今作では珍しいほど夫一筋の純愛を貫いた、たくましく純粋な女性を情感豊かに演じました。
芦村朋子:現代(野際陽子)
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がん治療を続ける中、小康状態となっていた時期に撮影された本作でしたが、映画公開前に急逝し、これが遺作となってしまいました。NHKのアナウンサーから1963年、TBSドラマ「赤いダイヤ」で女優へ転身。その後、50年以上に渡り、映画・ドラマ・バラエティ等で活躍してきた異色の経歴の持ち主。最後はかわいいおばあちゃん役で良かったと思います。
芦村真美:現代(岸本加世子)
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現代での真美役。「HANA-BI」「菊次郎の夏」など一連の北野武監督作品にて日本アカデミー賞主演・助演と2部門で受賞実績があり、深川栄洋監督作品では、「先生と迷い猫」以来2年ぶりの出演となります。
芦村忠(イッセー尾形)
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2017年は映画「沈黙 サイレンス」での悪代官役が世界的な評価を受け、いくつかの映画賞で受賞&ノミネートが相次ぎました。今作でも、事前にネット上の評判を拾っていると「イッセー尾形が出るんなら見に行く」という声がちらほら。期待通り、非常に表情豊かな老人役を務めていました。出番は少ないですが、さすがの存在感です。
芦村理(成田偉心)
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本作が事実上の映画デビュー作となった現役大学生。母親役の岸本加世子からは、まるで向井理が乗り移ったようだと評価されていましたが、ナチュラルな今時の大学生を堅実に演じられていたと思います。
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3.映画「いつまた、君と」の結末までの簡単なあらすじ紹介
初めてのデートで結婚を決めた吾郎と朋子
引用:映画パンフレットより
昭和15年夏。芦村朋子は、中国から一時帰国していた吾郎と初めてのデートで緊張していた。運ばれてきたアイスクリームは溶けかけていた。吾郎は、手を付けようとしない朋子の分までアイスクリームをかきこむと、その時店内のレコードプレイヤーで、当時中国本土で大ヒットしていた「何日君再来」がかかっていた。「今宵別れたら、いつまた君とあえるだろう」という意味だ。吾郎は、携帯していたスケッチ帳に南京の美しい風景を描くと、「君にも見せたい」と、暗にプロポーズをすると、ひと目見て吾郎の美しさを気に入った朋子は、「南京に行きます」と答えた。二人の婚約が決まった瞬間だった。
翌昭和16年。吾郎は、南京で日本と中国を橋渡しする青年会書記長になっていた。毎晩精力的に書き物をする吾郎をただ後ろから見ているだけで、朋子は幸せだった。
朋子の入院をきっかけに、手記をまとめる理
現代。大学生になった芦村理は、母、真美の元を離れ、祖母の朋子の家の近所で一人暮らししていた。口元からは、祖母から教わった「何日君再来」のフレーズが自然に出てくる。今日は、祖母の代わりに街で買い物へ出かけてきたのだった。
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しかし、理が家に帰ると、祖母は床に倒れていた。すぐに病院に運ぶと、脳梗塞とのことで即時入院が決まった。病院に駆けつけてきた叔父達と別れ、理は再び祖母の家に却って後片付けをしていると、祖母がパソコン上で開きっぱなしにしていた小説のような者を見つけた。
貧しく懸命に生きてきた戦後
再び昭和21年、上海。太平洋戦争の戦況が悪化すると、吾郎の青年会での活動は先細りになり、吾郎は上海にいる知り合い、高杉の紹介で鶴丸石油の社員として働いていた。しかし、敗戦後、鶴丸石油は連合軍に接収され、彼らは日本へと引き上げることになった。引き上げにあたり、裸一貫で何も持たずに帰る吾郎達は、珍しい存在だった。
引き上げ船は大混雑していた。中には、夫を戦争で失い、幼子を中国へ置いてきた母親などもいて、一歩間違えたら私達もこうなっていたかもしれない、と身につまされる朋子だった。
上海を出港して3日目、鹿児島へと到着すると、吾郎と朋子、子供2人は、朋子の愛媛の実家を頼ることにした。しかし、朋子の父、忠の生活も苦しかった。忠は元々よく思っていなかったのだが、何も持たず裸一貫で帰国してきたことに落胆し、吾郎に冷たく当たるのだった。
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吾郎も、慣れない畑仕事と居候の身分で非常に肩身が狭く、そんな吾郎を案じた朋子は、家を出よう、と吾郎を諭すのだった。
それから1年後、働いて金を貯めた吾郎たちは、手に入れたフォードの作業用ワゴン車で四国を出て、茨城県の恋瀬村へと向かった。途中、エンストで何度も立ち往生したため、野宿したり、何度もエンジンを押し掛けするなど苦労も多かったが、何とか辿り着いた。
吾郎は、小伊勢村で運送屋を始めたが、すぐにフォードのワゴン車が故障して動かなくなってしまい、運悪く運送屋は廃業する羽目になった。吾郎は、しばらく必死で求職活動を行い、やがて福島県の棚倉という田舎町でタイル会社に就職した。
真面目な働きが認められ、吾郎は経営管理の仕事についたが、出張で東京へと出た際に交通事故にあってしまい、しばらく東京で入院した。しかし、隊員して会社へ戻ると、会社では経理担当の社員が金を持ち逃げしてしまっており、会社はもはや誰も出社していなかった。吾郎はまたも仕事を失ってしまった。
ちょうど季節は5月だったが、貧乏のドン底にいた吾郎は、子供に鯉のぼりも買ってやれなかった。吾郎は、幼いころに村内にチフスを持ち込んだことで、村人から責められたことを苦にして墓前で自殺した父のことを思い出し、自暴自棄になりかけたが、朋子は優しく吾郎を勇気づけるのだった。すると、前職での恩人、高島から「寒天」の土産物が届いた。
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この「寒天」を元手にして、ところてん屋を始めたところ、これが何とか当たって、夏にかき氷、秋におでんを出すことにより、家族が食べていける分くらいはお金が入ってくるようになった。また、この頃には3女、真美を授かり、長男、昇は小学校へと通うことになるなど、家族にとっての慶事が続くのだった。
しかし、あたりに競合店が建ち始め、目新しさがなくなった彼らの店は、所詮素人商売の限界から、次第に客足が細くなっていった。そして、ある日の夕暮れ、辺りを騒がせた酔っぱらいと吾郎の立ち回りをきっかけに、閉店に追い込まれてしまう。
再びタイルなどを売り歩いた吾郎だったが、やはりうまくいかない。イライラと無念さがピークに達していた吾郎は、近所のガキ大将と息子の争いを巡って朋子と口論になり、「もう別れる」と言い捨てて、家を出ていってしまった。
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すぐに家を出て辺りを探しにいった朋子は、野ばらが咲く丘の上の草原で一人黄昏れている吾郎を見つけ、「別れたくない」と吾郎に言った。吾郎は、仲直りと愛情の証拠に、その場で野ばらを積んで朋子に差し出した。朋子は、それを大事に取っておくのだった。
大阪での日々、吾郎との別れ
昭和27年、大都市への転入規制が解除されたことをきっかけに、吾郎たちは大阪に引っ越した。吾郎は、高杉の紹介で、鶴丸石油のガソリンスタンドで働くようになっていた。元来真面目な吾郎は、仕事ぶりが評価され、ガソリンスタンドの営業成績は上向きになっていた。ある日、高杉が久々に訪ねてきてくれて、吾郎の評判が評価されたので、近日中に完成予定の岸和田の油槽所の所長に吾郎を抜擢したいという。吾郎と朋子は、高杉にただただ感謝するのみだった。
吾郎は、油槽所の建設段階から指揮を取り、油槽所は完成間近となっていた。そんな折、またも吾郎を不運が襲った。超大型台風が関西を直撃し、建設中の油槽所が倒壊してしまったのだった。こうして、またも吾郎は職を失った。
こうしてなかなか貧乏生活を抜けられなかった彼らではあったが、吾郎の出勤停止中に、二人は将来旅行したい場所や行ってみたい所についてゆっくりと語り合った。吾郎は、一つ一つスケッチブックに描くのだった。
そんな折、吾郎は腰痛が悪化して、発熱もひどくなったため入院した。検査の結果、背中にできた腫瘍が原因で、体調が悪化しており、さらにチフス性腫瘍の疑いがあるという。吾郎は、隔離病棟へと移されることになった。結局チフスの疑いは晴れたものの、吾郎の体調は日に日に悪化してゆき、入院後たった3ヶ月で病院にて死去した。
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葬儀が終わった後、高杉が訪ねてきた。この後どうすれば良いか途方にくれていた朋子だったが、高杉と面会中、郵便屋から受け取った吾郎の遺書を見て、朋子は子供たちを守ろうと決意する。その場で高杉に頭を下げ、鶴丸石油で働きたいと願い出た。
しばらくした後、朋子は唐突に一番下の娘、真美に生前吾郎からもらったスケッチブックをプレゼントして、真美を愛媛の実家に預けるのだった。青天の霹靂だった真美は、説明もなく突然母との別れに大泣きして悲しんだ。
朋子と真美の和解、エピローグ
そして、現代。息子、理がとりまとめていた母の手記「何日君再来」にすべて目を通した真美は、なぜ母が突然自分を愛媛の実家へと置いていったのか理解した。朋子は、決して真美を嫌っていたわけではなかった。それは、苦渋の決断だったのだ。鶴丸石油で住み込みの寮母として働くことになった朋子は、仕事に専念するため、真美をかまってやれなくなると判断し、不本意ながら実家へと預けざるをえなかったのだ。
真美は、入院中の病室で、改めて朋子と一緒に、40年前朋子がくれた吾郎のスケッチブックを愛おしそうに振り返った。野ばらの押し花はすっかり茶色く変色していた。
吾郎が亡くなって40年。朋子は未だに吾郎に対して一途な思いだった。そして、最初の喫茶店での吾郎との時間を思い出していた。
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4.映画「いつまた、君と」の感想・評価
「笑顔」がとても印象的だった珠玉のホームドラマ
映画を見終わってパンフレットをパラパラ見返していて思うのは、映画全編を通して、苦しい生活が続く中、時折見せる朋子や吾郎の「笑顔」がとても素敵だったなぁということ。
知的で真面目だけど真っ直ぐすぎて不器用な生き方しかできない吾郎は、朋子と結婚後、かわいそうなくらい不運続きです。世俗的な成功は何一つできないまま、わずか47歳で早逝します。
彼らが共に生きた15年間は、どちらかと言うと辛いこと、悔しいこと、悲しいことの方が多かったはずです。それにもかかわらず、決して貧しさに負けず、お互い愛し合い、支え合って懸命に生きていた中での「笑顔」は格別のものがありました。
たとえ彼らには物質的な豊かさはなかったとしても、それと対照的に精神的には深く充足し、家族愛や夫婦愛に満ちた毎日を送っているんですよね。「何もなくても愛する人や家族がそばにいれば、それでいい」そんな朋子と吾郎の生き様は、心に深く訴えかけてくるものがありました。
戦後の混乱期には、貧乏で、生き抜くために必死で知恵を絞って困窮を乗り切るような生活を送る、芦村家のような家庭は無数にあったのだろうと思われます。彼ら、先人たちが懸命に生き抜いて命をつないでくれたからこそ、現代に生きる我々が豊かに生きて行けているんだな、と感謝の念が湧き上がってきました。
心を暖かくさせてくれる素晴らしいホームドラマだったと思います。
深川監督の進化した「自然な」映像演出
「神様のカルテ」「トワイライトささらさや」など、包み込むような優しい視線で人間模様を描写することが得意な深川栄洋監督。今作は、NHKの大河や朝の連ドラで起用実績がある山本むつみ氏を起用し、雰囲気的には「より劇的に旨味を凝縮した朝の連続ドラマ小説」のようなホームドラマ路線です。
以前は、わりと「ここで泣かせてやろう」という作為的な(?)圧力を感じたり、泣かせる展開をやや強引にセリフで演出することも多く、大体深川監督作品を見終わると「うーん、まぁまぁ。★3つくらいかな」程度の印象でした。しかし、今作は主人公達の揺れ動く感情が、確かな演技力と自然な脚本でよりナチュラルに表現されていましたし、説明的なセリフも非常に少なく、映画的な味わいにあふれていました。
エンドロールでの高畑充希の主題歌が素晴らしい!
映画「ひるね姫」でも、主題歌を情感豊かに見事に歌い上げていましたが、今作も変わらぬ美声を聞かせてくれます。少しふわっとして、どこかノスタルジックな情景を思い起こさせるような癒し系の歌唱は、エンドロールでゆっくりと映画の余韻を覚ましてくれるようでした。ちょうど、公式動画で聴けるようになっていますので、是非!
<映画「いつまた、君と」テーマソング>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

野際陽子の遺作となった作品
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そして、忘れてはいけないのが野際陽子の訃報。3年前からガンとの闘病生活に入っており、療養期間を経て今回が映画復帰第1作となる作品だっただけに、映画公開前に急逝のニュースを聞いたのは驚きでした。
今作では老年期となった朋子役を演じているのですが、心筋梗塞で倒れて入院するシーンは、否が応でも、野際陽子本人の病状とオーバーラップして見えてしまうのですよね。奇しくも、強く野際陽子の「遺作」となったことを印象づけました。
一度具合が悪くなり、小康状態だった昨年11月にシーンを撮り直した時、「もう撮り直しはないわよね?」と深川監督に聞いたそうです。なんとなく長くないことを悟っていたのでしょうか。ご冥福を心からお祈りします。
5.映画「いつまた、君と」をもっと楽しむための7つの疑問点~伏線・設定を徹底考察!~
疑問点1:映画のタイトル「何日君再来」とはどんな意味があるのか?
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直訳すると、「あなたは再び帰ってくるのでしょうか?」という意味です。1937年、中国本土で大流行した歌謡曲のタイトルでした。その後、日本・中国両国でテレサ・テンを始めとして、何度も有名な歌手によりリメイクされ、日中両国で歴史に語り継がれる定番の名曲になっています。
松山の喫茶店で初めてデートした際に、店内のレコードでかかったこの曲が一生の思い出となった朋子。手記のタイトルを「何日君再来」として、吾郎の死後も変わらぬ一途な愛を表現したのでした。
疑問点2:朋子と吾郎の馴れ初めは?いつ初めて出会ったの?
映画では描写が省略されましたが、元々朋子と吾郎は遠い親戚同士でした。徴兵され、輸送隊として中国戦地の最前線へ赴いていた吾郎を慰問するため、3年間文通を続けたあと、彼らが初めて会ったのが、冒頭の喫茶店です。彼らの故郷、松山の喫茶店「ロダン」という店でした。
初めて会うまでお互い好意を抱いていたのでしょうが、でも初めて会った時、いきなり(遠回しではありますが)「南京に連れていきたい」「行きます」とプロポーズが成立しちゃうあたり、純粋な二人だったのだなと思わされますね。
疑問点3:なぜ彼らは最初から大都市へと引越しなかったのか?
昭和26年、吾郎達は大阪に移住して、高杉からの紹介でガソリンスタンドの職を得ますが、こんなことなら職探しが難しい田舎ではなく、最初から都会に行けばよかったのにと思いますよね。
でも、映画中でもあった通り、戦後すぐの1946年3月にGHQ勅令により「都会地転入抑制緊急措置令」という大都市への移動制限法が成立したため、1949年に解除されるまでは、大都市へ移住したくてもできなかったのです。
その理由として、終戦後すぐの大都市は、度重なる戦時中の空襲などにより東京などの大都市では食料・住宅が不足しており、流入してくる人口を支えきれないと判断されたからだったのでした。
疑問点4:なぜケンカした二人は「野ばら」で仲直りしたのか?
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福島の棚倉村で、運悪く仕事上の失敗を数度重ねた後、自暴自棄になった吾郎は「もう別れる」と言って家を出ていきますが、最終的には迎えに行った朋子に吾郎が丘の草原に咲いていた花を手渡し、彼らの危機は収まります。それが、白い「野ばら」でした。
野ばらは、彼らにとって特別な意味がありました。新婚当初に住んでいた南京の下宿先の庭に咲いていたのが、この「野ばら」であり、彼ら二人を結びつける特別なキーアイテムなのです。吾郎は、自宅の庭先に咲いていた野ばらをつむ朋子の姿をスケッチブックに収めていますね。
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さらに、バラは聖母マリアを想起させる「純潔」「純愛」の象徴でもあり、同時に「痛みから回復する強さ」も暗喩します。野原の雑草に一輪だけ生えていた野ばらをそっとわたすことで、二人の愛を再確認するとともに、もう一度人生をやり直していこう、というメッセージでもあったのですね。ロングショットでの印象的なハイライトシーンでした。
疑問点5:吾郎が子供たちに残した遺言内容とはどんなものだったのか?
引用:映画パンフレットより
吾郎の死後、病院から遺品として郵送されてきたチラシの裏には、短く吾郎の肉筆で、こう書かれていました。
「子供らよ。愛しい三人の宝よ。願わくば、我が轍を踏まず、双翼順風に乗りて、天際を飛躍せしめん」
3人の子供達に対して、「自分のように不器用な生き方ではなく、二つの翼をはためかせて、天高くどこまでも飛躍して行って欲しい」というラストメッセージですね。最後の最後まで、自分のことではなく子供たちを気遣う、吾郎の優しい気持ちが染みるような言葉でした。
疑問点6:映画では省略されたエピソードとは?
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とにかく、何をやっても上手く行かず、仕事では不運続きの吾郎でしたが、実は映画ではカットされたり、都合上改変されたさらなる失敗エピソードがまだ他にもいっぱいありました。簡単に紹介すると、例えば・・・
・昭和17年4月、吾郎はパラチフスに罹患し、中国現地で1ヶ月入院した。
・愛媛に帰国してから、次男の暸が「膿胸」という、胸に膿がたまる病気にかかってしまった。治癒するまで、しばしば母親の朋子の血を輸血する必要もあった。(ちらっと輸血手帳のようなものが画面に写っていました)
・大阪に移住してから、吾郎は高杉の紹介で鶴丸石油へ就職しようとしたが、最初は年齢制限(35歳)があって、就職できなかった。代わりに、出版の訪問販売(倒産)、警備員(2度泥棒に入られ、クビ)、工場の臨時工(契約更新できず失職)を経て、高校時代の友人から紹介された別の臨時工の職にありつき、ようやく安定した。
疑問点7:朋子はその後どうなったの?![f:id:hisatsugu79:20170627221029j:plain f:id:hisatsugu79:20170627221029j:plain]()
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劇中で脳梗塞で倒れて入院した朋子でしたが、回復して退院します。その後も悠々自適の生活で、イタリア語もわからないのに、イタリアに長期でホームステイに行ったりとアクティブな一面もありました。ちなみに劇中で作りかけだった「何日君再来」は、自費出版で「卒寿」(90歳)を記念して出版され、理や真美からプレゼントされたそうです。いい話ですね。
6.まとめ
公開後、ネットでの感想を読んでいると、いくつか「TVドラマみたい。TVでやれよ」という辛辣な意見もありました。確かに、引き上げ船のシーンや、街の風景などは予算不足から来るチープさが隠しきれない場面もあるし、朝の連ドラ的な雰囲気も漂っています。
だけど、「夫婦の愛」「家族の愛」「母子の愛」といった普遍的なテーマを、よりリアルな題材でじっくり描き出した本作を映画館で"能動的に"見ることで、より豊かな映像体験ができるはずです。TVドラマで出来なくはないけれど、こういった深く普遍的なテーマを扱ったドラマこそ、映画作品としてじっくり見て、後世に作品として残す意義があるのではないかな、と思いました。
是非、映画館でじっくり鑑賞してみてください!良い映画でした!
7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
公式ノベライズ「いつまた、君と」
映画を忠実に書き起こし、映画本編では時間の都合上収録できなかったエピソードを追録した公式ノベライズ。小説を読み進めるだけでも、非常に人を感動させる力がある優れたストーリーだということが実感できます。巻末には、映画制作秘話として、主演&企画を担当した向井理と、脚本を担当した山本むつみの対談が収められており、これもまた非常に良い話なんです!安いし、是非ノベライズを読んでみてください!
「いつまた、君と」オリジナルサウンドトラック
ラストには高畑充希がエンドロールで歌った「何日君再来」のカバーも収録されています。僕はこの1曲のためにサントラ買いました!
深川監督作品は、まとめてU-NEXTで!
決して派手などんでん返しや起伏のあるストーリーではないんですが、人の温かさや絆、優しさを柔らかく表現する独特の感性が素晴らしい深川監督。1976年生まれとまだ非常に若い割に、過去作はかなり充実しています。
本作を見て、もう少し過去作も見てみたいなと思った人は、1つずつDVDを買うよりも、まずはビデオ・オンデマンドで時間とお金を節約してみてはいかがでしょうか。
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